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- 2023/11/15 掲載
『僕のヒーローアカデミア』が日本の歴史を変える理由、NARUTO超えの“商売の秘密”
連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第17回)
ヒロアカの隙がない「メディアミックス戦略」
ヒロアカは、“個性(超常能力)”を持った異能力者が繰り広げるバトル漫画だ。ヒロアカは、世界の人口の8割が“個性”に目覚めなんらかの特異体質を持つ社会の中で、生まれながらに何の“個性”も持たなかった主人公の緑谷出久(デク)が、犯罪者集団「ヴィラン(敵)」から社会を守る職業「ヒーロー」になることを目指す物語だ。物語は、主人公デクのヒーロー的資質が買われ、デク自身が憧れていたNo.1ヒーロー「オールマイト」から“個性”を受け継ぐところから始まる。デクが継承した“個性(名称:「OFA:One for All」)”は、パンチ、キック、ジャンプなどの能力が各段に上昇するというものだ。そこから“個性”を継承したデクが、ヒーローを育成する学校「雄英高校」で仲間たちと強くなっていくという物語だ。
主人公が通う学校での異能力者同士のバトルという朗らかな雰囲気で始まったヒロアカだったが、次第に社会から暴力的にはじき出されたヴィラン(敵キャラ)の存在が登場頻度を上げるごとに深みをどんどん増している。
この物語の面白さはヒーロー側よりも、むしろヴィラン側によって際立つ。物語の初期は、衝動のままにそれぞれバラバラに暴れるだけだったヴィランたちが、信頼関係を築きあいながら社会に排絶された苦しさを共有し結束していく。これは筆者の主観もあるが、とにかく最近は「社会・家庭の被害者としてヴィランを選ばざるを得なかったキャラクターたち」が魅力的で、話を運ぶ中心人物はヒーロー側ではなく、ヴィラン側になりつつある。
このように、ヒロアカの作品自体の魅力に加えて、重要なポイントがある。それは、ヒロアカの見事なメディアミックス戦略だ。
漫画がスタートして2年強で早速のテレビアニメ化。2016年以降はほぼ毎年アニメが続いており、しかも2期以降は2クール分(半年分)ずつ進んでおり、さらに劇場版までもつないでいきながら2023年3月までの第6期アニメでは漫画の2年遅れでのコミックス33巻までキャッチアップしている。
10年間での漫画400話分、アニメ138話分、劇場版3回分というストーリーテリングは「スキのない完璧なメディアミックス展開」と言える。
国内人気に陰りも…ヒロアカの絶頂期はいつだった?
このように、隙のないメディアミックス戦略を可能にしているのは、アニメ制作会社ボンズの異常なる努力と言えるだろう。ただ、それでも漫画とアニメだけでは、消費者の“飽き”には勝てない。日本におけるヒロアカは、明確にピークが存在している。それは、2018年4~9月のTVアニメ3期・劇場版1期のタイミングだ(毎年行われるヒロアカのキャラクター人気投票も2018年の第4回が投票数8万票でピーク、その後5万票まで落ちて安定している)。
コミックスもこの時期の23巻以降は売上を落とし、80~100万部売れていたそれまでと比べ60~70万部へと減少していく。連載開始から6年目の2019年には、明らかに国内ヒロアカ人気の成熟期だった。 【次ページ】ヒロアカの大逆転劇、NARUTO超えの“ある数字”とは
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