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  • 2020/09/23 掲載

建設DX「日本が最も進んでいる」が示す“現実”、12カ国調査で判明

IDC Japan、オートデスクが解説

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深刻な人材不足と就業者の高齢化に直面し、技術活用による生産性の向上が喫緊の課題となっている建設業界。いまやあらゆる企業がデータを活用した戦略を練り、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいるが、国内の建設業のDXはどのような状況にあるのだろうか。IDCが世界12カ国の建設業835社を対象に実施した調査をもとに、「建設DX」の実態と課題をIDC Japanのリサーチバイスプレジデント 寄藤 幸治氏らに聞いた。

執筆:井上猛雄、取材・構成:ビジネス+IT編集部 本橋実紗

執筆:井上猛雄、取材・構成:ビジネス+IT編集部 本橋実紗

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日本を含む世界12カ国の建設業を対象とした調査結果から国内の「建設DX」の道しるべが見えてきた
(Photo/Getty Images)

建設業のDX成熟度「日本が1位」の意味とは

 デジタル技術の活用によりビジネスのイノベーションを目指す「DX(Degital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)」。本稿では、建設業界のDX推進の現状や課題、今後どのようなことに取り組むべきかを、IDCが実施した調査をもとに探っていく。まず、IDCではDXを以下のように定義している。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革をけん引しながら、第3のプラットフォームを利用し、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの改革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。

 この定義のもと2020年4月に同社が実施した「国内CIO調査2020」によると、約43%の国内企業がすでにDXに取り組んでおり、進行状況を産業分野別にみると「金融」が最も進んでいるが、2番手は「建設/土木」だった。建設業のDXは、製造業や流通業などと比べて進んでいる状況にあるようだ。

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産業分野別にみた国内企業のDX進行状況
(出典:IDC Japan)

 また、同社が2019年4月に世界12カ国の建設業835社(うち日本企業は50社)を対象に、DXへの取り組みに関して行った調査では、国内建設企業の78%が「DXを優先度の高い重要事項」として捉えているという。さらに、業界内のDX成熟度を「個人依存」「限定的導入」「標準基盤化」「定量的管理」「継続的革新」という5段階で評価し、国ごとに比べると「日本がトップで成熟している」という、やや驚きのある結果になった。

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各国ごとの建設業のDX成熟度。日本は米国を抜いてトップにいるが、決して喜ばしい結果ではないという
(出典:IDC Japan)

 この結果について、IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤 幸治氏は「成熟度のデータだけを見ると日本が進んでいるように見えますが、日本も各国も、建設業界全体が5段階の成熟度のうち2段階という限定的なステージにとどまった点が大きなメッセージになると考えています。国内の建設業では、DXを必要とする課題が山積しており、変革の余地が大いにあるといえます」と説明する。


 寄藤氏の指摘のように、上図ではすべての国が、1段階(個人依存)あるいは2段階(限定的導入)に位置している。これは、建設業界全体がDXの初期段階から脱しておらず、これから標準基盤化を進めていく段階にあることを示している。

 各国比較で日本がトップとなった理由としては、国内の大手ゼネコンを中心に、ロボットやドローン、AR、VR、5Gといった、既存のITの枠組みに収まらない先進技術の取り組みを進めていることが挙げられるという。だが、それはあくまで局所的な事象であって、全体でみると進捗度は平準化されているということだろう。経済産業省と東京証券取引所が共同で選定した「DX銘柄2020」に、建設業では鹿島建設とダイダンの2社が選定されたが、まさに局所的な事象であり、業界平均はまだ初期段階に位置しているようだ。

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2020年8月25日に発表された「DX銘柄2020一覧」。35社のうち、建設業では鹿島建設とダイダンの2社が選定された
(出典:経済産業省 報道発表資料)

DXの成熟を阻む5つの要因

 IDCは、DXの成熟を阻む要因として「専門知識の不足」「サイロ化したイノベーション」「サイロ化したDXイニシアチブ」「時代遅れのKPI」「戦術プラン」という5つの課題を選定し、これらを「DXデッドロック」と命名している。ここから国内建設企業の課題を細かく見ると、60%が「DXパフォーマンス」が課題と回答し、56%が上げた「サイロ化されたイノベーション」も大きな課題の1つといえる。

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DXに向けた5つの課題「DXデッドロック」。国内建設企業の課題として多いのは「DXパフォーマンス」と「サイロ化されたイノベーション」。50%を超える回答は日本だけとなった
(出典:IDC Japan)

 DXパフォーマンスについては、時代遅れのKPIを廃し、最新のDXに見合うようなKPIや評価軸を確立することが重要だ。一方、サイロ化されたイノベーションでは、個別最適化をやめ、全体最適化が図れるデジタル統合が求められる。

「建設業に限らず日本の組織は縦割りが多く、DXもバラバラに着手され、そのまま突っ走る傾向があります。本来ならば、ボトムアップのスモールスタートから立ち上がったDXを全体としてまとめ上げ、経営課題として取り組まなければいけませんが、それがうまくいっていません。また日本の場合、経営トップの考え方も現場主義的な面が強く、そのような意識がITやデジタル化を阻む要因の1つになっています」(寄藤氏)

 同社ではこれらの課題を打開するために、企業がデジタル技術を当たり前のように活用していく「デジタルネイティブ企業(Digital Native Enterprise)」を目指すための戦略が必要と説いている。

日本社会の縮図? 建設業界の課題にDXはどう役立つか

 ここからは建設業界特有の課題にフォーカスしていこう。建設業がDXを必要とする課題は、「技術伝承」「資材のサプライチェーン」「労働力不足」「スマートシティー」などが挙げられる。寄藤氏は、「建設業は国内のさまざまな課題が先鋭的に表出している産業である」と業界の特性を指摘する。では、これらの課題を解決するためには一体どうすべきなのだろうか。

【次ページ】課題山積の建設業界、まずは何からすべきなのか

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