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- 2023/03/24 掲載
“モノが届かない”恐ろしすぎる未来…SCMで考えるべきは超有効な「2つの備え」
【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース
企業が注視すべき「3つの供給制約」と「物流の制約」
筆者は化粧品メーカーで営業、デマンドプランナー(需要予測)、S&OPマネージャーを15年程度、担ってきましたが、いくつかの大きな需要変動を目の当たりにしてきました。こうした際は、さまざまな関係者とのコミュニケーションや、データ分析、市場観察などを通じて需要の因果関係を想定し、SKU別の需要予測をアジャイルに更新することを目指しました。一方で供給についても情報を収集し、自分の需要予測に対応できるかを確認しました。特に消費増税前の駆け込み需要や、インバウンド需要の急増など、需要の拡大局面においては供給制約を把握することが重要になります。当時、メーカーとして注視すべき制約は大きく以下の3つでした。
- (サプライヤーの)原材料生産のキャパシティー
- (自社工場の)最終製品の生産キャパシティー
- (自社工場の)生産ラインの人員
市場の変化を反映させた需要予測に対し、これら3つすべての制約をクリアできるかがその後の供給、つまりは売上や利益に影響します。
しかし最近では、この1月に日本経済新聞で「迫る物流2024年問題 その荷物、来春から届きますか?」という連載が組まれたように、「物流クライシス」が危機として目前に迫っています。3つの制約に加えて物流系の制約についても、考えなければならない状況になっています(図1)。
フィジカルインターネットはなぜ必要なのか?
物流系の制約とは、荷物を運べなくなるリスクのことです。日本の貨物輸送では、重量ベースで約9割、トラック輸送が担っています。しかし、単身・共働き世帯の増加やECビジネスの拡大などによって宅配個数が増加傾向にある一方、相対的に低賃金・長時間労働であるトラックドライバーの人数は減少傾向にあります。これにより、モノを届けられなくなる懸念が大きくなっているのです。
2016年の話ですが、ある宅配業者のドライバーが、受取人不在の荷物に八つ当たりしている動画が話題になりました。この行為の是非については述べるまでもないですが、物流クライシスの1つの闇をのぞき見た気がして、複雑な想いを抱いたのをよく覚えています。
物流実務を完全にロボット化できない限りは、今までどおり人が「モノ」を運ばなければなりません。それを担うドライバーの身体的、精神的な負荷が大き過ぎると、日本の物流機能は崩壊していくことでしょう。
そして「物流の2024年問題」へのタイムリミットが、いよいよ目前に近づいています。この問題は、政府が進める「働き方改革」の一環で、トラックドライバーの時間外労働に上限制約が課せられるというものです。他の職種とは異なり猶予期間が与えられていましたが、そもそもトラックドライバーが特例で長い労働時間認められていたところに日本のサプライチェーンの歪みがあるように思います。
こうした物流クライシスへの有効的な対策として期待されているのが、「フィジカルインターネット」という概念です。
【次ページ】超有効な備え(1):需要シナリオのAI分析
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