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- 2021/12/20 掲載
フェイスブック改めメタ創業者、ザッカーバーグが再び「世界一」になるための条件とは
連載:企業立志伝
1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日
前編はこちら(※この記事は後編です)
会社の売却危機にザッカーバーグ氏は何をした?
Facebookのユーザー数がMySpaceを抜いて世界一となった当時、ザッカーバーグ氏はFacebookの将来について「最大で人口の30から40%の人が使うようになると考えています」(『若き天才の野望』p409)と話していますが、現在のユーザー数28億5300万人(2021年4月時点)は世界の人口(約79億人)の約36%に達しています。もちろんその間にはザッカーバーグ氏は若きCEOとして厳しい試練も経験しています。2006年、ヤフーから10億ドルという巨額の買収提案が寄せられた時、ザッカーバーグ氏自身は反対でしたが、社内の空気は「会社を売る」ほうへと大きく傾きます。他の取締役や投資家たちにとっては大金を手にするチャンスだったからです。
しかし、周囲にいくら説得されても、ザッカーバーグ氏はこう反論しました。
「これは大変なお金なんだ。それこそ人生を変えるかもしれないお金だ。だけど僕たちには、これ以上もっと大きく世界を変えるチャンスがある。誰かがこのお金を手にすることが、僕にとって正しい行動とは思えないんだ」(『若き天才の野望』p270)
ザッカーバーグ氏はヤフーからの提案の一方で、オープン登録や、自分の友だちが何をしているのか一瞬で分かる機能・ニュースフィードを進めたいと考えていました。オープン登録は成功でした。実施後は1日の伸びが2万人から5万人となり、フェイスブックはさらに成長できると社内のみんなが確信したのです。
そして2012年、Facebookのユーザーは9億人を突破、株式上場も果たすこととなったのです。
インスタグラムやメタバース関連企業を次々と買収
株式上場の年、ザッカーバーグ氏はさらなる成長のために大きな買収を実現しています。2012年4月、フェイスブックは2010年10月に「Instagram」を提供開始したばかりのインスタグラム社を約10億ドルで買収します。同社はケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏が創業し、「誰でも写真家になれるようにする」という創業者の思いから生まれた会社です。
こちらも勢いはすごく、2010年12月にユーザーは100万人を超え、2011年9月には1000万人を突破しています。問題は当初のフェイスブック同様に利益を生む手段を持たなかったことですが、ザッカーバーグ氏はInstagramがスマートフォンなどモバイルに強いところに着目し、買収を決断します。
投資家たちからは「高すぎる」という批判もありましたが、ザッカーバーグ氏は「われわれのゴールはInstagramをより多くの人に広めることだ」(『インスタグラムの流儀』p4)と意に介することはありませんでした。この買収は両社にとって“ウィンウィン”となりました。
インスタグラム社にとっては資金調達に悩むことなく、ユーザー獲得に専念できる一方、フェイスブックにとっては両社の個人データを連携することで広告などの収益があげられるほか、モバイルでもFacebookのユーザーを増やすことができたのです。後述するプライバシー問題などでFacebookを離れたユーザーもInstagramは利用してくれるというメリットもありました。
その後、ザッカーバーグ氏はメタバースにも目を向けます。2014年にVRヘッドセットを開発する企業オキュラスを買収し、2019年には大ヒットVRリズムゲーム「Beat Saber」の開発元Beat Gamesを買収するなど、こちらでも着々と手を打っています。
【次ページ】相次ぐデータ流出……成長とプライバシー保護の狭間で
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