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  • 2024/06/11 掲載

日本の出生率は“過去最低”…教育費無償化や子育て支援拡充も少子化が止まらないワケ

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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2024年6月5日、厚生労働省が2023年の「人口動態統計」を発表した。それによると、1人の女性が産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は1.20となり、8年連続で過去最低となった。また、都道府県別でみると、東京都が0.99と全国で最も低い数値であったという。少子化がさらに加速していく中、日本では、少子化対策として子育て支援や教育費無償化が叫ばれている。今の日本に求められるものとは。
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年々低下する日本の出生率、少子化を食い止めるためには?
(Photo/Shutterstock.com)

国民が考える少子化対策に「一番有効な策」

 厚労省が出生率を発表した翌日(2024年6月6日)に、今度は日経新聞が読者約5000人を対象に実施したアンケートを公開した。同記事によれば、
「政府が打ち出す対処法以外に有効な策について尋ねた項目では、『小学校から大学までの学費無償化』が最多で46.3%を占めた。政府が打ち出す対処法以外に有効な策について尋ねた項目では、『小学校から大学までの学費無償化』が最多で46.3%を占めた」
のだという。この記事に反応したのが、教育費無償化を掲げる日本維新の会だ。

 維新共同代表である吉村洋文大阪府知事は、同日に上記日経記事を引用しつつ、
「子育てで一番お金がかかるのが教育費。政府は『危機的状況!』というなら、高校の無償化、国公立大学の無償化くらいやればいい」
と自身のXに投稿した。

 維新代表の馬場伸幸衆議院議員も合計特殊出生率の低さに触れつつ、
「今までの少子化対策が全然効いていないことが明白になりました。1日も早く教育無償化などやれることは全部思い切ってやりましょう!!東京もこのままでは老いていく!!」
と自身のXへの投稿(6月5日)で述べている。これらのニュースと維新の両トップの投稿を分析していこう。

「教育費無償化」が少子化対策に適さない理由

 まず、冷静になって考えれば、高校や大学の教育費を無償化しても、出生率が上がらないことは、明らかなことだ。理由は簡単で、高校生や大学生を子どもに持つ母親が、妊娠や出産の適齢期を過ぎていることが多いためだ。

 当初、教育費無償化は少子化対策の1つに考えられていたが、この認識が広まるにつれ、維新は「教育費無償化は、世代間格差の是正だ」という風に、論点を変えてきたところだったのである。

 しかし、日経新聞のアンケートをみて、ここぞとばかりに、以前の主張を述べたということだ。アンケートはアンケートとして、何らかの価値があるのだろうが、少子化対策としては意味がないことは明白だ。

 今日現在、少子化の主要因は、明らかになっている。それは、晩婚化と未婚率の上昇である。人口学の専門家である鎌田健司氏が『少子化対策の「ずれ」の正体:人口学からみた未婚化・晩婚化』(調査情報デジタル)で述べているように、政府が進める「子育て支援」は出生率を押し上げる効果が小さいのだ。

 生まれた後の支援=子育て支援に、いくら注ぎ込んだところで、どうにもならないというのが実態だ。

 政府内でも、維新内部でも、この認識が広まっているように感じていたが、衆議院選挙や都知事選が近くなると、国民をミスリードするようになるから恐ろしいものだ。

 いずれにしろ、岸田政権は肝いり政策である「異次元の少子化対策」を撤廃すべきときだろう。それが岸田首相にできないというのなら、次の政権に譲るべきだろう。

分析からみる「子育て支援」と出生率の関係

 さて、最近でも子育て支援が出生率上昇に意味をなしていないという調査が米国で発表されている。

 この調査は、米国・ワシントン大学のIHME(Institute for Health Metrics and Evaluation)が主導する研究活動「GDB(Global Burden of Disease)」の最新の分析だ。


 調査の資金提供者にビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団とあるから、マイクロソフト創業者のビルゲイツが調べさせた研究だ。同分析によれば、次のような調査結果が提示されている。 【次ページ】分析からみえた「出生率」の深刻な状況とは?

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