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  • 2012/03/01 掲載

【CIO対談:ドクターシーラボ 神戸聡氏】情報システム部門の自己改革~「企業理念から情報システムを考える」

ドクターシーラボ[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第13回は、マーケッターとして、企業の理念とマーケティングの考え方を用いて、情報システムの改革を進めてきたドクターシーラボ 取締役 販売事業部 事業部長 兼 情報システム担当の神戸聡氏に話を伺った。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

企業理念から情報システムを考える

 ドクターシーラボは、皮膚科医の会長が「メディカルコスメ(医療機関によって開発された化粧品)」という市場を日本に作り上げ、急成長している企業だ。

 神戸氏はもともと同社のプロモーションに携わる広告会社につとめていたが、「肌トラブルに悩むすべての人々を救う」という企業理念に共感し、創業間もない時期に参加した。セールスマーケティング部門と情報システム部門の二足のわらじを履く異色のキャリアを持つ神戸氏だが、最初にITに携わったのはマーケティングデータの基盤構築だった。しかし、それからもマーケティング部門を中心にキャリアパスを展開し、その後行われた基幹システムの再構築でさらに深くITと関わることになった。

 同プロジェクトでは当初、マーケティング部門の1ユーザーとして参画していた。しかし、システムの検討の際に大きな違和感があったという。それは、「システムに企業理念がまったく考慮されていなかった」ことだ。当時のITベンダーの担当者にドクターシーラボの企業理念を聞いても答えられなかったことには激怒したそうだ。その後、神戸氏はこのプロジェクトのマネージャーとなった。

 そこでは、企業理念を常に念頭に置いたシステム化の検討を進めた。たとえば、顧客データベースには、単に顧客住所や販売履歴といった一般的な顧客の属性情報だけではなく、どのような肌トラブルを抱えているかといったデータを取り込む仕組みを用意した。また、顧客の注文状況はリアルタイムで見られるようにして、肌トラブルに悩む顧客に迅速な対応ができるようにした。

 システム化のベースに企業理念を置くことで、システムの要件定義や実装について判断が迷う場合も、いったん立ち戻って冷静な意思決定が行えた。

 このような、企業理念をベースとしたシステム化の推進は今も変わっていない。たとえばソーシャルメディアなどを用いた顧客接点構築では、自社商品の話題のみならず、肌トラブルに関わるすべてに関してフォローし、また、自社商品未購入の人々との接点も構築している。これは企業理念の「すべての人」という言葉に対応している。

 神戸氏がもう1つ重要視しているのが「まずは人が動いてやってみて、ノウハウをためてIT化する」ということだ。これは、マーケッター時代に、データ分析のシステム化をトップに提案した時に、トップから言われた言葉でもある。たとえば同社のソーシャルメディア活用は、現在「人が動いてやってみる」段階にある。そこで、社員全員にアカウントを取らせ、トライアルを重ね、ノウハウを創造・蓄積している。

マーケティング手法で、情報システム部門の改革を進める

 ドクターシーラボでは、2005年に、売上、利益を下方修正するという事態が発生した。その時、神戸氏は、過剰投資となっていたシステム部門の改革のために、情報システムも担当することになった。神戸氏は、ここで、マーケティングの手法で、情報システム部門の改革を断行した。

 マーケティングでは、実施する施策によって、顧客ごとのライフサイクルの中で、どれだけ売上を上げられるかという視点が求められる。そこから顧客ごとにどれだけのリソース(手間やコスト)をかけることができるのか明らかになる。これを、IT投資にも適用した。

 IT投資で、どのような施策を実現し、どれだけ売上を増やせるか。目標利益率から考えると、どれだけの投資が許されるか。こうした点をすべての投資で厳しく問うようにした。これによって、IT投資の適正化、投資対効果の増加につとめた。

 もう一つの改革は、システム部員に顧客のことを真剣に考えさせることだ。このために、システム部員に語りかけ、指導し、やがてこの改革を継続できる情報システム部門長を獲得し、3年かけて風土を変えていった。今ではシステム部員たちは、顧客のためにはこのような機能がいると、ユーザーに逆提案できるようになった。

 では、次ページより、神戸氏とのインタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】企業理念を知らないベンダーはありえない

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