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2017年11月07日

連載:企業立志伝

クボタ創業者の起業論、「すぐ実行する」「必ずできるという信念」

「成功の秘訣は、成功するまでやめないこと」は、京セラの創業者・稲盛和夫氏の言葉ですが、それより数十年も前に「堅い信念をもってする時はたいていのことはできる」という信念で、水道管国産化の道を拓いたのが、「経営の神さま」松下幸之助氏に「お師匠さん」と言わしめた、クボタの創業者・久保田権四郎氏です。数々の産業機械や鉄管、エンジンなどを手がけ、世界的農機メーカーとしても知られるクボタの物語は何も持たない15歳の若者の鋳物屋修行から始まっています。

執筆:経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

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実業を志す者にとって一番大切なものは何か?

※写真はイメージ

(© FRANK – Fotolia)


節約に節約を重ねて設立資金を貯める

 久保田権四郎(旧姓・大出、1897年に久保田家の養子となり久保田姓を名乗る)氏は1870年、現在の広島県因島で桶屋を営む大出岩太郎、キヨの三男として生まれています。

 家は貧しく、晴れ着や小遣い銭がないために村の祭に行くこともできなかった久保田氏はのちにこうした苦い経験こそが将来の「発奮の動機」になったと語っています(『久保田権四郎』p18)。

 当時、小学校は村のお寺に置かれていましたが、久保田氏は毎日通うことはありませんでした。早く親を楽にしたいと考えた久保田氏は1885年、15歳で大阪に向かい、「ここかしこと頼みまわって」鋳物を製造する黒尾製鋼に小僧として住み込んでいます。徒弟修業はとても厳しいもので、当時を振り返ってこう話しています。

「肝心の見習いができず落胆していましたが、ある時ふと思いついたことは、師匠や先輩の物腰や手先の動きや呼吸などをすべて自ら読み取ることによって仕事を覚えるということでした。少し馴れてくると手伝いを許されましたが、ちょっと間違っても大変で、殴られる、小突き回される。それは厳格というよりもむしろ残酷に近いものでした」(『久保田権四郎』p236)

 朝は6時から夜は10時までという厳しい徒弟修業は3年半に及びましたが、鋳物師となった久保田氏は日給25銭で塩見鋳物に移り、さらなる鋳物技術の研鑽に努めました。目指したのは1日も早く100円のお金を貯めて独立をすること。

 当時の100円は大金でしたが、「きっと貯めよう、貯めねば止まぬという堅い信念」(『久保田権四郎』p21)を持つ久保田氏は風呂は行水ですませ、髪は自分で切るといった節約に節約を重ねた結果、1890年に「大出鋳物」を創業、秤の分銅などの製造を開始しました。

大企業でさえ手を焼く製品の開発に挑戦

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クボタの沿革

 念願の独立でしたが、まだ20歳になったばかりの久保田氏にとって製造から販売、仕入れや資金繰りまでの負担は大きかったようです。また、鋳物業は火を使う仕事であり、騒音や失火への苦情も多く創業当初は多くの苦労を強いられています。

 そんな久保田氏を物心両面で支えてくれたのが久保田燐寸機械製造所の久保田藤四郎氏です。

 跡継ぎのいない久保田夫妻は懸命に仕事に励む久保田氏の人物を見込んで養子になることを懇望。久保田氏は燐寸機械製造は継承しないことを条件に、養子縁組を承諾、久保田姓を名乗るようになり、1897年に大出鋳造所は久保田鉄工所に改称しています。

 久保田鉄工所に改称したちょうどこの頃、4年もの試行錯誤を経て完成したのが「合わせ型斜吹鋳造法」による口径約10センチの直管(薄くて長い鉄管)です。

 当時、横浜や大阪、東京などでコレラなどの伝染病対策として水道設備の整備が進められていましたが、問題は国内で使う水道管を外国からの輸入に頼っていることで、何とか国産化できないかというのが国を挙げての課題となっていました。

 いくつもの企業が製造に挑戦しましたが、高い水圧に耐える高い品質を持つ鉄管の製造は難しく、必要量のすべてを国産品で賄うことはできませんでした。

 久保田氏は鍛造の技術を生かすべくこの市場に目をつけ挑戦しました。大手でさえ苦労する製品です。当然、大変な苦労がありましたが、久保田氏は「外国人にできることが日本人にできぬはずがない」(『クボタコーポレートサイト・国産鉄管が生まれるまで』より)という信念で試作と改良を重ねた結果、ついに口径約10センチの直管の製造に成功しました。

【次ページ】「そんなことはできない」と決めつけるな

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