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  • 2016/05/20 掲載

堀紘一氏インタビュー、なぜトップコンサルタントが「ビジネス書を読まない」のか

ドリームインキュベータ 会長に聞く

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読売新聞、三菱商事を経て、ボストンコンサルティンググループの日本代表を務めたのち、2000年にドリームインキュベータを設立。日本を代表する経営コンサルタントでありながら、2005年には同社を東証1部に上場させた起業家、経営者でもある堀紘一氏。ビジネスの最前線を走り続けてきた堀氏だが、本の虫として知られる一方、ビジネス書はほとんど読まないという。なぜビジネス書を読まないのか、現代のビジネスパーソンが読むべき本とはいったい何か。堀氏に聞いた。
(聞き手は編集部 松尾慎司)

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ドリームインキュベータ
代表取締役会長
堀 紘一 氏

1945年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、1973年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。1989年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。同社を2005年9月、東証1部に上場させる。2015年12月には『自分を変える読書術 学歴は学<習>歴で超えられる!』を刊行


1年で200冊以上を乱読した中学・高校時代

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──堀さんは本の虫だそうですね。

堀氏:私は中学・高校と寮生活だったのですが、寮に帰っても面白くないので、ずっと図書館にいました。学校の図書室のいいところは返し忘れがないこと(笑)。そこで本をひたすら読みました。図書館には20代の若い司書の方がいて、毎日その人と会って、いろいろなことを教えてもらいました。

──本を読む効果はあったのでしょうか?

堀氏:まずは視界が開けてきます。こちらは無知蒙昧の一方、本は素晴らしい方が書いているわけで、それは開けるに決まっています。

 漢字もたくさん覚えました。当用漢字は1850ぐらい、常用漢字で2150文字しかないと思いますが、文豪たちの使う漢字は3000から5000くらいあります。それから表現力。当然のことながらさまざまな4文字熟語や、「洛陽の紙価を高める」といった故事・ことわざが随所に出てくるわけです。

──当時はどんな本を読まれていたのでしょうか。

堀氏:私は「乱読」を薦めているのですが、当時の私がまさにそうでした。最も多いときだと1年間に200冊くらいは読んでいたと思います。夏目漱石や芥川龍之介、森鴎外とか、いまにしてみれば古典ですね。あと、司書の方に薦められて外国の本も読みましたが、まずは小説がほとんどでした。次に心理学や歴史物、進化論や哲学の本も読むようになりました。

人間は文字を発明して急速に賢くなった、好奇心がすべての原点

──ビジネスの一線にいらっしゃったのに、そのジャンルは意外です。なぜ歴史物や進化論なのでしょうか。

堀氏:私は、人類が進化した最大の理由は、約1万年前の稲や小麦の栽培だと考えています。それまでは、狩猟採集文化でした。たとえば、10人くらいでマンモスを倒してその肉を分けたわけですが、肉は日持ちしないので、狩猟に参加してない人たちにも分け与える。これは原始共産主義社会です。

 ところが、約1万年前に、小麦や稲が同時多発的に栽培されるようになると、食料の備蓄が可能になります。つまり、貧富の差が生まれたのです。

 人類の歴史は何百万年もありますが、それを1人の人間の一生にたとえると、飢えと寒さから解放された時間は、わずか4秒ほどに過ぎません。あと飢えているか寒いかのどちらか。稲と小麦の栽培をはじめて、備蓄ができるようになり、ひもじさから開放されると同時に貧富の差ができて、資本主義の原点が生まれるわけです。

 そうすると、年中マンモスを追っかけなくても食べていけるようになり、文化が生まれます。すなわち、文化の主原料はキャッシュ、お金なのです。こうしたことが、読書から自然と身についていきます。

 そして、文化を伝承するために文字が生まれます。文字が生まれたことによって、こうやったら失敗するとか、こうやったらうまくいくといった先人の知恵が伝承されるようになって、人間は急速に賢くなっていくのです。

 ただし、文字は最初、教会専用で、だれもが読み書きできるわけではありませんでした。それが、15世紀にグーテンベルクが活版印刷技術を発明して本が発達します。そこで教会に閉じていた文字が一気に広がり、一般の人が読めるようになりました。そして、いまは文字、印刷の発明に続く革命が起きています。それがインターネットですね。

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自分を変える読書術 学歴は学<習>歴で超えられる (SB新書)
──しかし、インターネットのせいで、いまの人はあまり本を読まなくなりました。

堀氏:私は社会人になってからも本を読んできましたが、はたと周りを見ると、周りの人が「気が遠くなるほど」本を読んでいないことに気づきました。どうしてそんなことになったのかを考えると、1つはテレビだろうと思います。私は寮生活だったのでテレビはあまり見ませんでした。もちろんインターネットもありませんでした。その結果、読書が中心になったのかもしれません。

 もちろん、必ずしもテレビやインターネットが問題なのではありません。ただ、今の若い人たちはケータイで頻繁にメールをやりとりしていますが、限られた狭い社会で、しかも知的レベルも、経験も同じくらいの仲間の間で何十回往復しても、残念ながら少しも賢くなりません。

 しかし、本を読めば、教養を身につけ、視界が開けてきます。とても自分勝手な話なのですが、何冊か読むととても素晴らしい著者とお友達みたいな感覚になってくるんですよね。会ったこともないどころか、もう死んでいる人だったりしますが、何冊も読んでいると話の展開も見えてきますし、とても親しみが持てるようになります。

──では、読書をすることで重要なこととは何なのでしょうか。

堀氏:人の成長の原点は「好奇心」だと思います。たとえば親交の深い経営者や有識者と話をしてわかるのは、一様に好奇心が強いということ。その強さが「なぜだろう」「どうしてだろう」となって、ものごとの源にどんどん迫っていく。そこに発明や発見があるのですが、読書にはそれがあります。

 読書を通じて、歴史や偉人に学べと言いましたが、言うとおりにする必要はありません。たとえば、文化などは息子が父親を乗り越えてやると思うから発達していったのだと思います。朱子学のように、主を敬い、父を敬うだけの文化であれば発展しません。本居宣長の言葉を借りると「師の説になづまざること」。これがなければ、人類はいまだにマンモスを追いかけていたはずです(笑)。

【次ページ】なぜビジネス書をほとんど読まないのか

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