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  • 2022/12/26 掲載

『平成仮面ライダー』シリーズで一番稼いだのは? 売上急増させた2つの「変身」

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第7回)

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1970年に放送がスタートした『仮面ライダー』シリーズは、誕生から50年経つ現在も人々から支持され続ける大人気コンテンツだ。1990年代には「スーパー戦隊シリーズ」の人気上昇の陰に隠れ、人気が大きく落ち込む時期もあったが、2000年代に再ブレイクを果たす。その復活劇の裏には、2度の大きな“変身(コンテンツのテコ入れ)”があったのだ。今回は、「仮面ライダークウガ」(2000年)から「仮面ライダー リバイス」(2021年)までの20年間、各シリーズがどれほど稼いだのかを紹介しつつ、仮面ライダーシリーズの凄さを解説したい。
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『仮面ライダー』というコンテンツは、どれほどのお金を生み出しているのか? なぜ、これほど人々を惹きつけるのか? その秘密に迫る
(写真:筆者撮影)

人気が落ちない『仮面ライダー』の特殊性

 1971年に生まれた仮面ライダーは、主人公の本郷猛(主演:藤岡弘)が、世界征服をたくらむ悪の秘密結社ショッカーに捕らえられ改造手術を受けてしまうところから始まる。しかし、大脳を改造されてしまう前に奇跡的に救われたことで、正義の心を残しながら、改造によって手に入れた怪人と同種の力で悪と戦うことになる、といったストーリーである。

 仮面ライダーの「サイボーグとしての自身に苦悩する」というテーマは、都市化・工業社会化が進む中、公害や自然破壊、人間の部品化といった「科学の力」がもたらすダークサイドに人々が気づきはじめた社会背景が関係している。また、悪をもって悪を制する矛盾と葛藤の中に生きる「ダークヒーローの原型」とも言える。

 もともとこのテーマは、米ソ冷戦やベトナム戦争に影響を受けた漫画家・石ノ森章太郎氏が『サイボーグ009』(1964)から登用してきたテーマであり、それは石ノ森氏のアシスタントだった永井豪氏の作品『デビルマン』(1972)にも引き継がれ、『寄生獣』(1988)、『ベルセルク』(1989)、『ARMS』(1997)、『進撃の巨人』(2009)へと発展していく。

 東映は、この石ノ森氏の才能にテレビ映像の原作をも託し、現在に至るまで50年以上にわたって原作者としてクレジットされ続けている。

 そんな仮面ライダーは、現在も人気は衰えることのないコンテンツとなっている。たとえば、あるキーワードがGoogle上でどれだけ検索されているのかを確認できる「Googleトレンド」の推移を見ると、仮面ライダーは、検索ボリュームにおいて「プリキュア」「ウルトラマン」「スーパー戦隊」などのシリーズ抜かれたことがない。

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図表1:仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマン、プリキュアの注目度の変遷
(出典:Googleトレンドより筆者作成)

 なお、仮面ライダーの競合コンテンツとなる「スーパー戦隊シリーズ」は、主人公が1体しかいない仮面ライダーの構成を上位互換で改良して作られたIPだ。1990年代には仮面ライダーの倍以上の売上を誇り、北米でも空前のヒットを記録した作品である。

 この時期、スーパー戦隊シリーズの影に隠れ、仮面ライダーの人気は大きく低迷することになる。しかし、2000年代に奇跡の復活を遂げ、その後20年以上にわたり、バンダイの超主力コンテンツである「機動戦士ガンダム」と肩を並べるほどの玩具売上を築き続けるようになるのだ。

 一度は「スーパー戦隊シリーズ」に抜かれ低迷した仮面ライダーは、どのように復活を遂げ、バンダイの超主力コンテンツの地位まで上り詰めたのか。


作品が評価される理由、“感動”を生み出す装置とは?

 仮面ライダーの成功は、ヒーローとしての描き方と同時に、「特撮」という撮影技術によるところが大きい。SFX(特殊効果)やVFX(撮影後の視覚効果、1990年代以降に一般化)、CG(コンピューターグラフィック)と混同もされることもあるが、「特撮」自体は東宝の監督として『ゴジラ』(1954)や『ウルトラマン』(1966)を生み出した円谷英二氏による造語である。

 事後的に入れる画像処理とは違って、ミニチュア建物にスモークを焚いては巨大うちわで風を起こし、着ぐるみを来た人間が怪獣を動かしながら、実際の曳光弾や硝煙の中で「撮影」する本格セットであり、「SF(サイエンスフィクション)」ではなく、実際の物理法則や科学的根拠を入れながら生み出す「SF(サイエンスファクト)」とも言われる。

 我々が『シン・ゴジラ』で庵野秀明氏が演出したリアリティあふれる“怪獣を倒す”という一連のプロセスの緻密さに驚愕したように、特撮の“真剣み”は感動を生み出す1つの装置であった。

 CGは想定の範囲内でしか結果が得られないが、特撮は想定を超える効果を生み出すことがある。戦時中に戦争を題材にする難易度の高い映画を制作したことが円谷英二氏にとっては壮大な実験場となり、そこで培われた技術が「特撮」となって日本映画のお家芸となった。

 仮面ライダーの登場以前の1960年代まではロボット全盛期であった。『鉄腕アトム』『鉄人28号』からはじまり、その後多くのロボットが科学振興と相まって生み出された。当時は、金色の『マグマ大使』(1965)、銀色の『ウルトラマン』(1966)が、異世界からやってきて窮乏を「救ってくれる」存在であった。

 だが1964年東京オリンピックを経て自信を得た日本全体が、「スポ魂ブーム」によって転換を迎える。架空の技や異次元のヒーローよりも、等身大の主人公がライダーキックのように自分でもやれそうな技で怪人を倒していく「肉体主義」がホットになり、特撮は、仮面ライダーと戦隊シリーズを通じて、より人間単位の映像美へフォーカスしていく。

 そうした中、ライダーがもたらした発明こそが「変身」である。これが後の「変身ベルト」や「なりきる」という子供たちの遊びそのものの活性化につながっていく。

【次ページ】おもちゃの「変身ベルト」発明がもたらした“凄すぎる利益”
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「平成仮面ライダー」一番稼いだシリーズは? 各シリーズの売上解説

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