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  • 2018/01/30

「AI時代を生き抜くカギは好奇心」慶応夏野氏とアラヤ金井氏対談

AI(人工知能)はもう夢の世界ではなく、生活に役立つサービスとして社会に実装されつつある。では、AIにより私たちの生活はどう変わり、社会としてどういう選択をしていけばよいか。ドワンゴやトランスコスモス、グリーなど多くのIT企業の取締役を務め、慶應義塾大学大学院 特別招聘教授も務める夏野剛氏が、AIや人工意識の研究開発を進めるアラヤの金井良太氏に迫った。

フリーライター/エディター 大内孝子

フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。

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左:アラヤ 代表取締役CEO 金井良太氏、右:慶應義塾大学大学院 特別招聘教授 夏野剛氏

人間はなぜ「試行錯誤」するのか

 アラヤは認知神経科学を専門とする金井良太氏が立ち上げたAIのスタートアップ企業だ。金井氏は「脳からなぜ人の意識が生まれてくるのかを理解したかった」と起業の思いを述べる。そして、アラヤのミッションは、「神経科学・統計学・機械学習・画像認識・情報科学を駆使し、さまざまな産業分野の課題を解決する新しいテクノロジーの創出」にある。そして、その先には、AIの先をいく「人工意識」の実現がある。

 金井氏はAI研究の「現在」を、産業革命における蒸気機関の進化にたとえて説明した。

 産業革命を牽引した蒸気機関は「経験的に開発したものから知見がたまり、改良が進むことで理論化が進んでいった」と金井氏は述べる。AIの研究もこれに似た状況で、「たとえば、今注目を集めるディープラーニングは、経験的にこうしたらうまくいくというのをAIが導くが、どのように最適解が導かれているかはまだ解明されていない」というのだ。

 金井氏は、これが明らかになることで人の意識の仕組みについても理解が進むのでは、と考えている。

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AI研究には好奇心の解明が重要だと述べる金井氏

 これに対し、夏野氏は「ディープラーニングやマシンラーニングは、とにかくデータを学習させて、いわば人間の学習スタイルをコンピューターに適用しているもの」だと述べる。ただ、「人間はなぜ試行錯誤することで学んでいくのか」というところは突き詰められていないというのだ。

 金井氏もこれに応じ、「AIに好奇心を持たせる研究をしている」と話した。

「AIに多くのデータが必要なのは、必要な情報も不必要な情報もとにかく全部入れてしまうからです。一方、人間はすべての情報をインプットできないので、好奇心を持つことで自分から『いる情報』を取りにいくわけです。AIに好奇心を持たせることができれば、そうしたことが可能になると考えています」(金井氏)

 金井氏は、「AIが効率よく学習するには、人間と同じように今の自分に必要な情報をフィルタリングしインプットする能力が必要だ」と説明する。そのキーとなるものを「好奇心」と表現するが、これはAIに対し、自分で自分の問題を設定させることを意味する。

 そして同氏は、「人間のあり方、脳の認知のメカニズム」を解明できれば、今よりも圧倒的に優れたAIが作れるのではないかとも述べる。

 たとえば、「モーション・インデュースト・ブラインドネス」と呼ばれる錯視がある。3つの静止した黄色い点のまわりをたくさんの青い点が回転している。これをしばらく見ていると、黄色い点がすべて消えてしまうというもの。黄色い点はそこにあるにもかかわらず、脳はその像を描けない。つまり、処理を追いつかないのだ。

「脳は網膜に映った映像をそのまま視覚化するのではなく、一度、脳内で再構成しているんです。その『作る』処理が追いつかないから錯覚が起きる。では、なぜ、わざわざ再構成するのかという点を突き詰めることで、AIを作るヒントになるのではないかと考えています」(金井氏)

研究成果をいかに「社会に役立つ」アウトプットにするか

 意識がどうやって生まれるか、その謎はまだ解明されていない。たとえばリンゴがあって、そこから光が反射して網膜に当たり、それが電気信号になって脳に届く。これが脳の働きだが、このとき私たちの意識では「リンゴが見えた」となる。この「見えた感じ」は物理的世界におさまっていないと金井氏はいう。

「脳に届いて何か情報処理がされ、『見えた』となる。今のディープラーニングにこうした意識があるのかどうか、そこをまず知りたいです」(金井氏)

 夏野氏は、意識の問題は『2001年宇宙の旅』などのSF小説の世界などでモチーフになることがあったが、そうしたSFの世界がようやくリアルの世界に近づいてきたと指摘する。

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夏野氏は「意識というテーマはSF小説だけの話ではなくなってきた」と述べる

 金井氏によると、意識は「まともな科学者が言ってはいけないキーワード」のように扱われてきたという。だからこそ、説得力のある研究が必要なのだ。

「サイエンス(研究)とテクノロジーを一緒にして、役に立つものを開発することで、新しいサイエンスのやり方を確立していきたいです。そうすると、ビジネスとしての利益が重要になってくるので、今、我々はベンチャー企業として、いろいろな企業の方と一緒に、世の中にどんなニーズがあるのかというのを学びながら進めています」(金井氏)

 AIを「特化型」と「汎用」という軸で分けたとき、特化型AIは、特定の問題を解決するAIで、たとえばAIスピーカーなど、具体的なサービスやプロダクトが登場している。

 一方、汎用AIはまだ「何に使ったらよいか」というゴールが見えていない。なかなかすぐにはそのゴールにたどり着けない。かといって、ゴールが見えるまでの間、何もアウトプットできないとなると、研究を続けること自体が難しくなる。

 そこで、金井氏はサイエンス(研究)とテクノロジー(開発)を一緒に進めるというスタンスを取っている。途中の研究成果をいかに社会に役立つ形でアウトプットするか、「サイエンスのビジネスモデルを再構築したい」と金井氏は話す。

【次ページ】人間社会そのものが、AI研究の1つのシミュレーション

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