- 会員限定
- 2014/07/17 掲載
参入障壁が高い農業分野を“負けない戦い”で開拓する、久松農園のイノベーション
レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama
“畑から玄関まで”が農業である

代表
久松 達央氏
現在、久松農園の畑面積は4ヘクタールで、ビニースハウスなどの施設を全く使わずに屋外で育てた“露地野菜”を年間50品目以上も作り、顧客に直販している。農園に携わる人員としては久松氏以外に農場スタッフが3名、出荷スタッフが3名で、販売先は個人客が6割、飲食店が4割とのことだ。
「最初に申し上げておくと、私は何か事業戦略があり、それに沿って農業をやってきたわけでは全くないです。今日お話する内容も、理由は全て後付け。ただ本当に必死になって、生き残るためにずっと頑張ってきたことが、振り返るとあたかも1本の道になっていました。生き残っているものには、何か理があるのだろうと感じています」
冒頭でも触れた通り、久松農園の方針は非常にシンプルで、“おいしい野菜でお客様を喜ばせたい”ということ。それではおいしい野菜とは、一体何か。
「私の経験上、生鮮野菜の味を決めるのは3つの要素。まず栽培の時期でつまり“旬であるかどうか”、次に品種、そして鮮度です。この3つの要素で野菜の味の8割は決まってしまう。別の言い方をすれば、土作りや農法はどんなに寄与しても最大2割まで」
さらに久松氏は、とても技術のあるほうれん草農家が夏に作るほうれん草よりも、素人が冬に作るほうれん草のほうがおいしい確率が、遥かに高いと強調する。
「野菜には、その生理に合った気象条件や温度が存在します。どんなに技術を駆使しても、元々持っていた遺伝的な形質から大きく逃れることはできず、旬のものにはかないません」
数十年間で、味の平均点が落ちてしまったワケ
しかし日本の農業界はこの数十年間、“欲しい時に欲しい野菜が欲しい”という消費者ニーズによって、その旬を無くす方向に動いてきたと久松氏は指摘する。また1990年代後半から、日本の冷蔵輸送技術が飛躍的に発展した。結果、野菜の流通網はかつてないほど広域化、長時間化している。久松氏によれば「生鮮野菜の鮮度とは、純粋に収穫してからの日数」で、それが長くなってしまったということだ。
「悪いというわけではないですが、私はそれをおいしいとは思いません。なぜなら我々がおいしいと感じる大きな要素は、舌で感じる味ではなく、実は香り。そして香りのほうが、味よりも時間による劣化が激しいからです。」
おいしい野菜でお客様を喜ばせたい。それは旬に野菜を育て、おいしい品種を選び、鮮度よくお客様に届けるところまで実現しなければ成立しない。そういう意味で久松氏は「畑から玄関までが農業だ」と考えているという。
【次ページ】“農家仲間”ではなく“お客様”から褒められたい
関連タグ
PR
PR
PR