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- 2019/08/02 掲載
AI・IoTが“米国の原子力発電”レベルの電力を食い尽くす
農業、教育、ヘルスケア、自動運転で広がるAI活用の可能性
農業では現在、IoTの導入により農家の手間を低減し、人的コストを減らし、遠隔操作により作物の生育状況を見守れるシステムなどが浸透しつつある。ドローンを使った作物のチェック、地表の湿度と天気予報を合わせて適度な水撒きを行うなど、技術は進化している。
教育では、AIやVRを導入して学習プログラムを作成したり、個々の理解度に合わせたカリキュラムを作ったりと、こちらも現場で技術が欠かせない存在になっている。企業も新人研修にこうしたプログラムを取り入れることで効率的な人材育成を行っている。
ヘルスケアではAIによる診断、VRを使っての手術のシミュレーションや遠隔手術の可能性など、僻地にも医療をもたらすことができる存在としての注目度が高い。また今後は人造臓器の開発など、さまざまな分野でのAIの活躍が見込める分野でもある。
そして交通では、いうまでもなく自動運転の導入、さらにはスマートハイウェイやスマートシグナルを組み込んだスマートシティと、AIによるビッグデータが最も必要とされる分野となっている。
「AI開発」は「エネルギー問題」
- Speed of Innovation(イノベーションの速さ)
- Society's Acceptance(社会の受容)
- Security & Safety(セキュリティと安全性)
- Sustainability(持続可能性)
である。もちろんこれらに加えて重要なのは基本的なインフラの整備だ。
一方、コネクテッド・デバイスと呼ばれる通信機能を持つ機器は今後ますます増加し、2030年の時点ではシスコの予想では世界で5000億ユニット、ARMでは1兆ユニットという試算を出している。2018年の時点で人が使用するデータは平均で1日1GBだが、マシンが使用するデータは1日あたり4000GBに上る。これが今後増加していくことで、膨大なデータを蓄積し、交換し、処理していく必要性が生まれる。
2018年から2023年にかけて、人が使用するデータ量は毎年5%の上昇が見込まれるが、マシンが要するデータ使用量は毎年70%の増加率になると考えられている。
単純に1つのデバイスが5-8Wの電力を使用したとして、それが5億ユニットになると年間では12TWh(テラワットアワー)という計算になる。米国の平均的な原子力発電所の年間発電量が10TWhであることを考えると、その消費電力は相当なものだとわかる。
ディッカーソン氏によると2025年にはAIデータセンターだけで世界の総電力使用量のおよそ1割を消費することになるという。現在急速に普及が進むEVも電力消費の面から普及が頭打ちになるのではという予測があるが、それに加えて自動運転システムの導入となればまさに「AI開発」=「エネルギー問題」ともいえる。
つまりこれからのAIシステム開発には、4つのSのうちのSustainabilityが重要になる。世界をより良い場所とするために低エネルギー消費、低コストを兼ね備え、かつ性能を向上させるものが求められることになる。
【次ページ】これからのIoTでは新しいメモリシステムが必要
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