- 2025/11/25 掲載
貰わないほうがマシ…激怒したサルに学ぶ、BCGが定義する「アンフェアな対価」の正体(2/2)
「フェアな価格」の定義とは? 心理学の視点で掘り下げる
この問いに答えることは重要であると同時に複雑なため、まずはいくつかの定義を掘り下げていきたい。心理学では3タイプの公正さがあるといわれる(注2)。ニーズに基づいて公正を実現する場合、個別ニーズに応じて異なる対応をとってもフェアとみなされる。たとえば、奨学金のように具体的なニーズに基づいていることが重要で、支給の結果得られた成績や進学率など、すなわち成果が同じでなくてもよい。
成果:
成果における公正では、誰もが確実に同じ成果を達成できるかどうかに重点を置く。たとえば、義務教育のカリキュラムなどは、全員が最低限の学力水準に達することを目的に組まれている。
プロセス:
プロセスの公正は、どのように最終状態に至るかに重点を置く。成果が同じにならなくても、そこに至るまでのプロセスがフェアだとみなされれば、フェアだとされる。この視点は成果の公正さを評価しにくいときに重要だ。価格の場合は、自由市場で設定されたことがフェアな方法とみなされることも多い。
公正価格を定義したり、フェアな価格設定だと認識したりすることが最終的に価値創造や価値分配につながることを考える上で、この心理学による3つの視点は一定の役割を果たす。
BCGが考える「フェアな価格」、実装は容易ではないが…
私たちは商品の価値について、買い手の立場では、代替価値と正味使用価値の合計として定義している。売り手の立場から見ると、顧客が支払った金額とその取引に関連するコストとの差額が手元に残る価値だ。私たちが調査したところ、コストの差異は他の状況に最も影響を受けないので、価格が異なる根拠として最も適切だと考える消費者は多い。したがって、図表1で示すように買い手と売り手が分配できる取引価値の総量は、顧客価値とコストの差分として定義するのが最良の方法であろう。その範囲内で価格をつけると、売り手と買い手が取引価値をどう分配するかという議論になる。買い手は、顧客価値と価格の差分である「余剰」を獲得し、売り手は価格とコストの差分である「利益」を獲得する。
この定義に基づいてフェアな価格を決める場合、本来的には、買い手と売り手がそれぞれの価値やコストをお互いに見積もった上で合意する必要がある。これは容易なことでも、常に可能なことでもない。しかし、現代社会においては、顧客データとコンピューティング・パワーが使いやすくなっているので、一部の市場ではデジタルを活用して、実質的に見積もりと合意を繰り返すソリューションを実装できる企業も出てくるだろう。
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