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  • 2012/06/11 掲載

【CIO対談:帝人 石川研一氏】情報システム部門の自己改革~「レビューは報告と指示の場ではなく、気づきの場」

帝人[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第16回は、帝人のIT企画室 室長、石川研一氏に話をうかがった。
これまでの連載

 石川氏は、IT企画室の人員、機能を充実させながら、グローバル化、経営の構造改革に対応する、システムの基盤作りに取り組んでいる。

グローバル化、経営の構造改革を支援する

 帝人では、かつて本社スリム化の方針の中で、IT企画組織は3人で業務を推進していた。そこでは、ITインフラの企画、IT投資のマネジメントなどを行っていた。その後、グローバルな事業規模の拡大の中で、グループグローバルのガバナンス強化、情報システム基盤強化のために、この数年間で、IT企画室の人員・機能を充実してきた。

 グローバル化では、国内40社の事業会社の会計システムをSAPに置き換えるプロジェクトを進めてきた。現在、国内のSAP置き換えは終了し、今後海外へのSAP導入を開始する。このプロジェクトは、経営者へのグループグローバルの経営情報提供の、スピード、精度を高めるものである。国内のSAP置き換えは、企画を含めて1年半で推進した。このような短期間で推進できたのは、過去に経理システムをグループ企業で統一していたこと。そして、経理部門にしっかりとした推進体制を築けたことが背景にある。現在経理部門内には、海外SAP展開と、その後の現地サポートのための専任組織を構築し、2013年をターゲットにSAP展開を進めている。

 帝人では、現在、新たな中期計画に従い、経営の構造を大きく変えようとしている。これまでホールディング制の中で、事業会社に分散していた素材別事業を、本社に統合するのである。これは、顧客、技術、地域などの軸で、戦略的にポートフォリオを組み替え、重点領域で、オール帝人の素材・技術を集めた総合力を発揮するためだ。この中期計画を支援するために、ITとして、まず事業会社別に分散しているシステムを、本社に統合していく。そして、販売など重要な組織機能に関しては、業務とアプリケーションの統合を進め、ポートフォリオの組み換えに迅速に対応できる基盤を作ることが必要になってくる。そこで今後は、IT企画室として、共通のアプリケーションも守備範囲に加え、基盤確立に対応していく。

IT企画組織を充実させる

 このような支援を行うために、IT企画室では、機能、人材の強化を進めている。

 一つは、レビューを「気づきの場」とする人材育成だ。プロジェクトは、担当者が中身を一番良く知っている。そこでレビューは、報告や指示ではなく、担当者が気付いていないことを気づかせる場となるように運営している。具体的には、室長である石川氏が、重要なプロジェクトレビュー会や週次報告会で、気づきを与える質問をする。たとえば意思決定前のレビューであれば、「意思決定者が持っている疑問は何か」、「その疑問にどのように応えようとしているか」といったことを質問していく。石川氏が目指しているのは、このような気づきの場を作ることを、組織のクセにすることだ。これは、一朝一夕では成しえない。そこで石川氏は、組織のクセがつくまで、このような質問を継続していくつもりだ。

 人材育成では、IT企画室と、各事業会社のIT組織間でのローテーションも開始した。IT企画室の人材を事業会社のIT部門に送り、事業部の業務を広く見渡して、妥当な提案が出来る人材に育てるとともに、すでにそのような能力をもった事業会社IT部門の人材を、IT企画室で、グローバルなガバナンスや基盤整備に活用している。 また、今後のグローバルな拠点展開、企業買収などに対応するために、新事業、新拠点立ち上げ支援の実績作りを進めている。今のところ、IT企画室の拠点や事業立ち上げ実績は、特に海外では多くない。そこで、そのような実績・ノウハウを獲得すると共に、事業会社側から早めに声がかかるように、実績を積み上げている。

 IT企画室では、昨今のスマートフォンやタブレットを用い、ユビキタスを実現し、ワークスタイルを変革するなどのビジョンを掲げ、実現に向けた活動を開始している。しかしこの場合、単に新しい技術を追うのみならず、妥当なコストでこれを実現することに関しても、今後追求していく必要がある。それは、グローバル化の中で、今までのような先進国水準の価格でのシステム構築が許されなくなるからだ。これを実現するため、すでにIT関連の調達方法の改革には着手している。具体的には、ライセンスなどの集中購買の推進。そして、本社購買部門を経由したPCや携帯などのモノの調達だ。購買部門経由でモノを購入することで、購買部門のプロのノウハウが使える。実際、引き合い先の設定と評価一つとっても、広い候補から妥当な購買先を選ぶなど、専門家のノウハウを活かし、コスト削減に成功している。購買部門を経由する方法で重要なことは、早い段階から情報を購買部門に与え、彼らのノウハウを十分に活用する条件を整えることである。

 では、次ページより、石川氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】国内40社の会計システムを約1年半でSAPに置き換え
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