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  • 2021/09/29

ライオンのDXを推進部長が明かす、口腔・歯ブラシ・香料データで「習慣を科学する」

2021年1月、社内のデジタルトランスフォーメーションを担うDX推進部を発足させたライオン。健康志向が高まり、ヘルスケアテック市場にも熱い視線が向けられる今、ライオンが描くDXの姿とは。米国で危機感を覚えDX推進部の立ち上げに奔走した黒川博史氏に、社内における変革、そして今注力しているデータ領域について話を聞いた。

執筆:フリーライター 山岸裕一、編集:編集部 渡邉聡一郎

執筆:フリーライター 山岸裕一、編集:編集部 渡邉聡一郎

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ライオン
DX推進部長
黒川 博史氏

米国で目の当たりにしたヘルスケアテックの先進性

 黒川氏はライオンで10年以上、ライオンの研究所で基礎研究に携わってきた人物だ。同氏がデータサイエンス室の室長を経てDX推進部を起ち上げるに至った経緯は、2018年の米国視察で見た光景がきっかけだった。世界最大級の家電見本市、CESで黒川氏は衝撃を受けた。

「私たちがアイデアレベルで考えていたものがすでにサービス化されていた。その先進性、スピード感にまず驚きました。中国ネット保険大手が「むし歯保険」なるサービスを展開しており、ヨーロッパに目を向けると、電動歯ブラシのサブスクリプションモデルが販売され始めていたのです」(黒川氏)

 展示会でサブスク、SaaSサービスの販売に魅力を感じる一方で危機感も同時に抱いたと同氏は語る。歯ブラシなどは一度、定期便などのサブスクに組み込まれると、なかなか別の商品には変えない。そのポジションに入れなくなることに、危機感を覚えたのだという。また、当時はスマートスピーカーのGoogleアシスタントやAmazonアレクサが普及し始めていたタイミングでもあった。「生活の中にここまでスマート機器が入り込んで来るのかと、違う意味での危機感を覚えました」と黒川氏。

 ライオンはデジタル化の潮流に乗り遅れている……。そう強く感じた黒川氏は、帰国して早々に上長を説得し、DX推進部の前身となるデータサイエンス室を研究室内組織として創設。自身は室長に就任した。

ライオンの「守り」のDX、ツール選定の基準は

 データサイエンス室のメンバー集めを行った黒川氏はまず、社内のデジタル課題を整理した。

「2つの観点から、やるべきことをしぼりこみました。第一に、データサイエンス室(現・DX推進部)は複数の部署にまたがるテーマを抽出すること。全社機能として動くので、1つの部署でも完結することはあまり取り組む意味がない。第二に、この先5年の事業を考えたときに経営にインパクトを与えるテーマであること。売上の拡大、利益の拡大、省人化という3点を主な指標として、経営へのインパクトと考えました」(黒川氏)

 そこで出てきたToDoを「守りのDX」と「攻めのDX」の2軸で分け、解決へと進めている。「守りのDX」とは、社内の基幹システムを統合するなど、社内課題を探し出し、社員たちにデジタル推進の必然性を啓発すること。「攻めのDX」とは、主にAIの活用によって新たなサービスを作り出すことである。

 前者の「守りのDX」では現在、社内の基幹システムを刷新し、経営管理の高度化を目指している。これまではそれぞれの部門、部署ごとに独自でスクラッチ開発したシステムを採用していたが、それをドイツSAP社のERP『SAP S/4 HANA』へ移行している。原料調達から顧客へ製品を届けるまで、生産から営業、小売など“バケツリレー方式”で分かれていたシステムを統合するための試みだ。なお、S/4 HANAに限らず、ツール選定においては「汎用性の高さ」を第一に考えているという

「ビッグデータの管理にはAWSのAmazon S3やAmazon Redshiftを、AIプラットフォームにはDataRobotを採用しています。SAPやAWSは広く使われていて実績がありますし、DataRobotなら私たちDX推進部以外の現場メンバーにも使ってもらいやすいのではと考えました。もちろん、ツール以外にも、AIのスタートアップやSIerなどさまざまなパートナーの協力を得ながらDXを進めています」(黒川氏)

パーパスに基づいたDXで、習慣を科学する

 「攻めのDX」についてはデータ活用が中心となる。

 その指針となるのが、2021年2月に中長期経営戦略フレーム「Vision2030」で示された「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスだ。2030年までに10億人の人たちの「健康な生活習慣づくり」に貢献する、という目標を掲げている。

 より良い習慣づくりへの貢献のため、DX推進部では、業界シェア国内No.1をほこり、全社をけん引する主力事業であるオーラルケア事業に注力している。たとえば、歯ブラシ開発において機械学習を用い、実際にサンプルを作製せずとも仕様(毛の硬さ)が日本産業規格(JIS)に合っているか判断。サンプル作成数は大幅に減り、開発期間は従来の3/4程度になった。

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歯ブラシ開発におけるAI活用
 加えて、歯磨き剤の香料開発においても、AIスタートアップであるLIGHTz社と協力し、熟達したフレーバリスト(ライオンに所属する香料の専門家)の知見を若手フレーバリストへ継承する“熟達者AI”を開発した。熟達者の知見を「ブレインモデル」として可視化して香料設計データと連携。若手フレーバリストが目指したい香りをデータベースで検索すれば、香料原料の調合に関する改善のアドバイスが表示される。

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若手フレーバリストと熟達したフレーバリストの、思考の違い

【次ページ】強みは20年以上積み重ねた「データ」、口腔健康ではどこにも負けたくない

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