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  • 2023/12/13 掲載

DX失敗は人材育成が原因か? 成功させたいなら「6つのスキル」を組織でカバーせよ

【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース

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最近、筆者の元には「AIを活用できるデータサイエンティストを育成したい」といった声や相談が増えてきました。DXを進める中で、ノーコードやローコードのプランニングツールなどを導入しても思うように成果が出ない、といった失敗を経験するからでしょう。ですが、人材育成を進める前に、どのような人材にどのような役割やスキルを担ってもらうか見極めることが大切です。これがDX推進のとても重要なポイントとなります。今回は、ダイキン工業やLIXILの事例を紹介しながら、DX推進のための考え方を整理します。

執筆:山口雄大(やまぐちゆうだい)

執筆:山口雄大(やまぐちゆうだい)

NEC AI・アナリティクス統括部の需要予測エヴァンジェリストとして、「#山口雄大の需要予測サロン(デマサロ!)」や需要予測相談ルームでS&OPをテーマとした情報を発信。青山学院大学非常勤講師、JILS「SCMとマーケティングを結ぶ!需要予測の基本」講師などを兼務。Journal of Business Forecasting(IBF)などで研究論文を発表。『需要予測の戦略的活用』(日本評論社)や『すごい需要予測』(PHPビジネス新書)などの著書多数。

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DXを成功させるには?
(Photo/Shutterstock.com)

SCMでAI活用が爆速化

 SCMは、商品・お金・情報の流れを管理し、制御することでビジネスに貢献するという概念です。ここで言うビジネス貢献とは、売上や利益の拡大、棚卸資産や輸配送費の削減などを通じて企業価値を創出することです。各社の扱う商材によって詳細は異なるものの、SCMの業務プロセスは大きく、以下に整理されます(SCORモデル)。

  • Plan(計画)
  • Source(調達)
  • Make(生産)
  • Delivery(物流)
  • Return(返品)

 この各プロセスにおいて、イタリアのカルロ・カッターネオ大学の准教授らによれば、以下のようなAIを活用した多くの取り組みがすでに行われています(注)

注)Violetta Giada Cannasら.ライノスパブリケーションズ抄訳.“Artificial intelligence in supply chain and operations management: a multiple case study research”.LOGI-BIZ,NOVEMBER 2023, p.50-55.

【Plan】
  • LSTM(Long-Short Term Memory)とサポートベクター回帰(SVR:Support Vector Regression)を使った、野菜の小売段階での需要予測
  • 人口ニューラルネットワーク(ANN:Artificial Neural Network)とSVRを使ったスペアパーツの需要予測
【Source】
  • ANNなどを使った医療機器サプライヤーの選定
【Make】
  • IoTとセンサーによる生産の自己制御
  • K-meansによるリソースとエネルギー使用のリアルタイムモニタリング
【Delivery】
  • XGBoostなどを使った倉庫保管の最適化
  • 人口蜂コロニーアルゴリズムによる一括見積もり、および同時交渉
【Return】
  • 遺伝的アルゴリズムを使ったネットワークデザインの改善

 日本企業においても、さまざまな業界でAI活用は活発化しています。たとえば、機械学習の1つの手法である勾配ブースティング系決定木モデルを使った新製品の需要予測や、SARIMAXモデルを使った既存品の需要予測、最適化技術を使った在庫計画・生産スケジューリングなどの取り組みが進められています。そのほかにも下の図のような取り組みが見られます。

画像
AI活用の取り組み例を一覧
(『業界別!AI活用地図』(翔泳社)を基に筆者作成)

LIXILやダイキンの「DX人材育成」

 以前から需要の不確実性は多くの業界の悩みの種でしたが、新型コロナによって供給の不確実性も大きくなりました。これにより、安定的なサプライチェーンを前提とした意思決定が難しい環境になりました。そこで、進化の著しいデータサイエンスの活用が目指されているのです。

 しかし、データサイエンスを実務で活用するには、データサイエンティストの力が必要です。人材を確保するには、新卒採用や中途採用がありますが、まだ人材市場にはその数が多くありません。また、各業界・業種に特化した知識(ドメイン知識)や、各業務領域の専門知識(SCMやファイナンスなどの知識)にも精通している人材となると、その数はさらに少なくなります。こうした事情から、自社で育成しようと考える企業も表れてきています。

 たとえばLIXILでは、社内でデータサイエンスツールの使用を促し、成功事例を広く公開しています。タイル用インクの在庫状況や今後の生産・納入予定を可視化し、不要不急な発注を減らした、といった事例が紹介されています。またダイキン工業でも、社内に「ダイキン情報技術大学」を設置し、AI活用を推進できる人材の育成を、年間数百名規模で進めています。

 IT部門を通じて外部のテクノロジーベンダーに依頼すると、各ビジネス現場の真のニーズを伝えるのに時間がかかってしまいます。そこで、ドメイン知識と専門的な業務知識を持つ現場の社員が、ノーコードツールなどを使って課題を解決しているそうです。もちろん、ノーコードツールと言っても、その使い方を学ぶ時間や費用が必要になります。

 ここで留意すべきことがあります。それは新しい技術の活用に伴うリスクの管理です。たとえば、ChatGPTに代表される生成AIもさまざまな業界で実務活用が目指されていますが、著作権侵害や情報漏えいといった極めて重大なリスクがあり、その管理が必須になります。LIXILの事例では、アプリ開発のCoE(Center of Excellence)のチームがあり、リスク管理を担っているそうです。

 また、各現場の一部の担当者だけが使えるツールになってしまうと、以前から問題視されている業務の属人化をより深刻にしてしまいます。では、こうしたリスクを回避しつつ、新しい技術を実務に取り入れながら、DXを通して成果を生み出していくには、どのように考えたら良いのでしょうか。

 ポイントは、6種類のスキルをチームでカバーする、ということです。 【次ページ】DX推進に必要な「6種類のスキル」を徹底解説

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