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- 2022/08/05 掲載
【図解】建設DXを遅らせる「デジタル格差」5つの要因、中小企業はどう解決すべき?
建設DXが進まない「2つの要因」
労働集約型産業の建設業において大きな課題となっているのが人手不足です。国土交通白書によると、2020年の平均就業者数はピーク時(1997年平均)から約28%も減少しているとの調査結果が出ています。さらに、働き方改革に伴う残業時間の上限規制が2024年から適用されるため、建設DXによって生産性を向上させようと多くの企業で取り組みが進められています。建設DXは他産業と同じように以下の段階を踏んで進めています。
アナログデータを多く使っている場合は、まずデジタイゼーションを行います。ペーパーレス化によって省力化しコストダウンを実現させます。
(2)デジタライゼーション
デジタルデータを利用して手作業を自動化するほか、クラウドを活用して業務を効率化させます。
(3)DX
デジタイゼーションとデジタライゼーションは技術の活用による効率化であるのに対して、DXは新しい価値を生み出すことでビジネスモデルを変革します。大きな変化であり、社員、顧客、仕入れ先、協力会社などの関係者にも影響を及ぼします。
このように、DXはITを活用してビジネスモデルを変革することを意味します。従来のサービスや製品を効率化し、付加価値を向上させることとは違う概念です。
ところが、中小建設会社の多くは、デジタイゼーションの段階かその手前の段階で止まっているケースが多く、DXの現在位置は企業によってバラバラです。中には、主要な連絡手段が手書き書類やFAXである会社も多くあります。
こうした状況を生む要因が2点あります。1つが建設業で大きな課題となっている人手不足です。DXを進める際の課題として、資金不足や変革に対する抵抗よりも人材不足の影響が大きいことが明らかになっています(図1)。
そしてもう1点の要因がデジタル格差です。
インターネットの普及に伴いスマホやタブレット端末といったデジタルデバイスの利用が当たり前になった現代社会においても、デジタル化の流れに取り残されている情報弱者が多く存在します。特に中小建設会社ではデジタル化を担う人材が不足しています。
建設業で“デジタル格差”が生まれる「5つの要因」
建設業におけるデジタル格差は次の5点が要因として挙げられます。(1)重層下請け構造
建設業界の特徴の1つに、元請け-下請け-孫請けと続く重層下請け構造があります。一般的に階層構造の下位になるほど企業規模が小さくなり、それらの企業が現場での具体的な作業を担っています。
元請けや下請けの管理者は工事の管理業務を行いますが、孫請けなどの企業の社員は指示を受けて現場の労務を担うのが役割です。そして、こうした情報伝達は紙ベースや電話が中心です。孫請けなどの企業は、スマホやLINEを使っていてもそのほかのデジタル機器を使う機会はあまりありません。
(2)仕事の特性や習慣
建設業は事務所でのデスクワークよりも現場での業務が多く、デジタル化しにくいのが特徴です。そのため、テレワークの実施率も低い状況にあります(図2)。
現場業務であってもデジタル化を進めてテレワークの実施率を高められる可能性はあります。しかし、これまでの習慣にとらわれていることが、デジタル化やテレワークの推進を阻害している側面があります(図3)。
建設業においてもデジタル化推進に向けた課題として、アナログ的な文化・価値観や長年の取引慣行が挙げられ、全産業の値よりも大きい数値となっています。
(3)企業規模
総務省統計局の令和3年経済センサスによれば、建設業の全国42万社のうち、個人事業者が11万社(26%)、常用雇用者4人以下が19万社(45%)、9人以下が6万社(14%)です。9人以下までの小規模な企業が85%を占めています。
こうした小規模な企業の多くが、「デジタル化を進める環境にない」「デジタル化の必要性を感じていない」「デジタル化を進めようと思っても具体的に何をどう使えば良いかわからない」「担当できる人材がいない」という状況にあると考えられます。
【次ページ】デジタル格差が生まれる「もう2つの要因」と中小企業の克服事例
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