言語ではなく、社会の問題
──まずは『紋切型社会』を執筆したきっかけについてお聞かせください。
武田氏:編集者と、テーマについて打ち合わせを重ねる中で、「気になるフレーズを並べ、そのフレーズから広げていく評論を書いていこう」と、かなり漠然としてはいるものの、方向性が定まりました。この本には20のフレーズが入っていますが、普通だったら100くらい考えてから、書きやすい20に絞るはずです。でも今回考えたのは、22くらいでした(笑)。フレーズを入口に用意して、そこから踏ん張って掘り下げてみようと。結果として、グルグル旋回していくような考察になったのは、「とにかくこの20のフレーズから考え込む」って決めて書いたからなんです。タイトルを付けるのには苦労しまして、編集者と50~60案ほどは考えましたね。
──フレーズの数より多いですね。
武田氏:原稿が出揃ってから、この20のフレーズに共通することってなんだろう、と考えました。これらのフレーズは、本来は色々と考察できるはずなのに、その言葉が投じられることでシャットアウトされてしまう、奥に広がる考えを閉ざしてしまう機能を持っているケースが多いことに気がついたんです。最初は「紋切型の言葉を考える」という方向性だったんですが、これは言葉の問題ではなくて社会の問題だと思い直し、最終的に『紋切型社会』になりました。
──言葉に限らず、そこから広がる部分が大きいと。
武田氏:はい。目次を見て「うんうん、この言葉使っちゃうよねー」と“あるある”な感じで捉えられることも多いんですが、「この言葉を使っちゃダメ」と言葉狩りをしているわけではありません。それは読んでくだされば分かると思います。限られた言葉を使うことによって選択肢が失われてしまい、社会の見え方や、個々人の考え方が狭まることへの危惧を通底させたつもりです。
影響を受けたナンシー関と小田嶋隆