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  • 2021/11/16

サントリー食品の「商品開発の哲学」、ペルソナ設定より大事な「遊び心」とは?

日々、企業の商品開発担当者は、消費者に“刺さる”プロダクトを生み出すため、顧客ニーズや関連商品の販売実績などからペルソナを設定したり、手にとりたくなるようなデザインを考えたりと、あらゆる取り組みをしている。そうしたプロダクトづくりにおいて、社内初のデジタルプロダクトの「SUNTORY+(サントリープラス)」で大きな成功を収めた、サントリー食品の商品開発の哲学に迫る。

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プロダクトづくりで重要なのは「課題解決」+「遊び心」?(後ほど詳しく解説します)

※本記事は、プロダクトマネージャーカンファレンス実行委員会が主催した「プロダクトマネージャーカンファレンス 2021 ~非連続な環境、非連続な変化、非連続なプロダクト~」の講演内容を基に再構成したものです。

サントリー初のデジタルプロダクト「SUNTORY+」とは

 サントリーと聞くと、まず頭に浮かぶのは飲料・食品、酒類などではないだろうか。1年前、そのサントリーが初のデジタルプロダクトを発表した。それが法人向け健康経営支援サービス「SUNTORY+(サントリープラス)」だ。これはスマートフォンで提供されるアプリであり、従業員の健康促進を重視する「健康経営」に取り組む企業などに向けたサービスと言える。

 健康促進アプリと言っても、単に厳しいダイエットや運動をユーザーに課すというものではない。サントリープラスがユーザーに提案するのは、「朝起きて水を1杯飲む」「1日1回は青魚を食べる」「野菜をたくさん食べる」などのような、同社いわく“超低ハードル”のタスクばかり。

 ユーザーは、アプリから提案されたタスクを実行していくとランクが上がり、その結果としてペットボトルのお茶などと引き換え可能なクーポンがもらえたりする仕組みだ。そのクーポンがどこで使えるかというと、オフィス内の自動販売機だ。サントリーとしては利用ユーザーの勤務先に同社の自動販売機を設置させてもらえば良いので、アプリ自体は無料で提供している。

 これまでの健康支援アプリとは異なり、利用者に与えられる健康タスクのハードルが低くて使い方が簡単であるため継続率も高いという。

 一般的に、ヘルス系アプリにおいては利用開始1カ月後の継続率は15%を下回るという。これは6人に1人しか続かない計算だ。しかし、サントリープラスの場合、1カ月後の継続率は80%以上、6人中5人が続けているのだ。半年後の継続率を見ても、50%以上を維持するという成果を上げている。

 このデジタルプロダクト開発のリーダーを務めたのが、サントリー食品インターナショナル 戦略企画本部 イノベーション開発部 プロダクトマネージャーの赤間康弘氏だ。ユーザーに“刺さる”プロダクトをどのように生み出していくか。赤間氏は試行錯誤しながら多くのことを学び、プロダクトマネージャーが心掛けるべきイノベーションと考え方を獲得していったという。

 重要なのは、「プロダクトづくり」と「チームづくり」の2つという。

良いプロダクトの条件:「課題解決」+「遊び心」とは

 まずはプロダクトづくりについてだ。成功するプロダクト作りの原点が、ユーザーの課題解決であることはよく知られている。はじめに、カスタマージャーニーを作ってユーザーのペインポイントを見つけたり、デザインシンキングでユーザーを観察して課題を発見するなど、その手法もさまざまある。

 赤間氏はこれらの活動は重要で、いわばプロダクトづくりの土台となるものだと語る。ただ、それだけに終わらずそこに「遊び心」も加えたいというのが同氏の主張だ。

「課題解決がマイナスをゼロにする仕事だとしたら、遊び心はゼロをプラスにする仕事です。課題がないかもしれないところに喜びや驚きを生み出そうというのですから、難しいのは事実です。たとえば、サントリープラスの事例で言えば、既存のヘルスケア領域のアプリはついつい真面目で堅苦しいものになりがちという課題があったため、それを面白いものに変えていこうと考えました。このように単なるエラー画面であってlも、アマゾンはそこに犬を表示させたりしていますが、ああいった『遊び心』を取り入れることが付加価値を作ると考えています」(赤間氏)

 しかも、「遊び心」は、チームの誰かが発揮すれば良いということではなく、全員がそういった姿勢を持つことが望ましいという。みんなが競い合いながら“面白い”と思うアイデアを共有することで、ロジカルな発想では出てこないジャンプが可能になったり、小さな驚きがつまったプロダクトができあがるという。


スーパーマリオの「ハテナブロック」、どのように誕生したか?

 遊び心がプロダクトにつながった事例として、赤間氏は任天堂時代のスーパーマリオ開発を振り返った。

 スーパーマリオの世界には、マリオが乗るとコインが出てくる「ハテナブロック」がある。当初、この「ハテナブロック」のアイデアをチームの仲間から提案されたとき、赤間氏はとまどい、「なぜマリオが乗るとコインが出てくるのか」と、理由を質問したという。大学で工業デザインを学んできた赤間氏にとって、機能には意味が必要だと考えていたからだ。

 しかし、「面白いじゃない」という仲間の返答を聞いて、それで良いんだと考え方が広がったという。

 スーパーマリオでは、ほかにもキノコが出てきたり、気持ちよく敵を倒せたりするような、小さな“おもしろさ”の工夫が詰めこまれている。「世の中に横スクロールの2Dゲームがあふれかえる中で、今もブランドが輝き続けているのは、こうした千の小さな喜びが詰まったことが強さの秘密なのではないでしょうか」と赤間氏は分析する。

 また、プロダクト作りでは、ペルソナ設定も行われる。ユーザーを性別、年齢、好みなどの属性で分類し、どのユーザーをターゲットにするかを考えるのだ。赤間氏は、「これらを基本としながら、その前段で人間の本能や原体験へのアプローチをコアにすえたアイデアが重要です」と力説した。

 小さな子どもから年配者まで、人間なら誰もが気持ち良いと思えるようなユーザー体験を追求していくことが求められるのだ。

 ここからは、良いプロダクトを作る上で重要になる「チームづくり」のポイントを解説する。サントリーが重視する「5F」「透明性」「進め方の改革」とは何か。

【次ページ】良いチームの条件(1):「5F」とは

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