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  • 2011/08/25 掲載

【対談インタビュー】CIOに聞く情報システム部門の自己改革<第10回>シスコシステムズ 廣﨑淳一氏

シスコシステムズ[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第10回は、シスコシステムズ 執行役員 情報システム担当の廣﨑淳一氏に話をうかがった。
これまでの連載

 シスコシステムズでは、2002年より、ローカルに展開してきたITを、グローバルに統合最適化する活動を進めてきた。その結果、大幅なコスト削減、経営への迅速で正確な情報提供、グローバルな品質の均一化などを達成した。

トップダウンにITのグローバル最適化を進める

 シスコシステムズでは、2000年、当時1インスタンスになっていた会計ERPからの週次決算予測を見たCEOが、ITバブルの終焉をいち早く予測し、早期リストラを実施した(この対応で、その後いち早くITバブル崩壊を乗り切った)。この時COOは、それまでの事業成長期に、ローカルに展開し、部分最適となったITを、グローバルに統合最適化し、コストを下げると共に、経営情報をさらに早く正確に提供する必要性を感じた。そこで、外部からCIOを招き、COOのトップダウンな方針の下、情報システムのグローバル最適化をスタートさせた。

 グローバル最適の実現に向けて、まずファンクションとローカルのマトリクス組織を作り上げた。ローカル(日本など)が要求を出し、完成したシステムを活用して成果を出す。ファンクション(製品開発や販売などのプロセスをグローバルに見る組織)は、地域の要求を基に、全体最適化とシステムデリバリーを行う。ファンクション組織は、主要プロセスごとに設置され、この下に、ビジネスプロセス・アーキテクトや、アプリ開発担当などが置かれている。主要プロセスの責任者は、そのプロセスのセンター・オブ・エクセレンスのある場所におり、たとえば顧客リレーションとサービスの場合、責任者はインドにいる。

 ローカルは、必要最小限の人員で運用され、日本の場合、情報システム責任者の下には、3~4人しかいない。もっとも、各メンバーが働いている場所は世界中で、たとえば日本の場合、常時プロジェクト遂行のために、20~30人(外部ベンダー含む)が働いている。日本の情報システム責任者は、プロジェクトをまとめると共に、日本にいるメンバーのヒューマンリソースマネジメントを行う。(つまり、メンバーに対してプロジェクトの指示を出したり、教育指導を行ったりするが、大半のメンバーの上長は異なる国にいる)

 また、全世界のシステム部門メンバーが、常に全体最適の行動がとれるように、オペレーションモデル(システム業務の遂行標準)が作られている。オペレーションモデルと、業務プロセス、インフラ、アプリの世界共通化によって、システム部門のメンバーは、先のマトリクス組織の中で、世界中どこに行っても、すぐに仕事に取り掛かることができる。

 現在、後述する業務プロセスとアプリケーションの統合によって、システム部門のみならず、すべての組織で、同様に世界のどこでもすぐに仕事が開始できるようになっている。

現場の声を聞き、ビジネスの視点をもつ

 シスコシステムズのグローバル全体最適は、現場の声に耳を傾けながら進めてきた。たとえば業務とアプリケーションの統合では、キャラバンを組んで世界中の業務プロセスの実態を把握した後、各プロセスで高いパフォーマンスを上げている人材を世界中から呼び寄せ、目指すべきプロセスを作らせた。これにより、現場実態に合わせた最適化が達成できる。また各国の現場でも、新しい標準プロセスを活用する納得性が醸成できる。

 これらの努力によって、現在、SCM、販売など、すべての業務プロセスとアプリケーションが、グローバル統合され、ERPも1インスタンス。日次決算ができるようになっている。プロセスごとに数多く存在していたデータベースも数個に統合し、ITコストを大きく削減した。また、当初COOが狙った、迅速で正確な経営情報の提供(日時決算)を可能とした。さらに、業務プロセスとアプリの統合で、製品品質、業務品質の均質化を実現した。 もう一つ大きな成果は、世界に活躍の場を求めて、自分を磨きたい人材に、それができる環境を与えたことだ。どこの国にいる社員でも、能力とやる気があれば、世界のどのような仕事でも行うことができる。これによって、そのようなモチベーションの高い人材が集まり、人材のレベルがさらに高まる。

 現在システム部門は、先に示したオペレーションモデルを用いて、ワークスタイルのさらなる高度化などに取り組んでいる。たとえばSNSなどのWeb2.0では、働き方とツールの関係、使うシナリオを網羅したガイドラインを用意。ビジネスへの積極活用を進めている。具体的には、旧来は、全世界の営業社員2万5000人を集め、巨大なコンベンションセンターで実施していた営業キックオフ会議を、3年前からバーチャル会議に切り替えている。そこでは、8000人が同時にリンクできる双方向の会議や、アバターを用いた相互コミュニケーションが実現されている。端末は、最新のデバイスをネットワークに接続し、仕事ができる環境を作り上げている。

 そのような中でも、システム部門は、現場の声を聞くことを続けている。たとえば、ユーザー向けコールセンターの結果は、定期的に分析し、顧客満足度レシオの低下や新たな要望があれば、その変化を早期に察知し、対応する活動を続けている。また、システム部門メンバーが、ビジネスの視点を持つ努力も続けている。たとえばすべてのプロジェクトでは、このプロジェクトがどのような事業をどのように支援し、どのようにお客様に喜ばれ、どのように収益を高め、株価を高めるか、1エンジニアまで含め、必ず説明・共有する。運用では、サーバごとに、プライオリティコード(ビジネス上の重要性ランクを示したコード)がふられ、このサーバが、どの国、どの事業で、どのようなビジネス上の支援を行い、どのように顧客に貢献しているか、常に見えるようにしている。

 今後、個人も企業も、社内だけで仕事ができる時代ではなくなっていく。たとえばシステム部門は、TwitterやFacebookで、今後のシステム化の構想を公開している。ここへは、世界中(の個人)から、さまざまなアイデアが寄せられている。このような時代は、企業を超えた他社、社会とつながる仕組みを、セキュアな環境で提供する、プロデューサー的な力が求められる。これにどのように対応するかが、今後の課題である。

 では、次ページより、廣﨑氏とのインタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】8000人のバーチャル会議を実施、震災直後も在宅勤務で売上に影響なし
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