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  • 2019/04/09

ガラパゴス化する日産、グローバル化するトヨタ

日産自動車のガバナンスについて検討してきた「ガバナンス改善特別委員会」が、カルロス・ゴーン前会長の辞任以来、空席が続いていた会長職を廃止するよう提言する報告書をまとめた。権限集中による不正行為を防ぐためというのがその理由だが、「会長がルノーから派遣されることを避けたい」という意図があることは明白である。資本構成の見直しを行わず、名目上の役職だけを変えるというのは、典型的な日本型企業のやり方といって良いだろう。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み」(祥伝社新書)、「ポスト・アベノミクス時代の新しいお金の増やし方」(ビジネス社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「教養として身につけたい戦争と経済の本質」(総合法令出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)などがある。

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ゴーン前会長の逮捕劇で浮かび上がった日産のガラパゴス化とは?
(写真:ロイター/アフロ)

そもそも現経営陣にも責任があるはず

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 一方、日本型経営の典型とされたトヨタは時間をかけてガバナンスの見直しを進めており、日本型経営の利点を残しつつも、グローバルに通用するガバナンスを確立してきた。経営のグローバル化をめぐるトヨタと日産の関係は完全に逆転したといって良い。

 日産は、ゴーン氏の逮捕を受けて2018年12月17日に取締役会を開催。後任会長を選出する予定だったが、結局、会長の選出は見送った。ルノー側はルノーが派遣した取締役の会長就任を希望した可能性が高く、一方、日産側は西川社長の会長就任を望んでいたと考えられる。一般的なガバナンスのルールに従えば、大株主であるルノーから会長が派遣されるのが自然だが、日産の取締役会がこれを望まなかった。

 結局、日産の取締役会は、外部の独立した専門家を含む「ガバナンス改善特別委員会」の設置を決定。社外役員に外部の有識者を加えたメンバーでガバナンスの改善策について議論することになった。

 だがこの特別委員会はそもそも微妙な立ち位置といえる。

 もしゴーン氏が不正を働いたのであれば(というよりも日産経営陣がそう認識しているのであれば)、当時の経営陣は、後任人事や経営体制を含め、今後の展開については直接、関与すべきではないという結論になる。社外役員が中心となり、暫定的な執行体制や今後の会長人事についてすみやかに動くというのが常識的な判断ということになるはずだが、日産の社外役員が積極的に動いた形跡は見当たらない。

 もしゴーン氏が会社を私物化して不正を働いていたのだとすると、ゴーン氏以外の経営陣が関係していないはずはなく、それをチェックできなかった他の役員も大きな責任を負っているはずだ。

 ガバナンスに問題があったと自ら認めている以上、その現経営陣が招聘した外部の有識者の報告書は十分な説得力を持たず、現経営陣の意向を反映した報告書が出てくる可能性が高くなる。実際、同委員会が出した結論は会長職を廃止するという意味不明なものだった。

報告書に見られる意味不明の記述

 同委員会の報告書には、奇妙な記述が数多く見受けられる。報告書では会長職について「会長職が業務執行の監督だけでなく業務執行そのものを担うケースもある」「そのため会長職が企業の最上位職であり、会長以外の取締役、執行役その他役職員に対する指揮命令等の権限を有すると捉えられる可能性がある」とし、「日産における会長職はその一つの実例で、ゴーン氏による権限集中の象徴としての印象が強い」と述べている。

 ゴーン氏は2003年から2017年まで会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)であり、取締役会の議長と執行のトップを兼務していた。「印象」といった情緒的な話ではなく、執行のトップであるCEOだったからこそ、組織における指揮命令権を持っていたのであって、会長職が世間に与えるイメージとは何の関係もない。

 さらに報告書では、「ゴーン氏による権限集中のイメージは本提言を期に払拭すべきである」として会長職の廃止を求めている。どうも委員会のメンバーは、権限が集中している「イメージ」がゴーン氏の暴走を引き起こしたと考えているようだ。

 いわゆる日本社会における「雰囲気」や「空気」という話をしたいのかもしれないが、ゴーン氏は日本人ではないので、こうした理由で強いリーダーシップを発揮することはあり得ない。あくまで経営トップと執行トップを兼ねており、正式な権限を持っていたからこそ、それに基づいて強権的に会社を支配したというのが実態であり、そうした体制を認めてきたのは他でもない現経営陣である。

 経営トップと執行トップが兼務することは珍しいことではなく、もしそれで不正が発生したのだとすると、それをチェックできなかった他の取締役に大きな責任があるというのがスタンダードな解釈になるはずだ。

 だが報告書はこうした事実関係から目をそむけ、会長職というイメージが問題であるとして、会長職を廃止し、悪いイメージを払拭するという意味不明の提言を行った。まさに究極的なガラパゴスといって良いだろう。報告書では、社外役員が議長に就任することを提言しているが、現経営陣がゴーン氏の暴走をチェックできなかったことを総括できないのであれば、誰が議長に就任しても本質的には何も変わらない。

【次ページ】一方のトヨタは? 日本式を生かしつつも…

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