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  • 2012/05/17 掲載

【CIO・システム部長対談:エーザイ システム企画部 部長 近江 有氏】情報システム部門の自己改革~「ビジネスバリューを高めるIT組織に」

エーザイ[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第15回は、エーザイのシステム企画部 部長、近江 有氏に話をうかがった。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

大手コンサルティング会社を経て、現職。
製造業、情報サービス業などの、事業戦略、IT戦略、新規事業開発、業務革新、人材育成に関わるコンサルティングを行っている。
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団 理事。
関連著書『正しい質問』アマゾン、『イノベーションのリアル』ビジネス+IT、『ダイレクト・コミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる 研究開発革新』日刊工業新聞、等

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載

 近江氏は、エーザイのグローバルITマネジメントの基礎を築いた後、ビジネス側のグローバル化の推進の中で、ITとしてのビジネス支援、そのための更なるグローバル体制強化に取り組んでいる。

連邦型組織マネジメントで、ビジネスのグローバル化を支援

 エーザイは、グローバルなITマネジメントの先進企業である。96年にはグローバルITマネジメントの体制を築き、現在は、日米欧アジアでリージョンごとにIT組織を持ち、本社がコントロールして互いに協力し合う、連邦型組織が完成されている。すでにITインフラはグローバルに統合され、グローバルなITガバナンスのルールを確立している。グローバルITステアリングコミティー、エリアITエグゼクティブミーティング、ITインフラ担当者の会議などのグローバルなコミュニケーションが活発に行われ、すべてが日本発ではなく、各リージョンの中で適材適所でITの確立、運用が推進されている。たとえばコンピューターバリデーションという医薬品メーカーに必要な規制への対応は、米国主導で実施されている。日本の情報システム人材は、ビジネスコンサルタントとして、ユーザーとビジネスが語れる、ビジネスに貢献する改革方法を見つけられるように育成されている。

 2008年には、ビジネス側のさらなるグローバル化に対応し、CIOのリーダーシップの下、連結製造原価管理、グローバルSCM、グローバル人材マネジメントの確立を実施してきた。この時期、ビジネス側で推進していた、グローバルな製品開発とデマンドチェーンの充実、世界の需要変化への迅速な対応などを実現するためには、業務やアプリケーションの標準化、迅速な経営判断ができる情報の提供が必要であった。そこで、要員配置や人件費、製造原価のグローバルな把握、SAPのグローバルな標準化を開始した。

 このプロジェクトは現在フェーズ3に入り、すでに既存のSAP間での情報の集約と経営への提供、SAPのグローバルテンプレートの確立と適用開始、グローバルな製造原価、人材配置、人件費の把握ができるようになっている。

 このプロジェクトでは、ビジネス側のグローバルガバナンスの強化が欠かせなかった。ITインフラと異なり、業務やアプリケーションのグローバルな標準化には、ビジネスオーナーのリードが欠かせない。たとえばグローバルに共通の尺度で製造原価を把握する場合、すべての製造拠点の協力を得ることが前提となる。そこで情報システム部門は、まずビジネス側のグローバルガバナンス強化に対する理解を深め、その推進の火付け役となることが求められた。

グローバルITマネジメントをさらに進化させる

 このような中で、エーザイは、社員の能力をさらに高めようとしている。EVBIS(エーザイ・ビジネス・バリュー・インフォメーション・システム)と名付けられたこの方法は、IT活用によってビジネスに対してバリューを増やすことができる方法をテンプレート化し、定量化できるものはKPIを明確化し、これを基に、情報システム部門とビジネス部門で、ITを活用してどのような効果が出せるかを議論できるようにしたものだ。たとえば研究開発では製品上市までの時間短縮、事業(販売)ではシェア拡大といったKPIがテンプレート化されている。また、情報システム部門の人材に対して、このテンプレートを活用してビジネス側と共に効果を生み出せる技量を4段階で定義し、システム部門人材の一人ひとりが、自分自身の現在の技量レベルを認識し、今後の能力充実方法を明確化できるようにしている。

 グローバルなソーシングの見直しも進めている。社員の担当する範囲は、各リージョンで考え方が違う。そこで、社員はどのような役割を行っているか棚卸しし、今後社内で抱えるべき役割、外に出す役割を明確化し、可能なものは標準化してグローバルに集中させていく。外に出す場合も、グローバルに集中購買を行い、適正コストを確保する。

 これら一連の改革で、グローバルITマネジメントの強化すべきポイントも見えてきた。それは、気を抜くとガバナンスは弱まってしまうということへの対応だ。特に欧米は、日本に比べて人の移り変わりが激しい。過去に一緒にグローバルガバナンスを確立してきた人材がいなくなると「そんな話は聞いていない」といった反応が返ってくる。そこで、ガバナンスを標準化として確立することの重要性を認識した。また、常に状況を振り返り、継続的なガバナンス維持を行う専任の組織も必要になるはずだ。

 エーザイでは、ビジネス側が、新興国でのシェア拡大など、さらなるグローバル化を進める中期計画を開始した。この中で情報システム部も、今後、さらに強固なグローバル体制を築いていくに違いない。

 では、次ページより、エーザイ システム企画部 部長 近江氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】4つの柱ですすめられているグローバル経営を見える化するプロジェクト

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