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- 2021/03/25 掲載
閉鎖インテグラルの「日本型システム」は、成長鈍化に弱いのか?強いのか?篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第132回)
篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第132回)
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中央大学国際情報学部教授/九州大学名誉教授
九州大学経済学部卒業、九州大学博士(経済学)。経済企画庁調査局委嘱調査員、日本開発銀行ニューヨーク駐在員、ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院教授等を経て2026年より現職。経済財政諮問会議「成長力加速プログラム・タスクフォース」委員、内閣府経済社会総合研究所主任研究官、総務省参与、社会情報学会理事・同評議員、九州大学経済学会会長などを歴任。貿易奨励会優秀賞、テレコム社会科学賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞などを受賞。専門は情報技術革新の経済効果分析。
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
デジタル敗戦と経済システムの関係とは?
いずれも、情報化が本格化した1990年代の経済停滞を1980年代と対比したものだ。第1の議論は、日本経済の停滞はジャパン・アズ・ナンバーワンの時代に称賛された日本型システムが1990年代以降に変わってしまったという「変質説」、第2は、そもそもジャパン・アズ・ナンバーワンは幻想で、経済効率性を向上させるような日本型システムは存在しなかったという「不存在説」だ。
そして第3の議論は、日本型システムの特質はたしかに存在し、基本的には変わらないが、デジタル化によって、以前は強みだった特質が弱みになったという「情報化要因説」だ。
これは、「存在・不変説」に「技術変化」を組み込んだ議論で、クライン教授らによる日米共同研究もその1つと言える。そこで用いられたのが、連載の第128回で解説した「統合型システム」と「モジュール型システム」という概念だ。
デジタル革命を生んだ技術革新によって、統合型システムに有利な状況からモジュール型システムに有利な状況へと経済環境が大転換(DX)したというわけだ。一体なぜなのか。その手がかりを探ってみよう。
日本の「閉鎖インテグラル型」、米国の「オープン・モジュール型」
情報技術革新と経済との関係について、中条(2000, 2001)では、藤本・武石(2000)、鬼木(2000)、国領(2000)らによる自動車、コンピュータ・半導体、情報・通信などの産業別日米比較分析をもとに、「オープン化」を鍵概念として考察がなされている。日本の産業を「閉鎖インテグラル型」、米国の産業を「オープン・モジュール型」に特徴付けた上で、モジュール化が困難で、擦り合わせ・作り込みを追求するような分野では日本が競争力を有しているが、「このシステムは、形成するのに時間がかかり、かつ、一度できあがると改変の困難なシステムである」とその弱みを指摘している(中条[2000])。
そして、米国産業がデジタル化と共に復活した要因を、(1)閉鎖インテグラルな仕組みから生まれた日本的な品質管理を学習したこと、(2)オープン・モジュール型に有利な市場環境が整ってきたことの2点だと述べている。
このうち、後者の市場環境の変化については、先進国経済の成熟化に伴う市場ニーズの多様化やグローバル化による多様な市場の出現に加えて、パソコンなど技術革新が速くモジュール化に適した情報関連分野が急成長した点が強調されている。
その上で、個別産業の分析から浮かび上がる日本経済の問題点を、(1)自然条件などから米国と比較した優位性のなさ、(2)経営戦略の誤り、(3)経済制度・社会制度上の問題、という3要因で考察している。
【次ページ】日本型システムは成長鈍化に弱い?
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