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- 2018/01/04 掲載
2030年に向けて人工知能をどう活用すべきか? ガートナーの見解
2030年、国境という概念は希薄化しているだろう
2030年のビジネス環境はどうなっているだろうか。おそらく国境という概念は希薄化しているだろう。たとえば自動翻訳が各国の言語の障壁を取り払っていくドライバーとなる。2017年3月16日にリリースされたGoogle Neural Machine Translationはエラー60%削減を実現した。一方でIoTの普及により、コネクテッドなビジネスは3.9兆ドル以上の規模に拡大すると予想される。世界人口が86億人に達しようとする時代、言語の障壁がなくなることで、企業はこの膨大な“個客”を対象にビジネスを行っていくことになる。Forbes Global 2000ランクイン企業を見てみよう。2009年から2013年にかけて米国企業ではFacebook、Salesforce、LinkedInなどがランクイン。さらに2017年にかけては新たにテスラ、Netflix、ServiceNowなどがランクインした。いずれもクラウドやモバイル、ソーシャル、ADASといった技術によりゲームチェンジを引き起こした新興企業だ。ところが同時期にランクインした日本企業を見ると、日本郵便や損保ホールディングス、ルクルートなど、もともとポテンシャルがあった従来企業だ。
今後、日本語という障壁がなくなったらどうなるだろうか。繰り返すが国境という概念が希薄化し、従来の産業構造が破壊され再構築されていく中で、日本企業も膨大な個客と向き合いながら、突如あらわれるゲームチェンジャーと戦わなくてはならない。
もちろん単純に新陳代謝が高ければこのグローバル競争で勝てるわけではない。ただ、高め続けなければならない状況となっていくのは間違いない。2030年という長期視点で企業が生き抜くためには、2~5年の近未来で起きることが予測可能なこと、これが当たり前になるという捉え方でスピーディーな選択と集中を行うべきである。
生き残る企業は3つのAIリテラシーを持っている
破壊的なビジネス・ソリューションによってAIエコノミーを推進する新興ベンダーは、早ければ2019年までにAmazonやGoogle、IBM、マイクロソフトにも勝る存在となりえる。実際、さまざまなAIソリューションを提供する新興ベンダーは急増しており、現在ではAI関連企業の数は2,000~3,000社に達しているとみられる。大手ベンダーから収益を奪い取ろうと、一獲千金を狙って市場に殺到しているのだ。これらの新興ベンダーの多くはAIを軸に、あえて難問に挑む開発に注力している。AI機能を自社ソリューションに組み込むベンダーが増加するに伴い、各ソフトウェア・アプリケーションがますますインテリジェントになっていく可能性が高い。
この時代を生き抜くために必要な企業能力とは何なのか。AIを使いこなすためのリテラシーこそが企業の競争力を高め、グローバルプレイヤーにも勝るポジションを確立するためのアクセラレーターになるとガートナーは考えている。
AIリテラシーには大きく3つの能力がある。まずは「経験できる能力(Experience)」である。ディスラプティブな技術価値の波に乗れるかどうか、ゼロを1にできる能力が求められる。次に「信頼できる能力(Trust)」だ。小さい成果からでも技術価値を1つひとつ積み上げていく必要がある。そして3つ目に「スケールできる能力(Scale)」だ。経験と信頼によって積み上げてきた価値を倍増するのである。この3つのAIリテラシーが備わってこそ、企業はプレミアムを勝ち取ることができる。
もちろん簡単なことではない。そもそもAI関連技術といっても、深層学習、機械学習、汎用人工知能、コグニティブ(認知)コンピューティング、自動運転車、商用無人航空機(ドローン)、会話型ユーザー・インタフェース、企業向けタクソノミ&オントロジ管理など多様な分野が存在する。特に国内では代表的な実績もあまりないだけに、使いこなすには大きな困難がともなう。「まずはAIを体験したい」と考えても、ソリューションと経験価値のギャップに直面することになるのだ。
このようにAI導入は常に手探りとなる。しかもAIは自動車に例えればF1マシンのようなものであるだけに、乗りこなすにはプロフェッショナルなドライバーが必要となる。 そこで多くの企業がパートナーを探すのだが、そこにもまた困難が伴う。先に挙げたような領域ごとに専門ベンダーが乱立しているからだ。自社の課題や実現したいテーマが明確になっていない場合、パートナーの選定は難航することになる。
【次ページ】AIソリューション導入の決め手は「最先端」ではない
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