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  • 2019/02/13 掲載

「チャットボット」とは何か?ITRアナリストが解説

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企業内で顧客接点の最適化が重要なテーマとなる中、Web接客やカスタマーサポートなどの自動化を中心に「チャットボット」のニーズが高まっている。そこで、チャットボットの市場動向から、基礎的な知識、利用時のメリット、代表的な製品、今後の動向などについて、独立系ITコンサルティング・調査会社のITRでシニア・アナリストを務める三浦竜樹氏に聞いた。

ITR シニア・アナリスト 三浦竜樹(聞き手/構成:井上猛雄、編集部 渡邉聡一郎)

ITR シニア・アナリスト 三浦竜樹(聞き手/構成:井上猛雄、編集部 渡邉聡一郎)

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チャットボットの基礎を、わかりやすく解説する
(©NazArt - Fotolia)


チャットボットの定義とは何か?

 「そもそもチャットボットとは何か?」という基本から考えていきましょう。広義のチャットボット(Chatbot)とは、自動的に人間と会話(Chat)するプログラム(bot)のことを指します。

 ただ、ひとくちにチャットボットといっても、用途や仕組みでさまざまな分類(後述)があります。たとえば、AlexaやGoogle Homeのようなスマートスピーカー。このように音声を出力するものはチャットボットの分類に入らないという考え方もありますが、プログラム的には、音声認識された質問をテキスト化しそれを読み取って答えを返す点では、チャットボットと見なせます。

チャットボットの分類1:「チャット接客」「チャットサポート」「アシスタント/UI代替」

 チャットボットは、“ビジネス用途”や“仕組み”によって分類できます。まずビジネス用途では以下の表のように、「チャット接客(Web接客)」「チャットサポート(カスタマーサポート)」「アシスタント/UI代替」に大別されます。

ビジネス用途 主な対象者 主な検索対象
チャットサポート 問い合わせ対応 社外 FAQ DB、VoC
社内ヘルプデスク 社内
チャット接客 レコメンド 社外(一部社内) アクセスログ、CRM、商品DB、予約システムなど
予約/照会対応
無人接客(店頭ディスプレイなど)
アシスタント/UI(ユーザーインターフェース)代替 スマートスピーカー 消費者 グループウェア、業務アプリなど
バーチャルアシスタント 社内
ブランドコミュニケーション 社外(消費者) インターネット、各種顧客向けサービスなど
(出典:ITR)


 チャットサポートでは、社外・社内からの問い合わせに対して、電話やメールなどの問い合せ履歴を加味した上でチャットによるサポートを行います。

 チャット接客(Web接客)では、CRMや商品データベース(DB)などを参照しながら、テキストチャットを通じて接客を行います。

 アシスタント/UI代替では、前出のスマートスピーカーのように顧客の利便性を高めたり、バーチャルアシスタント的に、社員の業務を支援します。以上が、ビジネス用途での3分類です。

チャットボットの分類2:「シナリオ型」「AI型」

 また、チャットボットをその仕組みによって分類すると「シナリオ型」(ルールベース)と「AI型」(機械学習)の2つに大別できます。

 「シナリオ型」は、サービス提供者側で想定される質問と回答をあらかじめ用意し、ユーザーは画面から自分の疑問に近い選択肢を選び、対話を進めていくタイプです。ユーザーが問いかける内容と回答の種類が少なく、回答の絞り込みが容易なケースで用いられます。

 導入前にはシナリオ設計が必要になりますが、それさえできれば、シナリオ設計/ルール通りにボットを動作させられます。また、シンプルな問答から成る問答集を準備できれば大量の参照データは必要ありません。ただ一方で、質問への対応範囲は狭く、シナリオが複雑化すると運用負荷が増大します。シナリオ分岐が増加し複雑化していくと矛盾が発生したり、ツリー構造のシナリオ/ルールの再設計が必要な場合も出てきます。

 もうひとつのAI型は「自然言語解析」や「キーワード解析」のために専用のAIエンジンを利用するタイプです。統計的に正解する確率の高い答えをアルゴリズムで算出するもので、ユーザーの質問範囲が幅広く、選択肢による絞り込みが難しいケースで適用されることが多い傾向があります。質問をテキストボックスに入力し、そこで対話を進めて、的確な回答を提示するという形式です。

 シナリオ型より対応範囲は広いものの、導入時には、(企業/業界共通など教育済みのAIエンジンが提供されない場合)大量の教師データが必要となります。十分な学習ができていないと正答率が低いため、サービスによっては提供すべきでない場合もあります。さらに顧客からの問合せ数などが少ないと、AIの学習に必要なデータがたまらないという課題もあります。また、前提が変わると一から学習が必要です。意図した制御がしづらく、ユーザーが恣意的にヘイトスピーチなどの情報を与えた場合、誤った学習の仕方をするケースもあります。

画像
AI型チャットボットを活用したコミュニケーション(音声認識を含む)

(出典:ITR)

 このようにシナリオ型とAI型、いずれも一長一短があり、導入時・運用時にも課題がありますが、近年はAI型の機能を備えるチャットボット製品やサービスが主流になってきました。

 ただし、必ずしもAI型だけですべての領域をカバーできるとは限りません。なぜなら、AI型のチャットボットは、学習のために相応の教師データが必要で、事業者側でデータが不十分な場合があるためです。データが不十分であれば、質問の正答率が低くなるという課題があります。

 そこで、AI型のチャットボットでカバーできない込み入った質問などは、最終的に人間のオペレーターにスイッチして回答してもらう仕組みを取り入れることが多いです。有人ライブチャットサポートの場合は、オペレーター側でカスタマーダッシュボードの情報を参照しながら、適切なチャットの開始タイミングや顧客の困り事を推測して語りかけます。

チャットボット市場はこの2年で約8倍に

 次にチャットボットの市場(注)動向について見ていきましょう。

(注)ここでのチャットボット市場には、AIエンジンのAPIのみを提供するサービスは含めていない。また、有人サービスと組み合わせて提供されているものは、チャットボット部分の売上げをITR独自に算出して計上。
画像
チャットボット市場規模推移および予測
(出典:ITR「ITR MarketView:ビジネスチャット市場2018」)

 チャットボット市場が本格的に起こったのは2016年。当時は約3億円規模で、主にコールセンター事業者などによるカスタマーサポート領域で利用されていました。しかし、近年ではECサイトでの顧客の離脱防止や売上の向上を目的として導入されるケースが急増しており、2018年度は24憶円規模まで急成長しています。さらに市場規模は今後も拡大を続け、2022年度には100憶円を突破する見込みです。

 市場急拡大の背景には、問い合わせやコミュニケーションが気軽にでき、「FAQの検索やメール/電話による問い合わせの代替手段」として、チャットボットが幅広く認知されてきたことがあります。

 2019年からは、いよいよAI型のチャットボットが本格的な実運用のフェーズに入り、企業のブランドを横断しながら幅広く展開していくようになる可能性があります。ここからは、より詳細に市場を見ていきます。

 ITRでは、チャットボットの市場動向を「BtoC」「BtoB」「BtoE(対従業員)」に分類しており、この分類では、BtoCの売上が最も大きく、ECサイトや小売・流通業で、Web接客とカスタマーサポートにおける導入が進んでいます。より柔軟で、高度な回答を可能にするAI学習支援や、包括的なサービスでの導入が主流です。たとえば、ECや予約サービスなどのネットビジネス系のサービス業や、自社ECでのWeb接客やカスタマーサポートを行う流通業での導入も堅調です。

 一方、BtoBでは、大掛かりなチャットボットよりも、営業やインサイドセールスが有人で迅速に対応する企業が多いため、チャットボットの導入額はあまり大きくありません。

 またBtoEでは、社内ヘルプデスクのほか、各種業務システムと連携し、勤怠やスケジュール管理、設備・会議室の予約、社内文書の検索、日報作成など、既存インターフェイスを代替し、利便性を高めるために導入が進められています。

【次ページ】チャットボットの代表的な製品や導入のポイントを引き続き解説

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