• 会員限定
  • 2023/11/15 掲載

『僕のヒーローアカデミア』が日本の歴史を変える理由、NARUTO超えの“商売の秘密”

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第17回)

記事をお気に入りリストに登録することができます。
2014年、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載がスタートした『僕のヒーローアカデミア』(以下、ヒロアカ)は、連載開始から現在までに世界累計発行部数8500万部を記録するほどの人気作となった。しかし、実はここまでの人気作に至るうえで、他のロングセラー作品と同様、人気停滞期を経験している。ヒロアカは、いかにこの停滞期を乗り越え、現在のような商業的な成功を収めることができたのだろうか。

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

photo
大人気コンテンツ『僕のヒーローアカデミア』は、次の『ONE PIECE』になれるか?
(Photo:Stefano Chiacchiarini '74/Shutterstock.com)

ヒロアカの隙がない「メディアミックス戦略」

 ヒロアカは、“個性(超常能力)”を持った異能力者が繰り広げるバトル漫画だ。ヒロアカは、世界の人口の8割が“個性”に目覚めなんらかの特異体質を持つ社会の中で、生まれながらに何の“個性”も持たなかった主人公の緑谷出久(デク)が、犯罪者集団「ヴィラン(敵)」から社会を守る職業「ヒーロー」になることを目指す物語だ。

 物語は、主人公デクのヒーロー的資質が買われ、デク自身が憧れていたNo.1ヒーロー「オールマイト」から“個性”を受け継ぐところから始まる。デクが継承した“個性(名称:「OFA:One for All」)”は、パンチ、キック、ジャンプなどの能力が各段に上昇するというものだ。そこから“個性”を継承したデクが、ヒーローを育成する学校「雄英高校」で仲間たちと強くなっていくという物語だ。

photo
ONE PIECEやポケモン、初音ミクなど、あの有名キャラクターたちは、なぜ成功できたのか?中山淳雄がヒットのカラクリを解説
 なぜ、これほど人気を集めたのだろうか。人気少年漫画と比較しても、本作のように物語のはじまりと中盤でこれほど印象が変わる漫画は珍しいかもしれない。

 主人公が通う学校での異能力者同士のバトルという朗らかな雰囲気で始まったヒロアカだったが、次第に社会から暴力的にはじき出されたヴィラン(敵キャラ)の存在が登場頻度を上げるごとに深みをどんどん増している。

 この物語の面白さはヒーロー側よりも、むしろヴィラン側によって際立つ。物語の初期は、衝動のままにそれぞれバラバラに暴れるだけだったヴィランたちが、信頼関係を築きあいながら社会に排絶された苦しさを共有し結束していく。これは筆者の主観もあるが、とにかく最近は「社会・家庭の被害者としてヴィランを選ばざるを得なかったキャラクターたち」が魅力的で、話を運ぶ中心人物はヒーロー側ではなく、ヴィラン側になりつつある。

 このように、ヒロアカの作品自体の魅力に加えて、重要なポイントがある。それは、ヒロアカの見事なメディアミックス戦略だ。

 漫画がスタートして2年強で早速のテレビアニメ化。2016年以降はほぼ毎年アニメが続いており、しかも2期以降は2クール分(半年分)ずつ進んでおり、さらに劇場版までもつないでいきながら2023年3月までの第6期アニメでは漫画の2年遅れでのコミックス33巻までキャッチアップしている。

 10年間での漫画400話分、アニメ138話分、劇場版3回分というストーリーテリングは「スキのない完璧なメディアミックス展開」と言える。

国内人気に陰りも…ヒロアカの絶頂期はいつだった?

 このように、隙のないメディアミックス戦略を可能にしているのは、アニメ制作会社ボンズの異常なる努力と言えるだろう。ただ、それでも漫画とアニメだけでは、消費者の“飽き”には勝てない。

 日本におけるヒロアカは、明確にピークが存在している。それは、2018年4~9月のTVアニメ3期・劇場版1期のタイミングだ(毎年行われるヒロアカのキャラクター人気投票も2018年の第4回が投票数8万票でピーク、その後5万票まで落ちて安定している)。

画像
人気のピークはいつ? ヒロアカの人気の推移を解説する

 コミックスもこの時期の23巻以降は売上を落とし、80~100万部売れていたそれまでと比べ60~70万部へと減少していく。連載開始から6年目の2019年には、明らかに国内ヒロアカ人気の成熟期だった。 【次ページ】ヒロアカの大逆転劇、NARUTO超えの“ある数字”とは

関連タグ

あなたの投稿

関連コンテンツ

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます