技術部門は、30年前から、常にその時々の目指すインフラや開発方法、言語を決めている。移行期間はあるが、バラバラ、好き勝手になったことは、一度もない。このような方針の徹底が、コストや生産性に直結する。今は、たとえばインフラは、オープンソースを用いた方針を打ち出している。アプリケーションは自社開発で、事業ごとに業務ノウハウを蓄積した、コストパフォーマンスの高いシステムを実現している。グローバル化では、まずアジアに、日本の自社開発システムをパッケージ化して展開を始めている。
住友電気工業の情報システム部では、最近、事業部の事業課題から明らかにし、そこからシステム化を実現するプロジェクトを経験した。このプロジェクトでは、事業収益を向上させるため、業務を見直し、KPIを顧客満足度に直結するように改め、グローバルな在庫を日本でコントロールする仕組みなどを構築し、実際に収益向上を果たした。事業責任者からは、「ITが事業業績向上に貢献した」との言葉をもらった。そこで奈良橋氏は、情報システム部門の次の改革として、真に価値ある情報システムの実現を掲げた。「真に価値ある」とは、事業側から事業に貢献したといわれることだ。そのために、事業ごとの中期計画からスタートし、課題を明確化し、これを解決するシステムを提案しようとしている。
ただし、この場合でも、まず技術のプロになることが前提だ。ITのプロとして認められなければ、事業貢献のための提案も受け入れられない。評論家のように、聞きかじったことを言うだけではダメだ。今後中期に、技術をしっかりと身につけ、その上で事業部門の課題を認識し、提案・実現できる人材を育成していく。
では、次ページより、奈良橋氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。
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