- 会員限定
- 2015/09/10 掲載
JFEスチール 北山直人氏に聞く、攻めのIT銘柄に選ばれた海外展開のクラウドERPとは
経営革新を支える日本のCIO
海外展開の加速は必要不可欠
北山氏: 我々は高炉で鉄鉱石と石炭から銑鉄(せんてつ)を生産するところから、最終的な鉄鋼製品を作るところまでを一貫して担う鉄鋼メーカーです。
自動車メーカーなど顧客企業ごとのさまざまな用途に応じて、オーダーメイドの製品を作っており、特に日本の鉄鋼業界はそういう形で進化してきました。
国内の鉄鋼市場をみると、企業収益の好転や国土強靱化もあり、2020年の東京五輪開催までは堅調に推移するとみていますが、大きなトレンドとしては人口減、製造業の海外移転などにより国内市場は縮小傾向にあります。
しかし、海外市場は東アジアの過剰能力状態が続いているのに加えて、世界の粗鋼生産量約16.5億トンの約半分を作っている中国とも戦っていく必要があり、そうした中で、海外展開の加速は必要不可欠な取り組みです。
自動車メーカーなども海外での現地生産を加速しており、我々もより迅速に素材を供給する必要があります。そこでタイやインドネシアなどに海外拠点を設けて(インドネシアは2016年に稼働開始)、グローバル展開の足掛かりとしています。
北山氏:第一に挙げられるのが、高い技術力があることです。我々は商品開発や環境技術の研究、製造プロセス技術の革新に取り組むスチール研究所を国内6拠点、製造拠点それぞれに設置しており、さらに鉄鋼業界で初めて顧客企業と共同研究を行うための試験/研究施設も開設しました。
JFEスチールは2003年に旧NKK(日本鋼管)と旧川崎製鉄が統合して誕生しました。現在は、福山地区と倉敷地区からなる西日本製鉄所と、京浜地区と千葉地区からなる東日本製鉄所の2大製鉄所体制で運営しています。鉄鋼業は装置産業であるため、集約された拠点で大量の鉄を作ることができるのは、高品質の製品をより低廉に生産することにつながり、非常に大きな優位性です。これはお客さまのメリットにつながるものであり、2015年に中期経営計画でも掲げた「お客さまに世界最高の技術とサービスを提供するグローバル企業」が、まさに我々の目指す姿です。
「攻めのIT経営銘柄」として評価された2つのポイント
北山氏:一言でいえば、さまざまな情報をしっかりと「つないでいくこと」です。それによってビジネスサイドの新たな価値を生み出していくというのが我々の思いです。
鉄の製造プロセスは、まず製鉄所のシンボルである高炉に鉄鉱石と石炭を投入して加熱し、鉄の成分である銑鉄を取り出します。次にそれを成分調整し、その後ロールとロールの間に鉄を通して延ばしていく圧延を行い、そして自動車や造船などに使われる最終的な鉄鋼製品に加工していきます。
先にも述べた通り、それらはオーダーメイドで、各製品に付随する情報、つまり鋼の種類や厚み、幅などのサイズは多種多様で、製品形状を表す大品種だけでも十数種類、総計では数万種類におよびます。営業部門が投入した顧客のオーダー情報に、どんな作り方が適切なのかをつなげ、さらには実際に製品がその通りに作られているかどうかを各プロセスにおいてデータを集約してチェックします。
顧客のオーダーとひも付いた情報はすべて間違いなくつなぐ必要があり、ITとしてはまず何よりも企業競争力の源泉となる製品の製造プロセスとその過程で得られる情報を正確に管理することが重要なのです。
IT部門の役割としては、こうした情報連携やプロセス管理を行うためのシステムを企画、開発し、運用するというのがメインの業務です。たとえば、高炉の温度制御をはじめ、各プラントのプロセスコントロールについては専属の制御技術部隊があり、長い技術開発の歴史があります。一方、IT部門としては、プラント同士の情報をどうやってつなぎ新しい価値を生み出すか、営業サイドの情報をどうやって連携させ、生産管理の仕組みをより高度化するか、といったシステム企画の仕事を担っています。
【次ページ】日本と同品質の製品を海外でも製造可能にするクラウドERP活用
関連コンテンツ
PR
PR
PR