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  • 2015/05/19

"心のワークライフバランス"のあり方 『クレヨンしんちゃん』野原ひろしに学ぶ働き方

時代にあわせて、上司や部下、あるいは家族の理想像は変化していく。現在、あるべき父親像として注目を集めているのは、意外にも『クレヨンしんちゃん』の登場人物である野原ひろしだ。なぜ、このキャラクターはここまで多くの人に受け入れられているのだろうか。『野原ひろしの名言』『野原ひろしの超名言』(双葉社)の著者である大山くまお氏が、時代背景を踏まえて分析する。

理想の父、理想のビジネスパーソン

 野原ひろし、35歳。双葉商事に勤務し、現在の役職は営業第2課係長――。20代から30代にかけての人たちなら、彼が何者か知っていると思う。野原ひろしとは、『クレヨンしんちゃん』に登場する主人公、野原しんのすけの父親のことだ。原作漫画の連載開始から25年、アニメの放送開始から23年経つ現在、この野原ひろしが熱い注目を集めている。理想の父親として、そして理想のビジネスパーソンとして、である。

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『野原ひろしの超名言』
 2014年には「アニメファンが選ぶ理想の家族キャラ調査2014」(エッグモード「キャラペディア」主催)で「もっともお父さんにしたいキャラクター」の1位に輝いた。同年にはひろしをフィーチャーした『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』が公開されて興行収入18億円超のヒットを記録している。また、映画公開にあわせて書籍『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』(双葉社)が刊行され、こちらも現在まで5刷のヒットとなった。

 それ以前に、ここ数年インターネットを中心に、ひろしの父親としての生き方や人間観などを称える記事や投稿が相次いでいた。主に10代から30代までの若い世代を中心に圧倒的な支持を受けているキャラクターだと考えていいだろう(ニコニコ動画やツイッターなどで検索してみると、その“圧倒的”な感じがよくわかる)。

 では、なぜ野原ひろしがここまで支持されるのだろうか? 「理想の父親」であり、「理想のビジネスパーソン」(作中では「サラリーマン」と表現されている)とされるひろしだが、仕事と家庭の両立に悩まされている現代のビジネスパーソンにとって、どのような学ぶべき点があるのだろうか?

 現在、政府が女性の活躍推進を打ち出しているのはご承知の通り。日本経済の起爆剤として女性の活躍が期待されている。と同時に、政府は人口問題を解決すべく、出生率向上を政策でうたいはじめている。この動きが指し示しているのは、「男性は外で仕事をして、女性は家庭を守る」というモデルの崩壊である。景気の低迷と低賃金なども、共働き家庭の増加の一因だ。女性は働きながら出産し、子育てしなければならず、そこで当然ながら必要になるのは男性の育児への参加となる。

 しかし、旧来型の長時間労働は当たり前のように続いているし、その一方で育児休暇を取得する男性は6%にも満たない(『日経ビジネス』調べ)。家事、育児、仕事の負担は女性に一気に押し寄せているのが現状だ。家事や育児を積極的に手伝う「イクメン」はもはや理想ではなく、早急に必要とされている夫像なのである。

島耕作VS.野原ひろし!?

 そんな中、2015年1月、人気コミック「島耕作」シリーズの作者である弘兼憲史氏が雑誌のコラムで「育児に熱心な男は出世しない」と発言した。仮に弘兼氏が上司だった場合、重要案件で発生した会議を「子どもの誕生日だから」という理由で帰るような部下は「仕事から外す」というのだ。この発言は、共働き家庭を支える女性たちや現役の子育て世代から集中砲火を浴びて、大炎上することになった。

 弘兼氏の発言と、家庭を顧みず仕事に邁進して出世を続けたキャラクター・島耕作のイメージと重ねた人も多いだろう。『課長島耕作』の連載が始まったのはバブル前夜の1983年、昭和58年のことだ。男性が育児に参加しなければ、家庭も社会も回らなくなってしまった現在、弘兼氏の発言はいかにも時代錯誤なものだった。今、島耕作を「理想の父親」はさておくとして、「理想のビジネスパーソン」と称える若者は数少ない(そもそも今の多くの若者は「島耕作」シリーズを読んでいないだろう)。

 では、野原ひろしはどうなのだろうか? 『クレヨンしんちゃん』の連載が始まったのは1990年。世はバブル真っ盛りだが、ひろしはその恩恵をほとんど受けていないように見える。都内の中堅商社の万年係長であり、埼玉県春日部市に庭付き一戸建てを持っているが、32年ローンに苦心惨憺している。専業主婦のみさえと子どものしんのすけとひまわり、犬のシロを養う一家の大黒柱と言えば聞こえはいいが、連載当初はどこにでもいる平凡でうだつの上がらないサラリーマンだった。みさえのみならず、しんのすけまでも「安月給」と声をそろえる始末。

 島耕作を「昭和のサラリーマン」とするなら、ひろしは「昭和の気分をひきずったサラリーマン」だ。昭和の時代、右肩上がりの経済の中、社員の“モーレツ”な働きぶりで会社も家庭も支えられていた。ひろしは家で晩酌を楽しむことも多いが、残業もとても多い。連載開始直後は「接待ゴルフ」で日曜日が潰れることもあった。1ヵ月の長期出張に出向くこともある。会社への帰属意識は強く、自分がサラリーマンであることも強く意識している。「オレもいつかは島耕作!!」というセリフまである。

【次ページ】 大事な家族と大事な仕事

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