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  • 2021/03/10

VPP(仮想発電所)とは? 新たな商機「需給調整市場」に異業種も続々参入

2021年4月、「電力需給調整市場」が誕生する。それに伴い、大きく拡大すると見込まれるのが「VPP(仮想発電所)」だ。VPPとは、さまざまな再生可能エネルギーや蓄電池、自家発電装置などの電源を束ね、その地域にまるで大きな1つの発電所があるかのように電力を安定的に供給できる仕組みである。電力供給を平準化・安定化する「調整」分野では、IoT、5G/6G、ブロックチェーン、AIなど最新のICTが威力を発揮する。この市場に今、電力企業だけでなく、異業種からの参入も相次いでいる。電力リバースオークション「エネオク」を運営するエナーバンクの代表取締役社長、村中 健一氏の解説を交え、目が離せない成長市場の今を解説しよう。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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今さら聞けない「VPP」とは?
(Photo/Getty Images)


「電力需給調整市場」が4月に誕生

 2021年1月、本格的な寒波が到来した日本列島では、暖房需要の急増、火力発電の主要燃料であるLNG(液化天然ガス)の供給不足、冬場の太陽光発電や水力発電の出力低下などが相まって、全国的に電力需給がひっ迫した。

 2005年4月に取引を開始した日本唯一の卸電力取引市場「日本卸電力取引所(JEPX)」では、取引価格が高騰し、新電力の中には調達価格が販売価格を上回る「逆ザヤ」が発生したところも出た。採算がとれないまま赤字経営に陥れば、存続が危ぶまれる。

 そうした状況で、2021年4月に経済産業省資源エネルギー庁の肝いりで、電力取引の新市場「電力需給調整市場」が誕生する。これは、大手電力会社や新電力でも大手が主に参加するJEPXとは違い、再生可能エネルギー(以下、再エネ)にターゲットを絞ったものになる。

再エネ関連市場は「4年で41.3%」の成長

 国や自治体、民間から再エネ関連市場に支出される予算規模は、今でも右肩上がりで伸びている。

 調査会社シード・プランニングが2020年4月に発表した「2020年版 地方自治体・47都道府県 再生可能エネルギー導入の現況分析」によると、国の再エネ設備導入支援、水素社会実現への投資、研究開発・再エネ開発投資、自治体施策予算、民間投資をひっくるめた予算規模は、2019年度の5,151億円から2023年度の7,280億円へ、4年間で41.3%の伸びをみせると予測されている。

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再生可能エネルギー関連市場に支出される予算規模予測

 発電所が起こした電気は「発電事業者 → 一般送配電事業者 → 小売電気事業者」のルートをたどり、送電網で小売電気事業者に送られ、エンドユーザーに供給される。小売電気事業者は、一般送配電事業者(もともとは大手電力会社)に依頼して発電所からの電気を「託送」してもらい、手数料を支払っている。

 再エネ最大の欠点は、電気出力が安定しないことだ。バイオマス、小水力、地熱は比較的安定しているが、風力は風次第であるし、東日本大震災以後の10年間に大きく普及した太陽光は夜間の発電量がゼロになり、昼でも季節や天候で大きく変動する。

 電気を受け入れて家庭や事業所に販売する立場で言えば、再エネの電気は停電を起こさないように需要と供給のバランスをとり、安定した電圧、周波数で供給を続けるのが難しい電源である。足りなければ電気を買ってきて供給責任を果たさねばならないが、余ってもムダになる。そこに「電力需給調整市場」誕生の背景がある。


成長必至の「VPP(仮想発電所)」とは何か?

 2016年には、電力の調達先を公募して入札方式で決定し電力の調整を図るJEPXの仕組みができている。民間では「電力リバースオークション」のような新しい取引手法も行われているが、自治体単位などローカルな存在にとどまっている。

 しかし、2021年4月に発足する需給調整市場では、発電会社だけでなく需要家も、その両者の中間の業者も参加して、関東や九州のような地域ブロックの大きな単位で電力の需給を細かく調整し合い、代価として金銭を受け渡す。全国的に価格競争が促進され、調整力が発揮され、電力需給はより安定することになる。

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2021年度以降の電力需給調整
(出典:関西電力より引用)

 特徴は、個別の発電事業者だけでなく、同じエリア内の複数の発電事業者がまとまった1つの「パッケージ」からも電力を調達できるようになることである。

 パッケージの参加者は発電事業者の発電機だけではない。工場やビルの自家発電装置も、燃料電池などのコージェネレーションシステムも、停電に備えて設置された蓄電池も、参加して収入を得ることができる。需要家が余った電力を返す「逆潮流」も供給側に立てる。

 そのように、仮想的(バーチャル)に同一エリア内の電力供給をコントロールするパッケージを「VPP(仮想発電所/バーチャルパワープラント)」と呼び、従来の大規模発電所にとって代わる次世代の電力インフラとして今、注目されている。

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VPPのイメージ
(出典:経済産業省資源エネルギー庁より引用)

 電力会社から分離した一般送配電事業者だけでなく、新電力など小売電気事業者も、工場やビルやマンションなど大口需要家も、発電会社も電力を調達できる。

 「エネルギーの地産地消」をうたう太陽光発電事業者が夜間に、風力発電業者が無風の時にVPPから電力を買えば、地元の村などの直接のユーザーに電力を途切らせることなく供給できる。

 そしてVPPは、「電気自動車(EV)」も供給を受ける側だけでなく、供給する側としても参加できる。ガレージに駐車中のEVに電源コードをつないでおくと、EVは電気的には「蓄電池」とみなされるからだ。夜、駐車中のEVマイカーの大容量バッテリーから放電し、太陽光発電所の代わりにVPPに電力を供給して収入を稼いでくれることもありうる。実際には、EV充電時の電気代と相殺され、それが安くなるだろう。

【次ページ】再エネの弱点をカバーするVPPのメリット

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