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- 2018/08/08 掲載
AI同士のネットワークに人間が取り込まれる「幸せな未来予想図」とは
連載:中西 崇文のAI未来論
武蔵野大学 准教授、国際大学GLOCOM主任研究員
1978年、三重県伊勢市生まれ。2006年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)の学位取得。2006年より情報通信研究機構研究員。ナレッジクラスタシステムの研究開発、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発等に従事。2014年より国際大学GLOCOM准教授・主任研究員。データマイニング、ビッグデータ分析、分脈構造化分析の研究に従事。2019年から武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授。国際大学GLOCOM主任研究員、デジタルハリウッド大学大学院客員教授。専門は、データマイニング、ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析など。

AIは「コピーしやすい」
一部では汎用型人工知能の研究も進み、多岐にわたる能力を発揮する可能性もあるが、現在多く研究されているのは、特化型人工知能である。
筆者は特化型であれ、汎用型であれ今後、ますます多種多様で大量の人工知能が我々の生活に浸透し、散在していくのではないかと想像している。
なぜそのように考えるかは、AIはソフトウェアであるためである。これに関しては、拙著「シンギュラリティは怖くない: ちょっと落ちついて人工知能について考えよう」でも述べたが、ここでもう一度整理する。
まず、AIはコピーしやすいという性質である。機械は複製するには、それなりの設備投資が必要である。それに対して、ソフトウェア全般に言えることであるが、同じAIを創り出そうと思えば、手元のキーボードでコマンドを叩くだけでいくらでもコピーできる。
読者の中には、AIは時には学習に大きなコンピューティングパワーが必要であるし、訓練データを保持するストレージも必要なので、やはりコピーは難しいのではないかと思われた方もいるかもしれない。
現在ではクラウド環境が充実してきているため、ハードウエアのスペック的に新規に準備しなければならないという障壁は小さくなっている。
仮想化技術がこれだけマチュアな(成熟している)状態であれば、AIが動作する環境も含めて簡単にコピーして使うことができるのだ。
大量のAIが散在し続ける理由
「コピーしやすいこと」とも関係しているが、AIは亜種が創られやすいという性質がある。たとえばプログラムがオープンソースである場合、パラメーターを変えたりプログラム自体を書き換えたりするだけで、全く異なるAIを創り出すことができる。
また、学習させるデータの中身が違えば、同じアルゴリズムであっても挙動が変わる。AIが色々な応用で使われるようになれば、その目的に応じて様々な種類のAIが生まれることになる。
さらに、AIがソフトウェアである以上、バージョンアップやアップデートが行われることがあるだろう。WindowsやMacOS、iOS、AndroidなどのOSの状況を考えてみれば良い。
アップデートをひんぱんに行うユーザーもずっと忘れたりしてなかなかアップデートしないユーザーもいる。同じAIでもバージョンアップされたものとそうでないものが混在しながら存在することになる。
このような性質から、今後、多種多様なAIがインターネット上や我々の暮らす環境に散在するようになる。目的や抱えている問題に応じて、これらのさまざまな種類のAIを選択しながら使うことになるだろう。
【次ページ】「AIネットワーク」に人間が参加する日
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