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  • 2018/06/19

4兆4000億円を突破、「景気を押し上げるインバウンド消費」の立役者は誰か?

篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(99)

インバウンド消費の増勢が続いている。当初は東京や京都など有名な観光地や大都市を擁する三大都市圏に集中していたが、最近では地方都市にもその波が及んでいるようだ。この勢いを全国津々浦々に呼び込み、地域経済を活性化させるには、どのような取り組みが有効だろうか。今回はICTを活用した自治体の取り組みについて、効果と課題を検証しよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠﨑彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠﨑彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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インバウンド消費のインパクトは増すばかりだ
(©beeboys - Fotolia)

景気を押し上げるインバウンド消費の波

 6月5日に閣議決定された平成30年版の観光白書(国土交通省〔2018a〕)によると、2017年の訪日外国人旅行者数は前年比19%増の2,869万人となった。5年前の2012年と比べると3.4倍だ(図1)。

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図1 訪日外国人旅行者数とリピーター数
(出典:国土交通省〔2018a b〕をもとに筆者作成)

 そこで生まれるインバウンド消費力は旺盛で、2017年は前年比18%増の4兆4,162億円に達した。5年前の2012年と比べると4.1倍で、低迷する国内の個人消費をしり目に、今や景気を支える柱となった観がある(図2)。

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図2 日本の家計最終消費支出の増減と訪日外国人旅行者消費額の推移

(出典:内閣府『国民経済計算<四半期別GDP速報>』および国土交通省〔2018b〕をもとに筆者作成)

 そのため、日本の「国際観光収入ランキング」も順位を上げており、2016年は世界第11位、アジアではタイ(499億ドル)、中国(444億ドル)、香港(327億ドル)に続く第4位(日本:307億ドル)の規模だ。

地方圏を訪れるリピーター客は支出額も多い

 この勢いは地方にも及んでいる。首都圏、中部圏、関西圏の三大都市圏を除く地方圏の宿泊者数は6年連続で過去最高を記録した。地方圏の割合は4割を超えており、スペインやフランスなどの観光先進国と比較しても引けを取らない地域分散だ(宮嶋・平良〔2018〕)。

 けん引役はリピーター客といえる。国土交通省(2018b)の分析によると、リピーター客は韓国(約370万人)、台湾(約310万人)、香港(約310万人)を中心に年々増加しており、訪日回数が増えるにつれて地方を訪れる割合が高くなっている(図3)。

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図3 訪日回数別地方訪問率(観光・レジャー目的)
(出典:国土交通省〔2018a〕をもとに筆者作成)



 しかも、リピーター客ほど1人当たり支出額も増加する傾向があり、10回以上のリピーター客は初回の訪日外国人旅行者に比べて、支出額が2~4割高い。そして、このリピーター客の増加に一役買っているのがICTといえそうだ。

インバウンド消費に不可欠なネット環境

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 そもそも、外国人旅行者の意思決定には、リピーター客に限らずネット情報が強い影響力をもつようだ。台湾からの訪日観光客について、訪問先の選定に影響する要因を実証分析した大津・王(2016)によると、ネットのクチコミがガイドブックや旅行会社などによる推奨よりも強く影響していると検証されている。

 リピーター客は、この傾向がさらに強いと考えられる。彼らは、有名観光地のいわゆる名所旧跡を見物するだけでなく、日常生活に自ら関わる「体験型」を求めており、各人がそれぞれに興味を抱いた地方へ積極的に足を延ばすことが多いからだ(篠﨑〔2015〕)。

 実際、リピーター客ほど団体旅行やパッケージ旅行ではなく、自分で航空券や宿泊先を手配する割合が高く(国土交通省〔2018b〕)、穴場の店や旬な話題のスポットを探して活発に行動している様子がうかがえる。

 リピーター客は、訪日前も滞在中も、そして実は帰国後の越境ECでも、きめ細かな最新情報を求めてネットをフルに活用する傾向が強いというわけだ。

【次ページ】インバウンド消費を呼び込む「クチコミ」

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