開閉ボタン
ユーザーメニュー
ユーザーメニューコンテンツ
ログイン

  • 会員限定
  • 2019/10/05

「死ぬほど熱中」するゲームでの“ヤバい集中力”を仕事に生かす方法

集中力は、人生の成功に不可欠な能力だ。気を散らさずに大事な作業だけに取り組めれば、大きな成果を上げられる。しかし、私たちはいつも集中力の欠如に悩まされている。ゲームやスマホには発揮できる集中力を、なぜ仕事に生かせないのだろうか? 新著『ヤバい集中力』を上梓したサイエンスライターの鈴木 祐 氏は、その原因について、「あなたが怠け者だからでも才能がないからでもありません。ただ人間の心のメカニズムを理解していないだけで、どんな人のなかにも『ヤバい集中力』は眠っているのです」と語る。1日に平均15本の論文と3冊の本を読み、2万~4万字の原稿を毎日のように生産しているという同氏が、集中力を上げる方法について解説する。

サイエンスライター 鈴木 祐

サイエンスライター 鈴木 祐

1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。近年では、自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、3年で月間100万PVを達成。また、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。

photo
「ヤバい集中力」を使いこなすにはどうすればいいのか
(Photo/Getty Images)

獣≒本能、調教師≒理性

 多くのハイパフォーマー研究によれば、生産性が高い人たちは、多かれ少なかれ無意識のうちに似たようなポイントを押さえており、そのおかげで高い集中力を発揮できていることがわかっています。その“ある要素”を、本稿では「獣と調教師」と呼びます。

 「獣と調教師」とは、「人間の心は2つに分かれている」という事実を比喩(メタファー)で表したものです。この発想自体は、目新しいものではないでしょう。私たちの心がひとつに統合された存在でないことは、古くから知られていました。キリスト教の天使と悪魔が代表的な例です。人類を堕落に誘う悪魔に対し、節度を重んじる天使が戦いを挑むシチュエーションは、もはやベタすぎてコントでも使われません。

 幸いにも現代ではより精密な「分裂した心」の研究が進みました。なかでも説得力のある証拠を出したのは、1980年代に発展した脳科学の分野でした。多くの研究者が脳スキャンをくり返し、人間の頭のなかでは前頭前皮質と辺縁系と呼ばれるエリアが主張をぶつけ合い、肉体の支配権をめぐってつねに戦いを繰り広げている事実をあきらかにしたのです。

 前頭前皮質は人類の進化においては後のほうで誕生したシステムで、複雑な計算や問題解決が得意。一方の辺縁系は初期の進化にできたエリアで、食事やセックスなどの本能的な欲望をコントロールします。

 たとえば、あなたが「仕事をすべきだが酒を飲みに行きたい」と悩んでいるときに「仕事をしよう」と主張するのは前頭前皮質の役割で、辺縁系はひたすら「酒だ!」がと駄々をこね続けます。「貯金が必要だが旅行に行きたい」といった状況なら、前頭前皮質が「貯金派」で辺縁系は「旅行派」です。

 本稿で使う「獣と調教師」も、この流れに沿ったものです。ここまでの説明に準じれば、獣は「衝動」や「辺縁系」に当たり、調教師は「理性」と「前頭前皮質」に相当します。本能のまま好きに動く獣を、調教師がどうにかして操ろうとするような、そんなイメージです。

画像
ゲームに没頭しているときの集中力を仕事で出すには?
(Photo/Getty Image)

死んでしまうほど熱中する「ゲーム」の力をハックせよ

 2011年、20歳のイギリス人男性がコンピュータゲームのプレイ中に意識を失い、そのまま命を落としました。セーブデータの記録によれば、男性のプレイタイムは12時間超。長いあいだ同じ姿勢でゲームを続けたせいで体内の水分が減り、固まった血液が心臓から肺動脈に詰まった結果のショック死でした。

 近年では似たような死亡事故が増え続けており、2002年にはオンラインゲームを86時間プレイし続けた韓国人の男性が死亡。2015年のロシアでも22日間休まずゲームをし続けた少年が突然死しています。いずれの事例でも、プレイヤーは食事とトイレ以外はほぼ体を動かしておらず、下半身のうっ血で死に至ったようです。

まさに、悪い意味で「ヤバい集中力」です。

 この問題について考えるために、人類が娯楽の発達に傾けてきた情熱の歴史を見てみましょう。一番わかりやすいのは、ギャンブルです。

 ギャンブルの歴史は古く、古代ローマではカリグラやネロなどの皇帝が日ごとサイコロ遊びに興じ、そのせいで行政が止まったとの記録が残されています。さらに16世紀のイギリスではポーカーや競馬が流行り過ぎたせいで、週末にしかギャンブルを楽しんではならないという法律まで作られたほどです。

 ギャンブルの魔力に目をつけたカジノ経営者たちはおもに1960年代からのアメリカで、獣の反応を引き出すための手法を磨き上げました。きらびやかなネオンで外観を彩って獣の注意をひく。窓と時計を撤去して現実から切り離す。派手な音楽と照明で気持ちを駆り立てる。無料のアルコールで調教師の働きを狂わせる。たまに大当たりを出して希望を煽る。

 そして、カジノの中毒性をさらに身近にしたのが現代のゲームです。レベルアップの魅力が架空の達成感を煽り、ランダムに現れるレアアイテムはプレイヤーの期待を高め、イベントのクリアボーナスがさらなるモチベーションをかき立てる。なかでも近年のソーシャルゲームにおける課金の仕組みは、カジノでもっとも収益率が高いスロットマシンの仕組みそのものです。

ゲームは脳を気持ちよくさせる最強のテクノロジーだ!

 ゲームがここまでの魅力を持ち得たのは、クリエイターたちが「報酬をいかに提示するか?」の問題を徹底的に掘り下げたからです。

 世の中に、“ごほうび”が嫌いな人間は少ないでしょう。昇進で給料が上がったり、人事評価で良い言葉をもらったり、趣味のイベントで賞を受けたりと、自分の行動が報われるのはなんでもうれしいものです。

 しかし、カジノが進化する過程でクリエイターたちが行きついた最大の結論は、「本当に大事なのは報酬そのものではない」ということでした。

 考えるまでもなく、胴元がいるギャンブルほど不合理な行動はありません。カジノ、競馬、宝くじなど、大半のギャンブルでは期待値がマイナスになります。短期的には大当たりを引くことがあっても、最後には大数の法則が働くため、どのようなプレイヤーでも敗北はまぬがれません。

 それでもギャンブルにのめり込む人が後を絶たないのは、報酬それ自体に魅力があるからではなく、「報酬の出し方」がうまいからに他なりません。スロットマシンがプレイヤーを虜にする手法はいくつもありますが、もっとも獣への影響が大きいのは「ニアミス感」と「スピード感」の2つです。

【次ページ】あなたの仕事を「クソゲー」にしてしまう2つの要素

人材育成・人材獲得 ジャンルのセミナー

人材育成・人材獲得 ジャンルのトピックス

人材育成・人材獲得 ジャンルのIT導入支援情報

PR

ビジネス+IT 会員登録で、会員限定コンテンツやメルマガを購読可能、スペシャルセミナーにもご招待!