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  • 2019/07/25

IBMの量子コンピューター「IBM Q」は従来型コンピューターと何が違う?

サンフランシスコで開催されたセミコン・ウエストで、IBMは次世代量子コンピューターについての基調講演を行うとともに、世界初の商業用量子コンピューターとして注目を集めるIBM Qの原寸大モデルをブースにて展示した。今後スケールアップが図られるQはさまざまなアプリケーションに用いられ、ビジネス界の構造を変える鍵となるかもしれない。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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IBM Q

コンピューターにも限界が来た

 7月10日にセミコン・ ウエストの基調講演に登壇した、IBMリサーチのVPおよびラボディレクターであるジェフリー・ウェスラー氏。テーマはコンピューティングの未来、bits+neurons+qubitsである。IBMは2017年の段階ですでに量子コンピューターであるQシステムの開発に着手し、今年1月にはCESでQシステム・ワンを発表している。

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IBMリサーチのVPおよびラボディレクター ジェフリー・ウェスラー氏

 ウェスラー氏はまず、AIというものがバイオロジー(生物化学)とコンピューターを組み合わせたところから生まれたものであると指摘。2012年頃からディープ・ラーニングという概念が広がったが、それはアルゴリズム、データ、コンピューティングの3つを支点とする三角形に他ならない。GPUとニューロネットをつなぐことにより、これまでになかった「自ら考え、答えを出す」コンピューターが生まれるのだが、それはIBM Watsonの進化の歴史と重なるものだ。

 しかしコンピューターが処理すべき情報量は増加の一途をたどっている。さらに自動運転、IoTの発展により、今後のコンピューティングはクラウドとエッジにはっきりと分かれていくことになる。

 エッジとは一般的な端末、自動運転、IoTその他の実際に人々が使用するコンピューティングだ。ここでは主にInference(推論)の手法が用いられる。つまりモデルにデータを入力し、そのモデルから結果を出力として受け取ることだ。一方こうしたデータはクラウドに集積され、そこではInferenceの他にTrainingが行われ、精査した結果をエッジに還元する。要するにエッジで集められた情報をクラウドが一気に処理を行い、エッジがその情報を受け取るという形だ。

 CPU、GPUは過去50年以上の間飛躍的な進化を遂げてきた。この進化には「ムーアの法則」というものが適用されている。ムーアの法則とはインテル創始者の1人であるゴードン・ムーアが提唱した半導体進化の法則で、「半導体のトランジスタ集積率は18カ月で2倍になる」という経験則に基づいた指標だ。これまでの成長はほぼこのムーアの法則通りであったと言えるが、ここに来てムーアの法則限界説が業界で大きく唱えられるようになった。つまり半導体の成長そのものが物理的な限界に達しつつある。

量子コンピューターと既存のコンピューターの違い

 そこで生まれたのが物理学とITをつなげる量子コンピューティングという考え方だ。bitsが0と1の集積であるのに対し、量子の基礎となるqubitsは「同じ場所に1と0が混在する」。ウェスラー氏は球体の北極点を1、南極点を0としたものを例とし、1でもあるが0でもある、その中間のあらゆるポジションをとることができる、スーパーポジションであることがqubitsのメリットだと説明した。スーパーポジションをとることにより、従来のコンピューターが1回の計算で1通りの可能性しか調べられないのに対し、量子コンピューターはqubitsで複数通りの可能性を並列的に調べることができる。

 高度の処理を行うためにはbitsを増設する必要があるが、従来型のコンピューターではbitsをn 倍に増やすことで得られる処理性能は単純に×nとなるが、qubitsを用いた場合の結果は×2ⁿとなる。詳しい説明は割愛するが、ある領域ではこれまでより飛躍的に高速な処理を実現できるコンピューターが量子コンピューターなのだ。

【次ページ】原寸大IBM Qを動画付きで紹介

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