• 2025/08/05 掲載

なぜ娘は外国籍の子に傷つけられた? 保育現場はもう限界…裏にある「3つの構造問題」(2/3)

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【問題点1】法制度の欠陥:76年ぶりに改訂も…

 保育士の配置基準は、法律(主に児童福祉法)によって以下のように定められています。

  • 0歳児:子ども3人につき保育士1人以上(3:1)
  • 1歳児:子ども6人につき保育士1人以上(6:1)
  • 2歳児:子ども6人につき保育士1人以上(6:1)
  • 3歳児:子ども15人につき保育士1人以上(15:1)
  • 4歳・5歳児:子ども25人につき保育士1人以上(25:1)

 娘が1人でも持て余している私の感覚では、「3歳児15人を、いくらプロとは言っても1人で面倒を見るのは無理でしょう!!」と思ってしまいます。

 職員配置については、厚生労働省(現在は一部こども家庭庁に移管)が定める「児童福祉施設の設備および運営に関する基準」第33条等に規定されています。実はこの基準、1948年に制定され、長らく大きな変更が行われていませんでした。そして前出の保育士配置基準は、2024年10月に改定されたものです。

 参考までに、改定前後の保育士配置基準を比較しましょう。

画像
保育士の配置基準は約76年ぶりに仮定されたが…
(筆者作成)

 そしてこの基準は、従来想定されてきた子どもの発達や生活背景を基に制度設計されています。「特別な配慮を必要とする子ども」への対応によって生じる追加的な保育の手間や専門性は、十分に考慮されていないのです。

【問題点2】保育者を増やせない「公的価格」という大問題

 外国籍であるなど、日本語でのコミュニケーションが難しい幼児。あるいは、発達がゆっくりな幼児。こういった特別な配慮を必要とする子どもに対しては、より手厚い保育が必要です。そしてそのためには保育者を増やす必要があります。

 しかし、そう簡単に保育者を増やすことはできません。原資がないからです。

 保育園(特に認可保育所や認定こども園、地域型保育事業)や私学助成を受けていない幼稚園の運営費の根幹を成すのが、公的価格と呼ばれる仕組みです。公的価格は、こども家庭庁が定める基準に基づき、子ども1人当たりの教育・保育に通常必要とされる費用を算出した単価のこと。

 保育園への補助金は、基本的にこの公定価格から、保護者が支払う保育料を差し引いた額が支給されます。この仕組みによって、施設の種類や地域による格差を抑え、一定水準の運営費を保障することを目指しています。

 結果、同じような条件の施設であれば、保育士の給与水準なども理論上は大きく変わらないこととなります。

 保育園、幼稚園に子どもを通わせる親の中には、「もっと保育者を増やしてほしい」と要望する方もいます。しかし園を運営するための原資が決まっている以上、そう簡単に人手を増やすことができないのです。 【次ページ】補助金はあるが…「グレーゾーン幼児の保育」では活用できない
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