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  • 2012/03/26 掲載

【CIO対談:昭和シェル石油 情報企画室長 久保知裕氏】情報システム部門の自己改革~「コミュニケーションとゴールセッティング」

昭和シェル石油[CIO・システム部長に聞く、対談インタビュー連載]

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ユーザー部門の業務改革を期待される情報システム部門の中には、自部門の改革も着実に進めているところがある。彼らは、どのような自己改革を成し遂げたのだろうか。本連載では、情報システム部門のトップに自ら語っていただこう。第14回は、昭和シェル石油の情報企画室長、久保知裕氏に話をうかがった。
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 久保氏は、いくつかのビッグプロジェクトを手がけた後、現在は自社の経営改革を支援するために、情報システム機能のさらなる強化に努めている。

コミュニケーションとチームビルディングでERPビッグバンを成功に導く

 ユーザー部門出身の久保氏が手がけた最初のビッグプロジェクトは、SAPビッグバンだ。この時久保氏は、業務とSAPの統合およびプロジェクト全体管理を行うグループの責任者を務めた。このプロジェクトは、フィージビリティスタディ3ヶ月。13モジュールで全社システムの7~8割を置き換える開発に1.5年という、当時としてはかなりのスピードで遂行を果たした。そのために、経営トップに対して、このプロジェクトが、ITコスト削減のみならず、会社変革のドライバーとして使えることを強調し、トップダウンな遂行を行った。また、コミュニケーションとチームビルディングを重視した。

 具体的には、経営者やユーザーに対して、どのようなメッセージをどのようなタイミングで発し、いかにしてトップのコミット、ユーザー部門のアテンションを維持するか、最初に計画を立てた。プロジェクトは、この計画に従ってアウトプットが出せるようにスケジュールを引いた。また、プロジェクトメンバーの間で目標を共有し、最初に徹底的なSAPの教育を行い、また、プロセスごとにユーザー、システム関係会社(2007年に子会社化)、コンサルタントを物理的に1ヶ所に集め、コミュニケーションを良くした。

 一方、過去のSAPプロジェクトを分析し、成功要件としてアドオン、カスタマイズの最小化を認識。いくつかの仕組みによってこれを実現した。たとえばチャレンジセッションは、ユーザーがSAPのままで業務遂行が難しいと感じた場合、SAPにアドオンする、業務で対応する、その中間的な費用ですむ方法を生み出すといった3オプションを必ず出させ、ユーザーとシステム部門の責任者が厳しくその必然性を追求する場だ。このセッションを通らなければ、どのようなアドオン、カスタマイズも実施できないようにした。

 情報企画室長になってからは、新規事業を支えるシステムを、短期間で確立するプロジェクトに挑んだ。ここでも、コミュニケーションとチームビルディングを重視したマネジメントを展開した。

経営改革を支援するために情報システム機能をさらに強化する

 現在昭和シェル石油では、既存の石油事業で生産性を高めながら、新規事業では付加価値を高めるという、2つの重要な課題を進めている。そこで情報システムとして、標準化、簡素化、集約化を進め、仮想化やクラウドを活用し、コストを下げながら変化に柔軟に対応する基盤を構築している。また、外の優れたサービスを活用するために、今後の内外サービスの活用を明らかにするポートフォリオの確立を行っている。

 これらを進めるためには、子会社を含めた情報システム機能全体を強化し、戦略や企画提案の能力を高めなければならない。そこで久保氏は、システム人材一人ひとりが、現在どのような立ち位置にいるのか、客観的な判断ができる仕組みを構築している。これを基に、本人と上長が議論し、今後の自分自身の能力強化の方向を認識し、自発的なスキルアップや業務への挑戦を引き出すのだ。さらに、情報システム機能のコストパフォーマンスを見える化する仕組みを構築している。この仕組みで、経営に対するITの説明責任を果たすと共に、他社とのベンチマークや計画的な向上によって、情報システム機能の継続的な能力アップを図っていくことを意図している。

 上記改革を進める中で、久保氏が気を配っていることに、ゴールセッティングがある。ビッグプロジェクトを経験する中で、久保氏は、チームにパワーがあることを実感した。チームが1つの目標を共有し、それに向ってメンバーが競い合い、切磋琢磨するとき、チームも、そして構成メンバーも、見る見る成長する。これを実現するには、背伸びしないと獲得できないが、努力すれば決して無理ではないというゴールの設定が重要なのだ。

 では、次ページより、久保氏との対談インタビューの全体を紹介しよう。

【次ページ】昭和シェル石油の情報システム部門、エポックとなったプロジェクトとは

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