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2022年11月、日産自動車は「2022年度の上半期決算」を発表しました。これによると、売上は4兆6,623億円、純利益は645億円、グローバルの販売台数は156万台。コロナ禍による半導体不足やロシア・ウクライナ問題の影響による原材料価格の高騰など、逆風がある中でも黒字を維持することができたのには、日産が進めてきた構造改革が関係しています。4年前、元会長を務めていたカルロス・ゴーン氏の会社資金流用疑惑をめぐる事件以降、大きく低迷していました。それを踏まえると、現在の黒字化は今後の成長を期待させる変化と言えるかもしれません。どん底を味わった日産は、いかに復活を遂げたのでしょうか。
カルロス・ゴーン逮捕の影響、とんでもない減収額
2018年11月、世界を驚かす大事件が発生しました。それが、当時、日産の会長であったカルロス・ゴーン氏の逮捕です。事件に対応するため、日産はカルロス・ゴーン氏を解任します。
そんな混乱の中、2019年5月に発表された2018年度決算を見ると、年間の販売台数は前年比マイナス4.4%の551万6000台、売上高は前年からマイナス3.2%の11兆5,742億円と微減、純利益は前年の7,469億円から3,191億円へと、なんと前年比マイナス57.3%の大幅減となってしまったのです。
そして、その直後となる同年7月に発表された2019年度第1四半期決算は、さらに状況が悪化しています。売上高が前年比マイナス12.7%の2兆3,724億円に減少しただけでなく、当期純利益は前年の1,158億円から64億円と、94.5%も減ってしまったのです。
こうした厳しい環境に対して、同社はその先の改革の内容として「2022年度までにグローバル生産能力を10%削減し稼働率を高めると同時に、生産能力の適正化にあわせ1万2500名規模の人員削減を実施する予定です。また、商品ラインアップを2022年度までに10%以上効率化し、コアモデルおよびそれぞれの市場における重要なモデルへの投資に重点を置き、商品競争力を高めます」と名言しています。
これを読む限り、当時の日産は構造改革が必要なほど厳しい状況であったことが推測されます。
日産び低迷、原因は何だったか?
そして2019年9月に日産CEOであった西川廣人氏が辞任。後任は、内田誠氏がCEOとなり、COOにアシュワニ・グプタ氏となることになりました。この人事により、ゴーン氏逮捕に始まった混乱を乗り越え、日産は新体制に移行したと言えるでしょう。
新たに日産CEOに就任した内田氏は、2019年12月の就任会見で、日産のこれまでの問題点について、「目標設定において『できないことをできる』と言わせてしまう文化をいつの間にか作り上げてしまったことである」と語っています。
また、そうした文化の弊害として「社員の自発的な横の連携や問題解決に対する意欲を削いでしまい、成長目標達成のために短期的成果を求めた行動を起こすこととなり、技術開発や商品開発のプロジェクトや、将来に向けた設備や人材などへの必要な投資に影響を及ぼすこととなりました。また、販売面においては、インセンティブに頼った短期的な販売増が、ブランド力と収益力の低下を招きましたが、これは、その典型的な事例です」と説明しています。
しかし、そんな再生の途上にある日産に、さらなる不運が襲います。2019年末に始まった世界的なコロナ禍です。混乱の渦中にある日産に、さらなるコロナ禍による生産工場の停止やサプライチェーンの混乱、販売台数の減少が直撃します。
その結果、2020年5月に発表された2019年度通期決算では、売上は前年比マイナス14.6%の9兆8,789億円、純利益は前年の3,191億円から、一気にマイナス6,712億円もの大きな損失となってしまいました。グローバルの販売台数は493万台でした。ここからは、どん底まで低迷した日産が、赤字脱却を果たすまでの復活劇を解説します。
【次ページ】固定費3,500億円削減を実現、日産の「逆転戦略」とは
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