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  • 2019/04/10

「なぜこの人が出世したのか?」、日本企業の「場当たり的」人事に驚かされるワケ

4月から新年度が始まり、新しい職場や環境で働く人も多いだろう。フレッシュな気持ちで仕事に臨みたいものだが、新年度の人事には驚かされるケースが少なくない。「なぜこの人が出世したのか」「会社の人事はいった何を考えているのか」と思わせる場当たり的な事態はどういう理由から起きるのだろうか。『「場当たり的」が会社を潰す』(新潮社)の著者で、数多くの企業の研修に携わってきた北澤孝太郎氏がその背景を解説する。

東京工業大学大学院 特任教授 北澤孝太郎

東京工業大学大学院 特任教授 北澤孝太郎

1962年生まれ。東京工業大学大学院特任教授。レジェンダ・コーポレーション取締役。神戸大学経営学部卒業後、リクルートに入社。日本テレコム(現ソフトバンク)執行役員法人営業本部長などを経て現職。著書に『営業部はバカなのか』など。

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新年度の人事に疑問を感じる人も多いだろう
(Photo/Getty Images)

今、リーダーを担う40代~50代の事情

 なぜ人は、「場当たり的」な行動をとってしまうのでしょう。また、なぜそういう振る舞いをする上司がいるのか。

 まず、世代論的な背景があります。今、多くの企業でリーダー的な役割を担っているのは、40代~50代後半です。新人類などと揶揄された人口ピラミッドのくぼみ(昭和36~40年生まれ)付近の世代か、それよりもう少し若いバブル世代(昭和41年~45年生まれ)が中心で、団塊ジュニアの第一世代(昭和46年~49年生まれ)もすでにそういう年齢に届きつつあります。ちなみに私は、新人類世代に属します。

 それよりも上の世代にある団塊の世代は、企業が高度経済成長の真っただ中にあるにもかかわらず、親世代には生活の余裕がなく、また第一次ベビーブームで兄弟も多かったことから、自身で生計を立てることを迫られた世代です。

 世の中全体が豊かになっていくことが、国家や社会の最大の目的で、そのための仕事は、会社から与えられ、指示されました。そして、その指示に従うことそこが生きていくための手段であった時代です。「頑張れば必ず報われる」、その実感が染みついた世代です。

 私たち新人類世代は、そんな団塊の世代の上司や先輩に育てられました。日本の国際社会の中での地位が高まり、ビジネスが成熟するとともに、ひたすら量的拡大を求められました。団塊の世代のつくり出した経済のさらなる量的拡大を求められた、ともいえます。

 仕事を効率的に進める社員が優秀とされ、ひたすら問題解決技法やマネジメントを訓練させられました。私がリクルートに入社したころは、膨大な仕事量をこなすために、休日出勤、残業は当たり前。「仕事量をこなせない奴はバカ、PDCAを回せない奴は無能」と檄を飛ばされたものです。

 その次のバブル世代になると、単純に量をこなすだけでは評価されなくなってきました。企業に余裕もあったのでしょう、新しいことをやるプロデュース力が求められた世代です。

 しかし、新しければなんでもよいという感じの安易さがあることも否めないのがこの世代の特徴です。「何をすべきなのか」をじっくりと考えるよりもまず動く、まず提案するという癖がついてしまった世代だとも言えます。

 地道なビジネススタイルを身につけるべき時期にも、格好いい仕事、見栄えの良い仕事を追い求めてきた。そういう傾向が見られる世代です。時代がそういうやり方を求めていたという面もありました。

 少し上の我々世代は、彼らの活躍を見ながらも、「少し詰めが甘いんだよなあ。尻ぬぐいさせないでくれ」と心の中で叫ぶこともありました。それでいて、同調せざるを得ないところもあり複雑な心境でした。

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世代ごとに考えていることは違う
(Photo/Getty Images)

「考えるより、まず動け」で本質から遠ざかる

 団塊、新人類、バブルの3世代に多く共通するのは、激しい生存競争の中で何をすべきか、なぜそうするのかを考えるより、どのようにすればよいのかを必死で考えてきたということです。景気こそ良かったものの、同期入社が極めて多かったので、社内での生存競争は激しかったのです。What(何を)やWhy(なぜ)より、How(どうやって)に重点を置かされてきた人たちだと言えます。

 バブル世代だけは、仕事は与えられるものではなく自分でつくり出すものだと考える傾向が強かったので、少し意識が違うかもしれませんが、それでも本質的には変わらないと私は見ています。

 「どんな新規事業をやればよいのか」「なぜその新規事業がいま必要なのか」という大きな問いに向き合うことなく、「どのように新規事業を生み出せばよいか」、つまりHowを中心に考えてきたのが、この3世代です。

 要するに、何をやるべきかやなぜそれをやるのかといった本質的なことは考えず、与えられた課題のやり方さえ必死で考えれば、生き残っていけた世代と言えます。豊かになった日本は、バブルが完全に弾けて、リストラの嵐が吹き荒れるときまで、こういうやり方を許容したのです。「考えるより、まず動け」が基本行動原則でした。

 「わが社の創立の理念とは何か」「この部署の存在意義はどこにあるのか」「この仕事の大目標は何か」といった大きな話をする人は少なかったし、いたとしても面倒な奴だと言われたでしょう。むしろ「この件、どうやればスムーズに進められるか」「どうすれば今期の目標が達成できるか」を考える人が評価されたのです。

 「とりあえずビール」のような調子で、「とりあえず動ける目標」を「場当たり的」に置いてしまうのは、こういう仕事の進め方を要求され続けたからだと思います。目的は世間や会社から与えられるものであり、あくまでもHowの秀逸さで戦う。その切磋琢磨を続けてきた世代なのです。

 3世代とも、世の中が混沌とし、多様化し、目的や価値を自分で決めなければならない現代のような時代を経験したことがありません。どうしたらいいのか迷っています。

 結局、「とりあえず」その場しのぎの方針を立て、戦略を打ち出す。自分たちの癖である「場当たり的」な行動をしてしまうということが多く見られます。

【次ページ】タテ社会の追随傾向

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