• 2026/03/15 掲載

「違和感スルーする人」はセンス磨けない…看板1つ、言葉1つの引っかかりが生む気づき

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朝の通勤路、あなたは何を見ているだろうか。スマホの画面か、それとも目の前の景色か。実は、その何気ない風景の中に「センスを磨く最強の教材」が隠れている。看板のデザイン、人々の歩くテンポ、街角のレストランの雰囲気──これらを「ただ見る」のか「観る」のかで、センスの育ち方は天と地ほど変わるのだ。「マルちゃん正麺」パッケージデザインで金賞受賞など数々のヒット作を手がけてきたクリエイティブディレクターでアートディレクターの秋山具義氏が、学生時代に都バスで実践していた“ある観察法”とは。あなたの日常は、明日から変わるかもしれない。
執筆:クリエイティブディレクター/アートディレクター 秋山 具義

クリエイティブディレクター/アートディレクター 秋山 具義

デイリーフレッシュ代表取締役、クリエイティブディレクター/アートディレクター。日本大学藝術学部デザイン学科客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学藝術学部卒業。同年、I&S(現I&S BBDO)入社。1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、日本フェンシング協会「新国章」デザイン、松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、立命館大学コミュニケーションマークデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。「日本パッケージデザイン大賞2017」にて「マルちゃん正麺カップ」が金賞受賞。著書に『世界はデザインでできている』『ファストアイデア25』がある。2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。

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バスに乗って実践できる“センスの磨き方”とは?
(Photo/Shutterstock.com)
※本記事は『こうやって、センスは生まれる』を再構成したものです。

自分の“常識のメガネ”は往々にして曇っている…

 「センスがある人」というと、どこか特別な才能を持って生まれた人を想像するかもしれません。

 けれど、センスとは生まれつきの資質ではなく、日々の“感度の使い方”で磨かれるスキルです。

 美的感覚や直感の鋭さは、練習によって育つ「知覚の技術」と言い換えることもできます。

 センスがいい人は、無意識のうちに頭の中で次のような工程を踏んでいます。

「知覚」──世界の「普通」と「半歩先」を知る
「組み替え」──世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
「表現」──「表現+調整」でセンスの精度を上げる

 つまり、センスとは「感覚的ひらめき」ではなく、「知覚→組み替え→表現」という一連のプロセスです。

 そして、この最初のフェーズである「知覚」こそ、センスの出発点であり、“感性の筋肉”を鍛える場なのです。

 「知覚」は、世界の情報をただ見ることではありません。

 自分の“当たり前”と世界の“当たり前”を見比べ、そのズレを感じ取ること。

 言い換えれば、知覚とは「センスの種」を拾い集める作業なのです。

■ 世界をありのままに見ることの難しさ
 人は誰しも、自分の“常識のメガネ”を通して世界を見ています。

 しかし、そのメガネは往々にして曇っています。

 私たちは「自分が見たい世界」や「都合のいい解釈」に無意識のうちにフィルターをかけてしまうからです。

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【画像付き記事全文はこちら】
“常識のメガネ”には無意識のうちにフィルターをかけてしまう
(Photo/Shutterstock.com)

 たとえば、同じ風景を見ていても、デザイナーは「構図」を見ており、建築家は「空間のバランス」を、マーケターは「人の動線」を見ています。

 1つの対象に対して、見えるものも感じるものも違う。

 つまり、“世界は1つ”ではなく、“見方の数だけ世界がある”のです。

 センスを磨くということは、この「自分のメガネの存在」を自覚することから始まります。

 そして、そのメガネを一度外して、“他人のメガネ”で世界を覗いてみること。

 その瞬間に、「共通点」と「相違点」が浮かび上がります。

独自のアイデアを生み出すカギは「共通点」と「相違点」

■「共通点」を見抜く力──世界をつなぐ視点
 センスのある人は、まず“共通点”を見抜きます。

 異なるものの中に「似ている構造」を見つけるのが上手なのです。

 たとえば、自然の樹形と都市の道路網。

 どちらも「枝分かれして流れる」という構造を持っています。

 音楽のリズムと人の会話のテンポもそうです。

 人が心地よく感じるリズムは、どの分野でも驚くほど共通している。

 この「共通点を見抜く力」は、物事を“分けずに見る”感性です。

 ファッションの色づかいと料理の盛り付け。

 建築の曲線とグラフィックの余白。

 一見関係のない分野を貫く“法則”を見抜くことで、新しい発想が生まれるのです。

 センスの根底には、「世界はつながっている」という洞察があります。

 そのつながりを感じ取る人ほど、独自のアイデアを紡ぎ出すことができるのです。

■「相違点」を感じ取る力──半歩先を見つける感度
 一方で、センスのある人は「違い」も恐れません。

 むしろ、違いの中に“面白さ”を見出します。

 ここでいう違いとは、「ほかと違うこと」ではなく、「自分の中の違和感」を指します。

 たとえば、街を歩いていて、ある看板だけが妙に気になる。

 人の話の中で、ある言葉だけが引っかかる。

 その“引っかかり”をスルーせずに拾い上げる。

 これが、「相違点を感じ取る力」です。

 センスとは、実は“違和感を感じ取る勇気”でもあります。

 多くの人は、安心するために「平均」に合わせようとします。

 しかし、“半歩先”を見つける人は、平均から半歩だけ外れたところに美を見つけるのです。

 それは、「普通」と「異端」の間。

 つまり、まだ誰も名前をつけていない“新しい普通”を見抜く力です。

自分の感覚の“偏り”に気づくことがセンスの第一歩

 知覚の本質は、この“共通点”と“相違点”の往復運動です。

 共通点を見つけることで、世界の構造を理解する。

 相違点を見つけることで、新しい発想の種を見つける。

 この2つを繰り返すことで、世界の見え方が立体的になります。

 たとえば、海外旅行に行ったとき。

 街並みや食文化、広告デザイン、接客の仕方──。

 あらゆるものが自分の「当たり前」と違う。

 その中で、「日本と同じ部分」と「まったく違う部分」を観察してみると、自分の感覚の“偏り”が見えてきます。

 この「偏りに気づくこと」こそ、センスの第一歩です。

 自分が何を「普通」と感じ、どこに「違和感」を覚えるのか。

 それを理解している人は、自分の感性を意識的に使えるようになる。

 では具体的に、どのように「知覚」を鍛えればよいのでしょうか。 【次ページ】「知覚」を鍛えるチャンスは日常に中にいくらでもある
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