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- 2017/04/10 掲載
国鉄民営化から30年、経営とインフラ維持の両立はもう限界だ
JR北海道の路線見直しに沿線自治体が猛反発
日高線は2015年1月の高波で不通になったまま、復旧のめどが立っていない。その間にJR北海道は経営悪化から営業路線のほぼ半分に当たる道内10路線13区間(総延長1,237.2キロ)を自社単独で維持できない区間と発表した。
日高線もこの区間に含まれている。説明会に沿線の首長を集め、復旧断念に至った経緯を伝え、バス転換への理解を求めるのがJR北海道の狙い。JR北海道が一方的に廃止通告する場だった。
沿線8自治体の首長のうち、浦河、新ひだか、様似の3町長は抗議の意思を示して会議を欠席した。えりも町長も体調不良を理由に姿を現さなかった。出席した4町長がJR北海道に不信感をあらわにするなど、説明会は異常な雰囲気に包まれていた。
JR北海道は旅客の減少から経営危機に直面している。2015年度は運行する14路線すべてが赤字に転落した。2016年度の営業赤字は過去最高の440億円と予想されている。借入金の残高も2019年度で1,500億円に膨れ上がる見通しだ。このままだと2020年度に資金不足に陥り、全道で列車運行が不可能になるとする試算が北海道議会に示されている。
JR北海道の島田修社長は説明会で現在の財務状況を説明し、バス転換を求めたが、自治体側は地方切り捨てと受け止めた。日高管内7町は日高線存続を前提に、線路と道路の両方を走れるデュアル・モード・ビークル(DMV)導入の検討に入った。その後、双方の話し合いは進んでいない。
浦河町企画課は「あくまで復旧を求める町の立場は変わらない。日高線の存続を念頭に置き、地域の未来を考えていく。切り捨ては受け入れられない」と反発を強めている。
本州3社は経営順調で、わが世の春の状態
旧国鉄はJR北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物の7社に分割民営化された。7社合わせた売上高は旧国鉄時代に比べてほぼ倍増。親方日の丸の無責任体制から脱却したことが功を奏したとみられる。労使対立によるストの頻発もなくなった。うち、東日本、西日本、東海の「本州3社」とJR九州は既に上場している。旧国鉄が抱える37兆円の債務のうち、15兆円近くを本州3社とJR貨物が負ったが、本州3社は返済を続けながら、株式上場を果たせるほど経営が順調だ。
その結果、JR東海はリニア中央新幹線の建設に独自で着手した。JR九州は豪華列車「ななつ星in九州」を投入している。JR東日本や西日本は新駅開業や鉄道施設跡の再開発に力を入れている。
民間信用調査機関・東京商工リサーチによると、2015年度の旅客6社の業績はJR東日本、東海が過去最高の売上高と当期純利益を計上した。JR西日本も当期純利益は過去最高だ。本州3社はまさにわが世の春という感じさえする。
JR九州は鉄道事業で営業損失を出しているが、売上高に占める非鉄道事業の比率が際立って高く、2015年度決算では19.8%に達した。非鉄道事業の売上高はJR東海や西日本を上回るほどで、いち早く脱鉄道に取り組むことで本業の赤字をカバーしたわけだ。
利用者の利便性も向上した。東海道新幹線は(国鉄民営化で)時速220キロから(国鉄民営化の翌年度には)235キロにスピードアップ(なお、2015年からは285キロになっている)、1列車当たりの遅れも大幅に短縮された。新幹線網はさらに広がり、石川県のように北陸新幹線開通で活気づいた地域もある。
【次ページ】JR北海道と四国は人口減少で危機的な状況に
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