- 会員限定
- 2017/07/06 掲載
Vorkers増井慎二郎 社長「従業員エンゲージメントを高めなければ離職は止まらない」
求職者もいて求人もあるのに「マッチングが進まない」採用市場
厚生労働省が2017年5月30日に発表した有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍、総務省が同日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は2.8%。
前者は求人数が求職者数を上回っていることを意味し、後者は15歳以上の働く意欲のある人のうち、職がなく、求職活動をしている人が100人に3人未満であることを示している。
実際、採用市場は活況を呈しており、「企業が採用活動に割く予算やリソースも大きい」と増井氏は語る。
ただ、詳しく見ていくと、新卒採用と中途採用では少し風景が異なる。学生にとっては、企業から内定が取りやすい状況だが、転職者はというと、企業との間でスキルや意識のミスマッチが発生しているというのだ。
「企業としては、少子化やグローバル化により競争環境が厳しくなる中で、転職者に求めているのは仕事への意欲。一方、求職者の多くが気にしているのは就業環境。『長期間働けるのか』『ワーク・ライフ・バランスはどうなるか』といったことを優先的に検討する傾向があります。世の中には求人もあり、転職希望者も多いのにマッチングが進みにくいという状況を感じます」(増井氏)
増井氏によると、「小売や飲食のように現場で多くの人材が必要」という企業は、人材を集めるために自社がホワイト企業であることを認知してもらう必要性が高まっているという。
「求人広告にお金をかけ、いいキャッチコピーを作ればそれで人が採用できるという時代は終わりました。Vorkersのようなクチコミサイトに情報が集まり、社内の職場環境が明らかになるようになってきました。求職者を集めるためには、働く環境そのものを改善し、働き甲斐を感じられる仕組みを作るしかありません」(増井氏)
成長できなければ退職あるのみ
「人手不足解消」ということであれば、「採用して社員数を増やす」というアプローチもあるが、同時に「今いる社員が働き続ける」ことも重要になる。特に最近注目されるのが、世代によって分かれる定着率だ。キャリアの長いベテランはずっと働き続けているものの、若手は入れ替わり続ける一方、という企業も目に付く。
「これは、ベテラン社員にとっては、現状の年収を維持させた転職が難しいという側面があるように、終身雇用制度および年功序列制度の崩壊による、世代間ギャップを反映したものだと思います」と同氏は分析する。
増井氏によれば、業界や企業ごとに状況は異なるが、ベテラン世代が入社したころは終身雇用制度、年功序列制度がまだ何とか機能していて、多くの人が1つの会社で長期間働き、それを前提に職位も給料も自然に上がっていった。今のベテラン社員はその制度により年収が上がり、現状でもある程度維持されている人も多い。しかし、若手は最初から長く働くことで職位も給料も自然に上がることを期待していない、または期待できないというのである。
「これは大手人材サービス企業の役員から聞いた話ですが、たとえば学生の営業適性をアセスメントすると、目標達成意欲や収入面への期待値が低く、そうした傾向が毎年強まっているそうです。また、若い世代は、長く働くことと職位や給料の上昇が結びついておらず、そこに価値を見出さない状況になっています。そのかわりに彼らが求めるのは、『そこで働いて自分がどれだけ成長できるか』で、それが期待できないと判断したら会社を去るのです」(増井氏)
こういった若手の「長期雇用への不信」と「成長できる環境への期待」は同社の調査による世代別の入社理由ランキングにも表れている(下図)。
【次ページ】人材を確保するなら「従業員エンゲージメント」を上げるしかない
関連コンテンツ
PR
PR
PR