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- 2017/07/26 掲載
電子決済や自転車シェア、中国はなぜ猛スピードで進化できているのか(2/2)
圧倒的な規模を持つ中国のIDC市場
家本氏は、ネットビジネスの本命であるデータセンター(IDC)とクラウドの市場動向についても解説した。「これまでは中国電信、中国聯通、中国移動通信という国営3大キャリアが幅を利かせていましたが、2014年を境に民間データセンター事業者が台頭し、市場をけん引しました。中国のIDC市場は日本とは規模がまったく異なります。たとえば中国電信は、内モンゴルに42棟のデータセンターを建設し、約10万ラックを用意しています。貸出しもフロアー単位では相手にされず、1棟ごとという規模です」(家本氏)。
実際に中国のIDC市場は、2016年には714.5億元(1兆1432億円、1元16円換算)に成長し、IDCの借り手はネット、モバイル、ゲームなどの非エンタープライズが中心となっている。
次に、クラウドについては147.6億元(2362億円)という市場規模で、パブリッククラウドはAliyun(阿里雲)が独走状態だ。その後をHUAWEIが追従している。IDCはキャリア中心の市場だが、非キャリアも上場する規模感になってきた。一方で外資系クラウド事業者には、中国では直接通信事業を行うことができないというハードルがある。そこで外資系は国内企業と提携することになる。
「たとえば、AWSはSinnet、Microsoft Azureは21vainetと提携しています。また一部の事業者は、自分たちで中国人100%の内資会社を作ってコントロールしています。中国でビジネスする場合には、グローバルのリージョンと切り離され、契約も通常のサービスと異なり、ネットワーク的に独特なところがある点を理解しておいたほうがよいでしょう」(家本氏)。
中国の大型IDCの特徴は、3分の1が北京・上海・広州という北上広にあることだ。これはネットワークのバックボーンが、都市部に集中しているためだ。また、3000ラック以上のIDCは全土に300ヵ所以上もある。最近では政府方針で内陸部への建設もすすんでいるそうだ。そのほか、海南島にもHUAWEIがビッグデータのDR用IDCをオープンさせるなど、毎週のように何かの話題があるという。
ただし中国では、相変わらずインターネット回線は細い。1人あたりの接続帯域量が約8.9Kbpsしかないという状況は、逆の意味で面白いところだろう。
中国版サイバーセキュリティ法には注意が必要
最後のトピックは、中国版サイバーセキュリティ法の話題だ。この法律は6月に施行されたものだが、まだ具体的な摘発事例はないそうだ。重要な点は、日本の個人情報保護法とは非対称であるということだ。「国家の情報管理が優先され、個人情報保護はオマケ的な扱いになっています。中国で提供を受けた個人情報や重要データは、国内サーバに置かなければなりません。しかし法施行日までに個人情報の越境移転に関する規則は公表されず、また個人情報と重要データの範囲も決まっていないため、対策のしようがないのが実情です。そのため、越境移転の場合は必ず事前同意をとることが必要です。ただ、いまの段階ではわかっているのはこれくらいです」(家本氏)。
日本企業は、こうした中国特有の諸事情を考慮に入れながら、急速に拡大する成長市場を取り込むビジネスチャンスを狙っていくことが求められるだろう。
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