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  • 2020/09/23

近づく年末商戦、「ブラックフライデーの死」の先にあるもの

米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

米国では新型コロナウイルスの大流行で、感染者数はすでに600万人を突破、さらに18万人以上という桁違いの死者を出したが、ようやく下火に向かう兆しが見え始めた。しかし、秋冬に第2波が再び米国を襲う可能性は否定できない。こうした中、買い物客が押し合いへし合いでバーゲン品を目指す「ブラックフライデー」(今年は11月27日)の商慣行が見直されることは確実だ。一部では「ブラックフライデーは死んだ」との極論も出る中、実店舗やオンライン(EC)ではどのように年末商戦への準備を進めているのかを探る。

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」という大きな商戦が近づく中、各社の動きは
(Photo/Getty Images)

6割超が「感染防止策があっても店で買い物しない」

 今年のブラックフライデーを予測する上で、大変興味深い数字が発表された。デジタルマーケティング調査企業の米Emarsys が8月28日、「米消費者は買い物時のCOVID-19の感染リスクを非常に心配しており、アンケート調査回答者の62%が、『どれだけ店舗で感染防止策が講じられても、ブラックフライデーに実店舗内で買い物をしない』と答えた」との結果をリリースしたのだ。

 同調査によると、「ブラックフライデーに実店舗内で買い物をする」と回答したのは4%に過ぎず、28%は「買い物すべてをオンラインで済ませる」と答えた。ただし、「実店舗の値引き幅が、オンラインより魅力的であれば、実店舗での買い物をする」との回答が19%もあったことは注目される。

 こうした中、米小売り大手は大幅な年末商戦の作戦変更を強いられている。昨年までは、感謝祭の翌日早朝から始まるブラックフライデーだけではなく、ライバルから商機を奪うべく、前日の感謝祭当日にも店を開ける小売り最大手の米ウォルマートやライバルの米ターゲット、米コールズ、さらに家電販売大手の米ベストバイなどの動きが目立っていた。

 しかし今年は、ウォルマート、ターゲット、コールズ、ベストバイなどがこぞって、感謝祭当日は閉店すると早々に発表している。

 それだけではない。ブラックフライデーに開店する企業は、「売り方」そのものを変更することになりそうだ。KPMGで米消費者動向を担当するスコット・ランキン氏は、「ブラックフライデーそのものがなくなってしまうかもしれない。小売業者が在庫を積み上げ、店内に数千人の客を呼び込んでモノを売る従来のスタイルには、感染リスクが多すぎる」との見解を表明した。業界では、実店舗におけるセールが控えめなものになるとの予想が多い。

 事実、ホームセンター最大手の米ホームデポは9月9日、今年のブラックフライデー中止を発表した。ブラックフライデー当日のセール中止を発表した大手企業は初めてであり、この決断が持つ意味は重い。他の大手リテール企業が追随するのか、注目される。

 米国小売業界では、ホリデーシーズンのおよそ1カ月間のみで、年間売り上げの20%をたたき出す。正札から50%、75%割引などの、ブラックフライデーならではのバーゲン品のために深夜から店外に長い行列ができ、開店と同時に店内に人があふれて買いあさりを行うという、業界にとってはありがたい商機である。

 小売り各社は今年に入ってから、コロナ禍の影響で売り上げが減っているところが多い。書き入れ時のホリデーシーズンまで制約を受ければ、さらに打撃を受けるだろう。ブラックフライデーの興奮と、客足と、大きな買い物予算をいかにして別の方法で再現させるか。各社は試行錯誤で知恵を絞っている。


店外テントでの受け取りは現実解か?

 調査企業グローバルデータ・リテールのニール・ソーンダース氏は、「従来は、店内にできる限り多くの客を案内することで売り上げを伸ばしていただけに、客数を制限しなければならないのは痛手だ。業者は開店時間を短縮して客数を減らす、店内の社会的距離を確保する、店内の一方通行を確保する、マスク着用を義務付ける、などの方策を採ることになる。また、オンライン注文の品物を、店舗のすぐそばの店外お渡し場で受け取りというスタイルがはやるだろう」と予想する。

 事実、米デパート大手メイシーズのジェフリー・ジェネット最高経営責任者(CEO)は、同社のホリデーシーズン向けの売り上げ増進の切り札として、「オンライン注文、店外お渡し場で受け取り」を挙げた。同社はこれを昨年には実施しておらず、コロナ禍を受けて導入される新しい手法だ。

 一方、ターゲットやウォルマートなどは、日常の買い物において「オンライン注文、店外で受け取り」を拡大しており、コロナ禍によって店外受け取りをさらに増やしてきた。加えて、ソーンダース氏は、「店外の駐車スペースにテントを構えて、物品を販売することも考えられる」とする。

 しかし、これはパーフェクトな解決策ではない。ホリデーシーズンの買い物量は他の季節とは比較にならないほど増える。店外受け取り場に相当の工夫を凝らし、スタッフも十分な訓練を受けさせなければ、たちまちクルマの行列が公道にまであふれ、客の不満が爆発する恐れがある。また、店外テントにおける販売も、風雨や寒さの中での買い物の不便、盗難の懸念など、現実的なオプションとなり得るのか、疑問を呈する専門家もいる。

セールを通常よりひと月前倒しする大手も

 こうした中、ターゲットのブライアン・コーネルCEOは、「今年は、安全こそが喜びのホリデーシーズンの基礎になる。そのため弊社では、『ターゲットだけにできる利便性、おトク感、楽しみ』を提供する」と宣言して注目を浴びた。

 このように、制約が多い実店舗販売を救うひとつの方策として、一部の小売業者は「ホリデーシーズンのセール前倒し」を導入することを発表している。店内の混雑を、長めに設定したセール期間で分散させ、買い物客の安全と売り上げの両方を確保する作戦だ。ターゲットは、ホリデーシーズンのセールを10月に開始する。メイシーズのジェネットCEOも、「弊社はセールを10月末のハロウィーン後に開始する」と発言している。

 しかし、消費者が実際にプレゼントを贈り合うのは12月末だ。セールを10月に前倒ししても、すんなりと応じてくれるかは未知数である。年末の買い物は、やはり年末にならないと「その気にならない」ということはあろう。

【次ページ】「ブラックフライデー」と「サイバーマンデー」の境界が薄れつつある

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