- 2026/11/07 07:10 掲載
「なぜか疲れる仕事」がヒント…“自分を生かせる仕事”を探る3つのチェック(2/2)
同じ「誠実な人」でも得意な仕事は違う…鍵は「組み合わせ」
前回は5つのプロトタイプを紹介してきましたが、実際の人間は、1つのタイプだけでできているわけではありません。多くの人は、強く出る主タイプと、それを支える副タイプの組み合わせで動いています。この「組み合わせ」という考え方が、才能を仕事につなげるときにとてもよく効いてきます。ヒューストン大学のペニーらは、性格と仕事ぶりに関する研究を1つひとつ整理し直し、大事なことを指摘しました。これまでは、外向性なら外向性、誠実性なら誠実性というように、1つの特性だけで仕事の出来を予測しようとしてきました。でも、それでは限界があるというのです。ペニーらは、これからの研究の進め方として、まわりの状況(タスク・人とのかかわり・組織のあり方)を一緒に考えること、いくつもの特性が重なり合って働く場面を見ること、そしてビッグファイブをもう一段細かく分けた小さな単位(facet)まで降りて調べることを提案しました。1つの物差しで人を測ることの限界を研究者自身が見つめ直した、1つの節目だと言えます。
たとえば誠実性が高い人と、誠実性も外向性も高い人とでは、向いている仕事がまったく違います。前者は職人のように1人でコツコツ進める作業で輝き、後者はチームを引っ張る役で力を出します。誠実性が高い人でも、協調性が低いと、人と協力して進める仕事では力を発揮しにくくなることが分かっています。特性は単体ではなく、組み合わせで効くのです。このように、特性の組み合わせは、1つの特性だけよりもずっと多くのことを教えてくれます。同じ「誠実な人」でも、副タイプによって輝く場所は驚くほど変わるのです。
「主タイプ×副タイプ」で考える、自分の強みが生きる仕事
前回のプロトタイプに置きかえると、こうなります。主タイプは、あなたの普段の重心です。何もしなくても自然とエネルギーが流れていく方向のことです。副タイプは、ある場面になるとスイッチが入ります。普段は眠っていますが、必要になると起きてきて働いてくれるのです。たとえば、主タイプが分析探究型で、副タイプが表現発信型の人は、こまかな分析を読んでいて楽しい文章に翻訳できる、めずらしい人材になります。専門誌のコラムニストやサイエンスライターは、この組み合わせの代表例です。
主タイプが共感関係型で、副タイプが戦略統率型の人は、人の気持ちに寄り添いながら大きな組織を動かす、いわば「温度のあるリーダー」になります。看護管理職や教育長、NPOの代表に多い組み合わせです。
主タイプが構築実行型で、副タイプが分析探究型の人は、淡々と続けた先で、大量のデータを読み解く分析者として独立できます。データサイエンティストや会計士、品質保証エンジニアの世界で頭角を現すパターンです。
主タイプが戦略統率型で、副タイプが構築実行型の人は、構想を絵に描くだけでなく、それを自分の手で形にするところまでやりきる起業家タイプになります。
主タイプが表現発信型で、副タイプが共感関係型の人は、人の心を動かす言葉を持つコピーライターやインタビュアーとして力を発揮します。
逆に言えば、副タイプを意識せずに主タイプだけで勝負すると、自分と似た顔ぶれの人たちと、数の少ないポストを取り合うことになります。副タイプを知るというのは、混み合ったレースから一歩横にズレて、自分しか走れない種目を見つけることです。同じ100メートル走に1万人が並ぶより、5キロ走の後に筆記試験があるという不思議な競技で、3人だけと競ったほうが、勝てる見込みはずっと高くなります。
ペニーらが何度も強調したのは、性格特性と成果の関係は「状況の境界条件(boundaries, contingencies)」によって変わるという点です。つまり、性格が成果につながるかどうかは、その人がどんな場所に置かれるかで変わるということです。性格特性は、それを活かせる場所に置かれて、はじめて成果につながります。共感関係型の高い才能を相手の感情を踏みにじることが求められる現場に置けば、本人もすり減り、成果も出ません。同じ人でも、別の現場に行けば別人のように輝く。そういうことが、性格の研究では何度も確かめられてきました。
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