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  • 2019/07/05 掲載

軽減税率で「テイクアウト」はどれだけ伸びる?有識者に聞くチャンスとリスク

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10月1日から予定される消費増税まで、あと3カ月を切った。税率は10%に上がるが、商品によっては税率8%に据え置かれる「軽減税率」が適用される。外食産業は店内飲食(イートイン)は10%、持ち帰り(テイクアウト)、宅配(デリバリー)は8%と税率が分かれる。消費増税を抜きにしても今活気を帯びる要注目のカテゴリー「テイクアウト」を、エヌピーディー・ジャパンのフードサービス・シニアアナリストの東さやか氏、月刊『飲食店経営』編集長の毛利英昭氏らの分析を交え、解説する。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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テイクアウト商品を来店前に注文できるサービス「LINEポケオ」は、松屋のプレミアム牛丼やガストのマヨコーンピザ(写真)が100円になるキャンペーンを6月27日に実施。想定以上の反響があり、わずか1日でキャンペーンを終了した


「飲食時に税率気にする」現状ですでに7割近く

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 このまま予定通りなら、約3カ月後の10月1日、消費税の税率が8%から10%へアップする。ただし今回は税率8%で据え置きの「軽減税率」が適用される商品もあり、たとえば小売では酒類を除く食品、飲料が8%の軽減税率の対象になる。

 このため外食産業においては、店内で食事する「イートイン」は税率10%、店頭の窓口で買って持ち帰る「テイクアウト」や、出前(宅配)してもらう「デリバリー」は軽減税率適用の税率8%と分かれることになる。

 ということは、外食のマーケットでは10月1日を境に、税率10%のイートインから税率8%のテイクアウト、デリバリーへの「節税シフト」が起きるのだろうか?

 まったく同じメニューでも食べる場所によって価格が変動するのはややこしいが、消費者はすでに税率の違いをしっかり認知し、理解しているようだ。

 リクルートライフスタイルの調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」は、一般消費者9521人を対象にアンケート調査した「2019年10月の消費税増税と飲食料品への軽減税率適用による、食生活に対する消費者意識調査」を2018年12月に発表した。

 それによると、「消費増税後、飲食時に税率8%と10%の差を気にするか?」という質問で22.7%が「気にする」、44.7%が「やや気にする」と回答している。2ポイントの差であっても、消費税率の違いを「気にする」消費者は67.4%と、約3分の2もいる。

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消費増税後、飲食時に税率8%と10%の差を気にするか?

 同調査では軽減税率の理解度も質問しており、外食店舗の利用の仕方による税率の違いを「よく理解している」と「多少は知っている」を合わせると48.3%で、約半数を占める。今後、増税実施までに、消費者の認知度、理解度はもっと高まっているだろう。

 調査項目には消費増税後の食生活の変化についての質問もあり、33.1%が「飲食店で外食をする回数は減ると思う」と答え、23.2%が「自宅で料理して食べる回数は増えると思う」と答えている。

 テイクアウト、出前(デリバリー)については、「増えると思う」という回答は全体で7.4%だが、20代女性は14.9%、30代女性は16.0%、30代男性は11.1%と、若い世代ほど高くなっている。

 そんな結果を見ると、消費増税を期に外食産業でイートインからテイクアウト、デリバリーへの「節税シフト」が起きる可能性は、決して小さくはなさそうだ。そこには外食企業の経営者が「消費増税対策を打たなければ手遅れになりかねない」と危機感を持つのに十分な数字が示されている。

進出するならデリバリーよりテイクアウトか

 消費増税に伴って起きると思われる消費者のイートインからテイクアウト、デリバリーへの「節税シフト」。

 「当店の格式では対応しかねる」という高級店や、「商売のやり方を変えるつもりはない」という“頑固印”の店を除けば、大部分の外食事業者は消費増税後の個人需要減退の逆風の中で生き残るために、テイクアウト・デリバリーの拡充を考えてはいるだろう。

 外食事業者向けに「飲食店.COM」を運営するシンクロ・フードは2017年11月、「『飲食店の中食事業への参入状況』に関するアンケート調査」を実施した。それによると調査対象の飲食店経営者、運営者の約半数の45.6%が「テイクアウト販売を行っている」と回答している。

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メニューのテイクアウト販売を行っているか?

 ちなみに「デリバリーを行っている」という回答は20.0%にとどまった。調査レポートでは「配達コストやオペレーションの複雑さなど、デリバリーにおける実施ハードルの高さが影響しているものと推測されます」と、差がついた理由を説明している。

 閑散時限定の出前ならともかく、デリバリーの本格営業は宅配スタッフの人件費または外部委託にコストがかかる。一方、テイクアウトは店内飲食(イートイン)と比べて容器代はかかるものの内装や店内接客のコストがかからず、座席数による制約もない。客単価も回転率も考慮しなくていい。

 エヌピーディー・ジャパンのフードサービス・シニアアナリストの東さやか氏は取材に対し、デリバリーは人件費または出前サービスの委託利用料にコストがかかり、しかも現状の利用比率はまだ低いので「テイクアウトのほうが業績寄与度は高い」と答えた。

「テイクアウトは、昼食の混雑時でも店舗客席のキャパシティ以上に売り上げられるというメリットがあります。利益率が高いドリンクが出ないデメリットはあっても、それ以上にテイクアウトのお客さんが増えてくれれば業績拡大にも寄与することでしょう」(東氏)

 一方、月刊『飲食店経営』編集長の毛利英昭氏は「消費増税対応でテイクアウトが短期的に成長するとしても、中・長期的にみればデリバリーのほうの成長の勢いが増してくるのではないか」と語る。

「テイクアウトはファーストフードは別にして、一般の飲食店では早く提供するために基本的に『つくり置き』ですが、デリバリーは店内飲食と同じように注文を受けてつくる『ツーオーダー』で、キッチンが対応しやすい。高級業態のレストランでもデリバリーならできるでしょう。自店の味を知ってもらうチャンスにもなりますし、普段行けない店の味を楽しめるという消費者側の楽しみもあります。ただし、配送要員を自前では抱えず『Uber Eats』のようなところにアウトソーシングするという条件付きですが」(毛利氏)

 毛利氏によれば、テイクアウトはコストでは勝っても、リスクとしてつくり置きの衛生管理の問題、売れ残りの食品ロスの問題が考えられるという。予約注文でなければ需要予測が難しく、無理に拡販しようとするとキッチンのキャパシティに余裕がなければイベントなどでの突発的な大量注文に応えられない恐れもある。仕出し、持ち帰り弁当専門店、スーパーなどライバルも多く、特に、商品をひんぱんに入れ替えて消費者を飽きさせないコンビニ弁当は強敵だ。

 テイクアウトか、それともデリバリーか。どちらにしても、消費者が口にする場所が「店内から店外へ」という方向でシフトする流れにあることは確かだろう。

【次ページ】外食業界が「中食」強化、アウトソーシング系の外食新業態も台頭?

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