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- 2023/02/27 掲載
罵倒に取引解消も…「働きたくなる会社」を目指した、ある運送2社の驚きの行動とは
連載:「日本の物流現場から」
フジトランスポート:社長が行った驚きのエピソード
「あそこの社長は、自分のところの長距離トラックに同乗して、奈良の本社まで帰るらしいぞ!?」。筆者も、初めてこのエピソードを聞いたときには驚いた。フジトランスポート 代表取締役 松岡 弘晃氏のエピソードである。フジトランスポート(2022年1月に富士運輸から社名変更、奈良市)は、業界内で「あそこは運賃もそれなりだが、その分、しっかりとした仕事をする」という評判を得ており、言わずとしれた幹線輸送の雄である。
現在、グループ企業の保有トラックは2500台に迫り、拠点数は112を超えた。2035年には5000台、200拠点を目指すという。グループ売上は485億円(2022年6月期)と、トラック輸送だけを行う運送会社としては国内最大規模である。
そんな大企業の社長が、たとえば奈良本社から東京へ出張したとき、仕事が終わってタイミングが合えば、高速道路のインターチェンジ(IC)やサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)などまで出向き、自社のトラックに同乗して帰社するというのだ。松岡社長は「そうでもしなければ、ドライバーと話す機会を作れない」とこともなげに話す。
それだけではなく、松岡社長はドライバーらに自分の携帯電話の番号を教え、「何かあったらいつでも電話するように」と伝えているらしい。さすがに全ドライバーではないはずだが、従業員数が2000人を超える大企業の社長ではまず見られない行動だ。
フジトランスポートの役員は、「時に、私たちよりも現場の情報を先につかんでいることもある」と苦笑する。
日東物流:イメージとまるで違うドライバー職?
「ドライバー未経験でうちに入社した人の中には、『考えていたトラックドライバーのイメージとまるで違いました!』と驚く人もいます」。こう語るのは、日東物流(千葉県四街道市) 代表取締役 菅原 拓也氏である。「トラックドライバー=乱暴でやんちゃ」、あるいは「トラックドライバーの仕事=キツイ」と思っている人は少なからずいる。事実、現在もそういうドライバーがいたり、そういう仕事をしたりする運送会社は存在する。
同社が先日採用した20代男性は、もともと都内の飲食店で勤務していたという。コロナ禍の影響など飲食業が大変な状況にある中で、トラックドライバーになりたいと思い、色々な運送会社の求人を探したという。そして日東物流の評判を知り、都内から引っ越してでも就職したいと応募したそうだ。
「やっぱりうれしいですよ。私たちのやってきたことが認められたような気がします」と菅原社長は目を細める。
菅原社長は、父親から経営を引き継いだ2代目社長である。先代社長が経営していた日東物流は、言ってみればごく一般的な普通の運送会社だった。 【次ページ】激怒・罵倒・取引解消…それでも挑んだ「普通」からの脱却
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