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2017年11月15日

堀場製作所を「世界シェア8割」に押し上げた堀場 厚会長の「人材マネジメント術」

堀場製作所は、自動車の排ガス、プロセス・環境の計測、生体外の医療診断、半導体製造の測定をはじめ、研究開発や品質測定などで使われる計測器やシステムを提供している京都発のメーカーだ。京都は、京セラ、オムロン、村田製作所など、昔から数多くのハイテクメーカーが興きた土地柄だが、その中でも堀場製作所は、社員の半分以上が外国人という特異な立ち位置にいる。なぜ京都の一企業がグローバルでの企業買収に成功してきたのだろうか? 大隅基礎科学創成財団の設立記念セミナーに登壇した堀場 厚会長が、まさに堀場流ともいえる人材マネジメント術を明かした。

執筆:フリーライター 井上 猛雄

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堀場製作所 代表取締役会長 兼 社長
堀場 厚氏



GMもフェラーリも採用する世界シェア8割のダントツ企業

 2016年にノーベル生理学医学賞を受賞した東京工業大学 栄誉教授の大隅 良典氏が設立した大隅基礎科学創成財団。その創設記念セミナーが10月18日に開催され、堀場製作所の代表取締役会長 兼 社長の堀場 厚氏が登壇した。

 堀場製作所は、独自の先端技術を持つグローバル企業として業界内では著名な企業だ。連結売上高も1700億円超(2016年度)と優良で、堀場製作所の自動車排気ガス用測定機器はワールドワイドで8割のシェアを占めている。まさに"ダントツ"といえる存在なのである。

 世界的な自動車メーカーであるGMもダイムラーも、そしてフェラーリも同社の製品が必要不可欠だ。海外メーカーの排ガス規制に関する不正を暴けたのも、堀場製作所の機器があったからである。

 堀場製作所が優れた最先端技術を生み出せた背景には、「おもしろおかしく」(Joy and Fun)というユニークなモットーで仕事を進めている点が挙げられる。驚くかもしれないが、全従業員7000名超のうち6割以上が外国人であり、世界に散らばる社員は「ホリバリアン」と呼ばれている。

 こうしたグローバル企業で社員を率いるのが、代表取締役会長 兼 社長の堀場氏だ。堀場氏は2018年には同社の社長を後任に託し、グループ全体を指揮するグループ最高経営責任者(CEO)に就任することも明かしたばかりだ。

 もともと堀場製作所は、先代社長の故・堀場 雅夫氏が京都大学在学中の1945年に「堀場無線研究所」の看板を掲げたことから始まった。

 先代は大学で原子核物理の研究をしていたが、敗戦によって研究を続行できなくなった。そこで新たに研究所を作り、核物理実験用の高速演算機に不可欠なコンデンサを自作したところ、性能と品質が評判となり、量産化することになった。ところが朝鮮動乱による資材高騰のため、工場建設が頓挫してしまった。

 苦肉の策であったが、コンデンサの電解液のpH値をコントロールするために自作したpHメータを販売すると、今度はそれが大ヒットした。そして、「pHメータの堀場」として知られるようになり、1953年に株式会社として現在の堀場製作所を設立し、計測機器メーカーとして歩み始めたという経緯がある。

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(クリックで拡大)

堀場製作所のWebサイト。自動車の排ガス計測機器で世界トップのシェアを誇る京都のダントツ企業だ


海外留学で学んだ堀場氏が憂う、日本が競争力を失った理由

 先代の長男である堀場 厚氏が、海外への足掛かりとなる第一号の営業マンとなり、米国に赴任したのが1970年代。米国で大気浄化法改正法(通称マスキー法)が登場し、環境汚染が問題になり始めたころだ。その後、1992年に堀場氏は社長に就任し、海外の優良企業をM&Aでいくつも傘下に収めてきた。その成功の裏には、米国留学時代の経験が生かされているという。

 堀場氏は「まず、経営にはツキが必要です。ただし、ツキが来るには、日々の体験と情報収集といった努力が求められます。仕事だけでなく、趣味も充実していないと新しい発想は出てきません」とユーモア交じりに語り、留学時代の貴重な体験を振り返った。

 堀場氏は、スキーやヨットなどのスポーツが趣味だった。そしてカリフォルニア大学アーバイン校の電気工学科に留学したとき、パイロットのライセンスに挑戦した。その際、管制塔とコミュニケーションをとるために、飛行場近くのアパートを借り、スピーカーから聞こえる英語を必死で習得したという。このときに経験したとある出来事が、堀場氏の大きな学びになった。

「飛行機は自動車と同じです。いったん離陸したら、1人で操縦しなければなりません。しかし自動車と異なるのは、空には路肩がないことです。止まるわけにはいかないのです。あるとき単独飛行で訓練をしていると、着陸時に雲がかかり、空港に降りられなくなりました。燃料が切れてきたので、教官の指示に従わず、別空港に強行着陸したところ、教官から30分以上も大変な勢いで怒られました」(堀場氏)

 もう試験に落ちるだろう。新聞沙汰にもなり、教官に迷惑をかけるかもしれない。そう落胆した堀場氏だったが、驚くことにそんな失敗をしても無事卒業させてもらえたという。もし日本で訓練していたら、絶対に合格しなかっただろう。これは日米の違いを学んだ象徴的な出来事だった。

「学生の見習い訓練生が学んでいるときの失敗はやむを得ません。失敗から学ぶことが重要です。そして、飛行機を墜落させなかったことも大きかったのです。日本では絶対に教官の指示に従わなくてはいけませんが、米国では違いました。これは、日本が国際競争力を失ってきたことに関係があるのではないでしょうか。上から言われたことが正しいと思い、自分で判断しないから日本は競争力を失ったのです」(堀場氏)

【次ページ】 4000名以上の外国人社員を擁する堀場流「人材マネジメント」の極意とは

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