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  • 2018/06/21 掲載

電子マンガが自ら「伸び率」を鈍化させる理由

and factory 青木倫治氏インタビュー

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出版不況と言われるように、年々、出版物の販売金額の縮小が続いている。そんな中、電子マンガが電子書籍の売上をけん引している。しかし、海賊版サイトの利用は広がり、4月に内閣府が「漫画村」「MioMio」「Anitube」などのへの緊急対策案を発表した。今後、電子マンガはどうなっていくのか。「マンガPark」「マンガUP!」などのマンガアプリを開発・運営しているand factory 取締役の青木倫治氏に話を聞いた。

執筆:中村 仁美、聞き手・構成:編集部 佐藤 友理

執筆:中村 仁美、聞き手・構成:編集部 佐藤 友理

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and factory 取締役 青木倫治氏


海賊版サイトは何が問題なのか

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――御社のことをお教えください。

青木氏:and factoryは2014年9月に設立したITベンチャーです。社名の通り、「日常に&を届ける」こと、 つまり、人々の生活を豊かにするビジネスの創出にチャレンジしています。

 アプリ事業部では、マンガアプリやゲーム攻略掲示板などエンターテインメント系のアプリを開発。またIoT事業部では、アプリ1つでリモコン操作、部屋の鍵の開閉などができる&IoTアプリの開発、さらにはそのアプリで実現した最先端のIoT空間を楽しめる体験型宿泊施設「&AND HOSTEL」の運営なども手掛けています。

――マンガアプリを提供なさっているということですが、4月に注目された漫画村など海賊版サイトの問題点をお話しいただけないでしょうか?

青木氏:4月13日に内閣府が「漫画村」「MioMio」「Anitube」などの海賊版サイトへの緊急対策案を発表しました。

 海賊版サイトの問題は、すべてのコンテンツが無料で見られてしまうということだけはありません。最大の問題は最新号が発売前に読めてしまうことです。

 たとえば少年ジャンプであれば、月曜日発売の号がなぜか漫画村では前週の木曜日に読める。マンガのデータがどこからか流出していたのです。もちろん、出版社としても対策は打っていますが、いたちごっこになっています。

 出版社はもうからないことにお金をかけなくなりますし、マンガ家は印税が入らないため創作する理由がなくなってしまう。海賊版サイトが隆盛すると、良質なコンテンツがつぶされていくのです。

 海賊版サイトの収益源は広告で、その中心は性的な表現の多い広告です。違法に公開されたコンテンツが不快な広告と並んで表示されたら、コンテンツのブランドも損なわれます。

 こうした広告経由の収入源を断つため、業界を挙げて、海賊版サイトに広告を配信する代理店、DSP各社も海賊版サイトに広告を配信しないよう取り組む一方、そういったサイトに広告を出すDSPについては、各社が使わないようにするなど対策を採っています。

 ユーザーにとってもメリットは大きくありません。海賊版サイトはセキュリティーのリスクが高く、不正なプログラムが仕込まれていることもあるからです。

実は「紙VS電子」ではない

――電子マンガが登場したばかりの頃に比べ、「電子マンガを読む」ということが浸透してきました。

青木氏:出版社の中にはまだまだ「電子化すると紙が売れないのでは」という考えの人も多いのも事実です。そのため、最新号は紙媒体で、電子は1週間遅らせるなど、ディレイ方式を採用する出版社もあります。

 しかし「紙VS電子」という考えはナンセンスです。 実際、当社がてがけている「マンガUP!」や「マンガPark」では、アプリをきっかけに作品を知り、単行本のコミックスや原作のライトノベルなど書籍が売れるという逆転現象も起きています。

 また、単行本はすでに絶版になり、今となっては物理的にはほとんど流通していない作品でも、アプリで配信されて改めて脚光を浴びるという例も多いですね。違法サイトとは違い正しく運用すれば、電子マンガは読者と作品の新たな出会いの場であり、出版社も作家もユーザーにとっても新たな価値を創造するものなのです。

 デジタルネイティブ世代を中心に、若年層は「紙で読む」という考えが最初からないのです。今後マンガに限らず、出版市場を伸ばしていくためには、電子を伸ばしていくことが必須だと考えます。

電子マンガと紙マンガの違い

――電子マンガと紙マンガには、それぞれコンテンツとしてどんな特性があるのでしょうか?

青木氏:「電子マンガ」というと、紙のコンテンツをそのまま電子にするというイメージがあるかもしれませんが、実はそうではありません。紙をそのまま電子化してもうまくいかないのです。

 電子マンガは移動などの隙間時間に読まれることが多いため、離脱を防ぐことがポイントとなります。読み続けてもらうためには、ストーリー構成の工夫が欠かせません。

 たとえば紙のマンガの場合、1冊は約180ページで構成されているので、その中で山場を作ればよいということになります。一方、電子マンガの1話は約20ページ。ユーザー行動を分析すると、離脱が起きるのは2ページ目、3ページ目に遷移するときです。3ページ目まで読ませることができると、それ以降の離脱は少ないということがわかっています。

 つまり、電子マンガでは、紙のマンガより短い間隔で山場をつくることが求められるというわけです。そうなると、1ページ目で登場人物を紹介し、2ページでは爆発が起こるというような急なストーリー展開が離脱を防ぐ鍵を握るというわけです。

 ですが、今のところマンガ家も編集者も紙の文化で育ってきているため、このような急展開のストーリーに違和感を感じることも多い。そこで私たちのような電子マンガの提供者が数字を提示し、デジタルネイティブ世代に受けるコンテンツとその作り方を考える必要が出てきます。これらのノウハウをマンガ家や編集者がたくさん蓄積していく。それが、オリジナル電子マンガが育っていくかどうかの分かれ目になるのではないでしょうか。

電子マンガが自ら伸び率を鈍化させる理由

――出版は斜陽産業だとも言われます。実際のところどうなのでしょうか? マンガの将来は暗いのでしょうか?

青木氏:全国出版協会の調査によると、2017年の出版市場は紙+電子で前年比4.2%減の1兆5916億円。特に売れ行きが伸び悩んでいるのが紙の出版物で、前年比6.9%減でした。

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紙の出版市場と電子出版市場合計

 驚きだったのが、出版市場でこれまで強いとされていたコミックス(マンガ単行本)の販売が紙で14.4%減と過去最大の落ち込みとなったことです。出版科学研究所の統計によると、紙のコミックス全体でも16年連続マイナスで、しかも統計開始以来初の二桁減となりました。

 しかし明るいニュースもあります。電子書籍の売上は前年比16.9%増と伸びており、中でも電子コミックス(電子マンガ)が前年比の17.2%増と伸びており、コミックス全体で見ると落ち込みがなく、コミックスの売上に占める電子コミックスの割合が紙を上回る結果となりました。ですが、安心はしていられません。伸び率が縮小しているからです。

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コミック市場全体の販売金額推移

 電子書店やマンガアプリでは、ユーザーを取り込むため、値引きキャンペーンやポイント付与、無料試し読みなどのサービスを提供したり、通常のコミック誌よりも安い金額を設定するなどの工夫をしています。そのため、伸び率が縮小してしまうのです。

 では、なぜ電子書店やマンガアプリが自ら伸び率を鈍化させるようなことをやるのかというと、ユーザーが海賊版サイトに流れるのを食い止めるためです。

 いずれにしても厳しい状況にあるのは間違いありませんが、出版不況を脱する鍵を握るのは、電子マンガであることは間違いなさそうです。

 「いかに電子で読んでもらえるか」。電子時代にあったコンテンツを考えていくことが編集者の大きな役割となります。

【次ページ】電子マンガには3種類ある

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