- 2025/07/05 掲載
メーカーの「盲点」を逆手にとり劇的進化、プライベートブランドに学ぶ重要ヒントとは(2/2)
この「メーカーの盲点」を逆手に取る形で、昨今はコンビニのPB(プライベートブランド)が劇的に進化している。その最大の要因は「棚に置けることが確約されている」ことだ。
当たり前だが、コンビニは自社の棚に何を置くかを、自社で決めることができる。
乱暴に言えば、たとえ品質が低くても、大手メーカーの商品をどかして、そこに自社の商品を置く権利がある。
もちろん売上を考えると、圧倒的な支持を得ている1位のメーカーの商品は外せない。
しかしその隣にあった2位以下の「悪くないけど決め手に欠ける商品」が置いてある場所は仕分けの対象になる。そこに自社のPB商品を置く。
この「保証された販路」がPBを大胆に進化させてきた原動力だ。
PB商品が置かれるのは、あくまでも2位のポジションなので、尖った商品開発ができる。事実、PBのボックスティッシュは斬新なデザインだ。シンプルな無地のものが多く、切り取って捨てられる部分にメーカー名が記載されているものもある。
その姿はまるで最初からティッシュケースに入っているようなボックスティッシュだ。これはメーカーにはできない発想の転換だった。
プライベートブランドの成功から学べる重要なヒント2つ
なぜメーカーにはできなかったのか? 商品のゴールを「コンビニの棚に置かれること」と捉えてしまったからだ。コンビニの棚にさえ陳列されれば、ある程度は売上の見込みが立つ。だから目立つパッケージで勝負するしかなかった。「生活者が家で使うとき」より「売り場で目立つこと」が優先されてしまったのだ。
この課題はティッシュに限らず、どの業界にも言えることだ。自動車、家電、食品、アパレルなど、あらゆる業界で、小売りとの関係や店頭での「目立ち具合」に縛られて本来のユーザーニーズを見失っている例は枚挙にいとまがない。
では、メーカーがこの罠を抜け出すにはどうすればいいのか? PBの成功から学べる重要なヒントが2つある。
1つ目はコンビニなどの流通に卸売をする前に、SNSなどで話題にすること。
これまで、発売前の商品は、まずコンビニなどの流通のバイヤーにプレゼンしていた。「今度こんな商品が出ます」とプレゼンして、棚に陳列してもらうようにPRしていた。
しかし尖った商品、斬新な商品であればあるほど、バイヤーは「こんなの本当に売れるの?」と躊躇する。数字を背負うバイヤーは挑戦的な商品を選択しにくい。結局、王道の商品が選ばれる。
そのため「どうせバイヤーに選ばれないから」と、メーカーも尖った商品、斬新な商品を作りにくくなっている悪循環が生まれている。 しかし、発想を逆転させてみよう。
エンドユーザーの中ですでに話題になっている商品であることが事前にわかれば、コンビニなどのバイヤーも安心して仕入れられる。
尖った商品や斬新な商品であれば「まずはバイヤーにPRする」という発想や商習慣を捨てて「まずは世の中にPRする」という戦略が有効だ。
2つ目は自社の流通やチャネルを持つこと。

また、自社のチャネルであればエンドユーザーの声をダイレクトに感じることができる。その声は次の商品開発にも活かせるだろう。自社商品の販売を、コンビニなどの流通に100%任せてしまうデメリットは、こうした生活者の声が遠ざかってしまうことだ。
ティッシュケースという小さな例から見えてくるのは、「置くための商品」と「使うための商品」のバランスを見失っている現実だ。
売り場で勝つことだけを考えれば、使用時のことは二の次になる。しかし本当の勝負は、生活者が家に持ち帰った後に始まる。なぜなら使い始めてからの体験こそが、次の購入を決めるからだ。
店頭の5秒より、家での5日間を見据えた商品開発が、選ばれ続けるブランドへの道だと言えるだろう。
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