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2017年11月01日

SBI証券 田尻 啓太氏

SBI証券に聞くフィンテック戦略 なぜ不公正取引の審査に「人工知能」を活用するのか

先ごろ、SBIグループの金融事業の中核を担うSBI証券は、NECと共同で売買審査業務へのAI(人工知能)適用に関する実証実験を開始した。これまでもネット証券業界でいち早くICTを導入したツールを顧客に提供してきたSBI証券が、今回は同業他社も課題を抱える売買審査業務の課題解決に、AI活用で先鞭をつけた形だ。SBI証券 売買審査部の田尻 啓太氏に、同社におけるフィンテックの取り組みから、今回の実証実験の狙い、今後の展望まで話をうかがった。

(聞き手/構成:編集部中島正頼、執筆:井上猛雄)

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SBI証券 売買審査部 次長
田尻 啓太氏



SBIグループはブロックチェーン金融エコシステムの完成をめざす

 メディアなどで近年よく話題に上るフィンテック(FinTech)。これは「Finance」と「Technology」の造語として知られ、革新的で破壊的な金融テクノロジーとして大きな注目を集めている。従来の金融業やICTベンダーのみならず、多くの起業家やスタートアップがフィンテック市場に参入している。

 そして、これまで金融機関が独占的に提供してきた金融商品やサービスを、より安く、より早く、より便利にするために、オンライン金融エコシステムのなかで、人工知能(AI)やビッグデータ、IoT、ロボティクスといった新しい要素技術が活用され始めている。

 すでに、これらの技術を活用したサービスも登場している。たとえば、個人財務に関わる情報を統合管理する「PFM」(Personal Financial Management)や、資金の貸し手と借り手を仲介する「マーケットプレイス・レンディング」、人工知能で最適な投資信託を診断し、資産運用のアドバイスや助言を行う「ロボアドバイザー」などのサービスも人気だ。さらにビットコインの中核技術であるブロックチェーン技術を活用した革新的な金融サービスも期待されている。

 そのような状況で、特にSBIグループはブロックチェーン金融エコシステムの完成と、その移行を3年以内に実現したい考えだ。

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SBIグループ全体のフィンテック戦略。ブロックチェーン金融エコシステムの完成と、その移行をめざす


 すでに業界初の「FinTechファンド」(ファンド規模:300億円)を2015年に設立し、これまでfreee、ビットフライヤーといった有望なベンチャー61社に対し、決定済も含め2百億円規模の投資を行っているところだ。

 さらに、AIやブロックチェーンへの投資に注力するべく、新たに「SBI AI & Blockchainファンド」(通称:SBI A&Bファンド)の設立も予定。また、さまざまな仮想通貨を利用したサービスに対応すべく、「FinTechファンド」の投資先となる国内外の仮想通貨取引所との連携を深めつつ、香港にて仮想通貨取引所の開業も準備中だ。

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仮想通貨のグローバルな交換・取引を行うために、香港にて仮想通貨取引所を準備中


SBI証券はAIを適用した売買審査業務の実証実験をスタート

 このようにSBIグループは、急ピッチでフィンテックへの取り組みを進めているが、同グループにおいて金融事業の中核を担うSBI証券も代表的なフィンテック企業のひとつとして注目を集めている。

 もともとSBI証券は、イー・トレードと大沢証券の買収(1998年)からスタートし、ICTを得意とするグループの優位性を活かしながら、国内ネット総合証券の先駆けとしての存在感を示してきた。

 業界で最低水準の手数料を設定し、魅力ある投資商品を提供することで、幅広い顧客ニーズをつかんできたSBI証券は、現在では主要ネット証券のなかでも最大となる約400万口座を誇り、預かり資産残高12.0兆円(2017年9月末)、営業収益904億円(2017年度3月期)と、営業成績も好調に推移している。

 SBI証券 売買審査部 次長の田尻 啓太氏は、具体的なフィンテックの取り組みとして、「PCやモバイルで利用できる高性能なリアルタイム・トレーディングツールや、業界初のLINEでの株式発注・カスタマーサポートサービス、ロボアドバイザー『WealthNavi for SBI証券』『THEO+SBI証券』を提供するほか、日本取引所グループらが共同で実施したブロックチェーン技術の実証実験にも参加しています」と説明する。

 さらに直近の取り組みとして、NECと共同でAIを適用した売買審査業務の実証実験を、この8月よりスタートさせた。これはNECの最先端AIテクノロジー群「NEC the WISE」のディープラーニング技術を搭載した「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習」(以下、RAPID機械学習)を活用したものだ。

 現在、証券の売買審査は、各社が自主的に実施している。たとえば、仕手筋などが約定させる意思のない注文を発注することで、第三者の注文を誘発して相場を動かし、自分に有利な値段で売買する「見せ玉」や、自らの売注文と買注文を同時に発注して約定させる「仮装売買」(クロス取引)、売主と買主が連携して株のキャッチボールを行う「馴合売買」などの相場操縦を監視することで、不公正取引の恐れがある行為を未然に防止し、違反行為に対して迅速に対処する。

「具体的な審査については、取引所や協会が定めた基準をもとに、調査対象の銘柄データを売買審査システムから抽出し、株価・売買高などの動向や、取引参加者の売買手口などに関する初動を分析します。その調査が終わると、委託者の属性や売買状況などを詳細に分析する審査にかけられ、その結果を踏まえて処理を行うという流れです。もし不公正取引を見つけた場合には、その相手に対して注意喚起を促したり、取引を停止するなどの措置が講じられます」(田尻氏)

【次ページ】AI導入の目的は「高いレベルで審査を平準化し、効率を向上させる」こと

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