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  • 2019/06/10

思考が浅く行動が遅いのんきな日本人、グーグルで感じた日本企業の課題

元グーグル日本法人代表 辻野晃一郎氏へのインタビュー。前回前々回では未来学者ジョージ・ギルダー氏が著した『グーグルが消える日 Life after Google』を基に、グーグルが世界を席巻した理由やグーグルよりさらに先の時代の見通しを聞いた。では、これからテクノロジーが紡ぎ出す時代において、日本企業はどう戦っていけばよいのか。22年間在籍したソニーとグーグルとの比較も交えながら語ってくれた。

聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、渡邉聡一郎 執筆:翁長潤

聞き手:ビジネス+IT編集部 松尾慎司、渡邉聡一郎 執筆:翁長潤

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元グーグル日本法人 代表取締役社長
現アレックス 代表取締役社長 兼 CEO 
辻野 晃一郎氏
1984年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了し、ソニーに入社。1988年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタル TV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社し、アレックスを創業。現在、同社代表取締役社長兼CEOを務める。

日本企業の社長は「サラリーマン」

――企業の歴史を見ていると、イノベーションのジレンマに陥ることが多いと感じます。育ちすぎた既存のビジネスを聖域としてなかなか手を付けられない。

辻野氏:グーグルはまだ創業者が2人とも若いので、彼らが元気な限りはそう簡単におかしくなることはないと思います。アマゾンもそうでしょう。一方でアップルは今後予断を許さないのではないでしょうか。スティーブ・ジョブズ亡き後、ティム・クックは秀逸な経営者として頑張っていますが、彼がどんなにビジネスマンとして優秀でも創業者のジョブズとは違います。

 いくつかの日本企業にも投資している米国のあるアクティビストと話したときに、「ファミリー企業にしか投資しない」と言っていました。その理由を尋ねると、「多くの日本企業、特に大企業の社長は、経営のプロでもビジネスのプロでもなく、単に社内政治を勝ち上がってトップになっただけの人が多く、ゾンビ企業ばかりだから」とのことでした。

 実際、多くの日本企業のトップには事なかれ主義のサラリーマン経営者が増え、自分なりのビッグピクチャーを描き、大胆な投資や企業変革を断行している人は少ないように感じます。仮にサラリーマン社長であっても、前回話したような「時間・空間的に大きなスケール感」でユニークなビジョンを描き、さまざまな社内のしがらみを言い訳無しに断ち切って、フットワークよく大胆なチャレンジを打ち出していくような未来志向の経営者がもっと必要です。

 新興企業では、たとえばメルカリ創業者の山田進太郎氏のようなユニークな起業家も出てきました。メルカリは米国市場の立ち上げなど、海外では苦戦していますが、最初からグローバル指向です。このように、「最初は日本市場から」ではなくて、「最初からグローバル市場へ」という視点で起業する人たちがこれから増えていくことが重要です。

のんきで思考が浅く行動が遅い日本人

――その世界観の中で、今を生きる人に求められることは何ですか。
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辻野氏:「あなたは何のために生まれてきましたか?」とか、「あなたが生まれてきた使命は何ですか?」という根源的な問いに確信を持って答えられる人はほぼいないでしょう。よほどの天分に恵まれた人以外は、あるいはそういう人でも、自分がなぜこの世に生まれて来たのか、本当のところは誰もわかりません。人生とは、もだえ苦しみながらその答えを探し続ける旅なのかもしれません。

 しかし、今はこれまで以上にそういうことを真剣に追及する生き方が問われているように思います。上司や組織に命令されるがまま、思考停止したその日暮らしの生き方をしているとすぐに人工知能に取って変わられてしまうでしょう。資本主義や自由主義の下、経済や金融の世界は飛躍的に発展しましたが、物欲や金銭欲などがすべてに優先されるような世の中になって格差も拡大し分断も進んでいます。我々にとって真の幸福とは何なのでしょう。

 人工知能の急速な発達や、ゲノム編集などの医療技術の革新によって、人類はついに神の領域に踏み込み始めたと言ます。GAFAの今後や日本の行く末を考えるときに、テクノロジーの急激な進歩が人類にもたらすものについて、生命や宇宙の起源とか、人口爆発や環境破壊など地球が抱える諸問題などと関連付けた大きなスケールで深く洞察する力が求められています。実学だけが暴走するのを防ぐためは宗教や哲学などの役割も見直されねばなりません。

 私は宗教の専門家ではありませんが、我々日本人の宗教観を考えるに、歴史的にはキリシタン迫害や廃仏毀釈(きしゃく)などの過去はあるものの、八百万(やおよろず)の神という表現に象徴されるように多様性への寛容度が高いと感じます。クリスマスを祝ったと思ったら寺に行って除夜の鐘を聞き、年が明けると神社に参拝するなどの行動パターンは、日本人の受容性や順応性の高さを表していると思います。しかし裏を返せば、節操のなさや思考が浅いという見方もできるかもしれません。「平和ボケ」という言葉もよく使われます。

 ハーバード大学の国際政治学者サミュエル・ハンティントンは、1996年にベストセラーとなった著書『文明の衝突』の中で世界の文明を7つに分けました。その中で、他に帰属しない独特の文明を持つ国として日本を位置付けています。

 日本や日本人だけを特別視しすぎることには問題がありますが、他国にはできない日本や日本人ならではの世界への役割は何か、ということを意識することは決して悪いことではありません。それはまさに我々の使命を見つけ出し自信や誇りと共にそれを遂行しようというエネルギーにつながります。単に欧米型をまねたりシリコンバレー流をコピーしたりすることが我々のやることではありません。

 グーグルは米国発の多国籍企業として、世界をつくり変える、未来をつくるということをスピーディーにやり続けている企業です。一方、日本に生まれ育った私たちが、日本の強みや役割をしっかりと意識しながら、グーグルや欧米とはまた別のやり方で世界に貢献する意欲を持ち、その意欲を具体的な行動と結果につなげていくことを世界は歓迎するでしょう。

【次ページ】日本が強かったのは過去の話、クラウド移行の真理とは?

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